43 好き?②(※アリサ視点)
私と雫は連絡があった通りバスケ部が試合する市の総合体育館に来ていた。
雫は今日までずっと困惑しているようだった。
告白される側なら気楽にしてもいいじゃないかって思うけどそういう問題じゃないのだろう。
興味無い、嫌いな男子からの告白なら即斬だけど、プラスの感情があるなら迷う。
告白を断って今までの関係でいられなくなったらと思うと難しい。雫は優しいからずばっと告白を断るのは嫌なんだろう。
我が校のバスケ部は弱小だったけど平沢獅子が入部して一気に強豪校にのし上がったらしい。
県大会を超え、下手をすればインターハイが狙えるレベルになったとか。部員数は多くなく、全員ユニフォームがもらえるらしい。
つまり、小暮くんのユニフォーム姿を見ることができるってわけだ。
小暮くんはレギュラーじゃないから試合に出られるかは五分五分と言っていたけど出場するなら是非とも応援したい。
試合自体は四校のトーナメント戦らしく、朝一から行くのはしんどかったのでお昼ご飯食べてからこの会場に到着した。
雫を連れて、試合会場の二階席へと行く。
近くにあった電光掲示板には母校と対戦校の名前が書かれていた。今からちょうど決勝戦が始まるらしい。
「お客さん多いね」
「水泳とは違うわね」
バスケの試合を見に行ったのは初めて。兄の静流や幼馴染の心が出場する水泳の試合はよく見に行ったけどやっぱり団体競技は違うなって思う。
ウチの高校からも結構応援が多い。制服を来た生徒達がズラリ。
ってほぼ女子じゃない? よく見てみると女子達が持っている横断幕には『LOVEREO』と書かれていた。
もしかしてこれって。
「あれ? アリサと雫じゃん」
聞き覚えのある声に視線を向ける。応援している女の子の一人に同じクラスの友人である絵理がいた。
ギャルっぽい見た目だが話は面白いので仲良くさせてもらってる。私や雫とは違う系統の女の子だしね。
さて雫と小暮くん以外の人と一緒の時はクールな朝比奈アリサを演じなければ。
「あなたこんな所で何をしてるの?」
「何って応援にきまってんじゃん。もち、獅子の応援」
「ああ、平沢くんにアプローチしてたものね。もしかしてこの応援団って」
「そ、みんな獅子に憧れのファンクラブのメンバー。獅子の試合には絶対に行くって決めてっからね」
二十人くらいいるんじゃないかしら。みんな色とりどりのタオルや看板まで持っている。
お手製のぬいぐるみを作っている女子までいた。まさか普通の同級生に対してここまで手の込んだ応援をするなんて思わなかった。
「ファンクラブなんてあるのね。平沢くんってそんなに人気あったんだ」
「アリサがそれを言う?」
絵理に呆れた顔をされる。雫も同じ顔だ。
「あんたもファンクラブあるじゃん。先輩後輩先生揃って百人以上いるって聞いたことあるよ。同じクラスの鈴木達も入ってるって聞いてるし」
「え、そんなのあったの。初耳」
「アリサはそういうのに興味ないからね。でもアリサは学校で一番人気のある生徒って自覚はした方がいいよ」
雫にも注意のような苦言のような言葉を投げかけられた。そうは言っても興味のない男子からの好意なんて何の意味もない。
「二人は何しに来たの? もしかして獅子の応援?」
雫がぴくりと震えるのが見えた。
「そんなわけないでしょう。私、平沢くんには興味ないし。雫と遊んでたらウチの高校の名前が見えたから寄ってみたのよ」
「あ~そういうこと。アリサが獅子の応援なんてしたらすごいことになるからさ。見た目だけならお似合いだけどね」
それはよく言われる。私と釣り合うのは平沢くんだけだってしつこくね。
でも私だって選ぶ権利があるし、いくら顔や背丈が良くたって好みじゃない男子に愛想を振る舞う気はない。
選ぶんなら……会話が弾んで優しくて側にて安心できる彼のような……。
「違うから!」
「何が?」
二人から疑問の言葉を投げかけられた。