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04 親友の好きな人は僕に似ている

 普段通り授業を受け、終われば休み時間がやってくる。

 僕の席に獅子が来て、獅子目当てに男子達が集まり、その集団にギャル達が近づき、最後に学校一の美少女の朝比奈さんとちょこんと側に大月さんがやってくる。


「……」


 会話に花がさくが僕と大月さんは一切喋らない。

 喋ったとしても相づちか愛想笑いだけだ。

 こうやって見るとよく分かる。お互いに陽キャグループに所属していて大勢で会話するときは相づち以外一切喋らない。でも。


「おはようございます、大月さん」 

「うん、おはよう小暮くん」


 朝二人きりで会うと僕達は饒舌となる。

 ここ一週間、毎朝僕は大月さんとたわいもない話をしていた。

 でも本当に話すのはこの時だけで、一度学校に入ってしまえば二人きりになることはない。

 僕の側には獅子がいるし、大月さんの側には朝比奈さんがべったりとついている。

 もしかしたら僕と大月さんは似たもの同士なのかもしれない。

 だから朝、話が合うことが多く、この朝の時間を心地よく感じていた。


「へぇ、朝比奈さんとは幼馴染なんですね」

「うん、小さい頃から一緒に育ったんだよ。昔は背丈も変わらなかったのにいつのまにかわたしを追い抜いちゃった」


「幼馴染が凄いって気持ち、僕もよく分かりますよ」

「小暮くんも平沢くんと幼馴染だもんね」


「大月さん的には獅子はどう見えます? えっと深い意味はないですよ。純粋な興味です」 

「うーん平沢君くん……。小暮くんには悪いけどちょっと苦手かも」

「え? そうなんですか」


「他の子達が言うように格好いい人だなって思うけど、わたしには眩しすぎるかな」

 

 そして思ったよりも正直、大月さんは微笑んで言った。


「あと、正直怖いかも」


 遠慮もクソもないその言葉は当然、本音なわけで……。

 そしてその日の夜、その言葉をありのまま親友に伝えるしかなかった。


「だそうだよ獅子」

「俺、陰キャになるわ。黒髪眼鏡でリュックを背負う」


「ひどい偏見だ。どうせ容姿端麗なイケメンはどんな格好でもイケメンのままだから意味ないよ」


 夜、獅子が僕の部屋にやってくる。

 最近は密偵みたいな感じになって大月さんとの会話を獅子に報告をしている。 

 はっきりいって獅子は大月さんに好かれていない。

 避けられているレベルだ。この状態で告白してもまず終わりだろう。


 獅子は口を開けて呆けていた。

 思ったよりショックだったらしい。

 大半の女子は獅子に好意をもっていて、嫌がるなんてまずありえないって感じらしいが、獅子を苦手する気持ちを何となく分かる気がする。


 例えば僕が学校一の美少女である朝比奈さんに対して苦手意識を感じているのと同じだと思う。

 彼女は学校の男子生徒半分以上から好かれているという噂があるが、僕は正直近寄りたいと思わない。

 カーストトップの子は輝かしくて目が痛い。あと純粋に何か怖い。


「でも大月さんって思ったよりも良い子だね」 

「そうなんだよ!」

 

 獅子は大月さんを褒めると頬を綻ばせる。


「本当に良い子なんだ! 朝、誰よりも早く教室に来て窓を開けて換気したり、床を掃除してたりするんだ。移動教室の後にちゃんと黒板を綺麗にしたり、電気を消したりする所とかさ。目に入るとすっげーまめな性格って分かるんだよ」


「獅子が大月さんを好きになったきっかけってそういった所?」

「あのさ、教室に観葉植物があるだろ」


 ああ、この学校って教室の後ろに大きな観葉植物が一つあるね。意味が分からないけど。


「あれ、誰が世話をしてるか知ってるか?」

「水やりの当番決めてたような気もするけど……あれ? いつのまにか風化してない?」


「実はあの子が毎朝水やりしてるみたいなんだよ」

「へぇ、そうだったんだ」


「それ知ったのが朝練の時でさ。忘れ物を取りに行ったらあの子が水やりやってて、植物に名前を付けて話かけてたんだよ。その姿がほんと可愛くて、ぐっと来てさ」


「畑もそうだけど世話とか好きなんだろうね」

「それからさ、俺あの子に夢中になっていろんな面を見るたびに良い子って分かったからマジで惚れてしまったんだよ」


「農作業してるのに衣服の汚れとかあまり見えないからきっちりしてるんだと思うよ。料理好きって言ってたし、家事は得意だろうね」

「そうなんだな! 優しいっていうか人を見てるんだ。さりげないフォローとか気配りとか」


「うんうん、案外ずぼらな獅子にいいかもね」

「……だけど嫌われてんだな」


 また項垂れてしまった。

 獅子は僕の記憶が正しければ間違いなく初恋だ。

 親友兼幼馴染としてより良い形にしてあげたい。

 獅子のレベルを考えれば決して無謀な恋愛でもない。

 失礼だが獅子の方が高嶺の花に属する部類。

 大月さんに獅子は恐れるような男子ではないってことを根気よく伝えるしかないかな。

 だから僕は三角座りで沈む獅子の肩にポンと手を置いた。


「僕が何とかしてみせるよ。交渉の席に座らせるくらいまではやってみせる」

「涼真ぁぁ……」


 涙目で縋る獅子の姿を見て一層やる気が芽生えてきた。

 獅子の願いを叶えさせてあげるため、僕は次の日から毎朝、大月さんに声をかけるようにした。


 朝だけじゃなくて会う度に挨拶をして、さりげなく獅子のことを口にして獅子への恐れを取り払えるように根気強く話をしたのだ。

 僕の人生でここまで女の子に対して頑張れたことはなかっただろう。

 これは親友を想う友情が成す技なんだ。だから何度も何度も大月さんに声をかけ続けた。


 だけど思えばやりすぎだったのかもしれない。

 大月さんと会話することに意識しすぎたゆえに視野が狭くなっていたのだ。


「ねぇ」

「へ?」


 ある日の放課後、ある女子に声をかけられた。

 僕に話かける女子なんて先生を除けば最近親しくなった大月さんくらいなものだ。だから彼女以外の女の子から声をかけられるなんてありえないことなんだ。


 さらに言えば話かけて来たのが学校一の美少女である朝比奈アリサだったからより一層ありえなかった。

 朝比奈さんに苦手意識を持つ僕は若干後ずさる。

 しかし朝比奈さんは表情を変えず、真っ直ぐとした目で僕を見ていた。

 クラスカーストトップの彼女がいったい僕に何の用だろう。


「小暮くん、ちょっといい?」 

「はい、何でしょう」


 なるべく動じないように朝比奈さんの言葉を待った。


「これから私に付き合ってくれない? 部活は無いってバスケ部の人から聞いたわ」

「え、なんで」


 予想もしないお誘いだった。まったく意味の分からない言葉に唖然と声が漏れる。

 朝比奈さんに呼び出される理由なんてまったく思いつかなかった。

 何かやらかしてしまったのかと何度も思考する。

 だけど……まったくと言っていいほど思いつかない。

 なぜならなるべく朝比奈さんに関わらないように学校生活を送っていたのだから。

 そんな僕の考えとは裏腹に朝比奈さんは鋭い目を僕に向けた。


「私のかわいい雫にさ」


 朝比奈さんの声にはあきらかに怒気が含まれていた。


「毎日ちょっかいをかけてるみたいだけど……。どういうことか少しお話を聞かせてもらおうかしら」


「あ」


 僕はどうやら大月雫に構い過ぎた結果、ボスに目をつけられてしまったらしい。

ここから本命ヒロインのターン

次話は明日の朝になります。


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