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38 恋愛相談再始動⑤

 電車の中も雑談で花が咲き、あっと言う間に遊園地に到着した。

 最近行ったようなイメージだけどあれから結構経ってるんだよな。


「あの時のひよりちゃん可愛かったなぁ」

「そうなんだ。わたしも小暮くんの妹さんに会ってみたいな」

「今度涼真んち行くか? ひよりも喜ぶぜ」


 前のキュアキュアショーの時の話を交えつつ、アメージングランドの入口門を抜ける。

 受付で支払いを済ませて、さっそく入場をした。中は前の時に比べてかなりの人の数だった。


「前来た時よりも多いですね」

「そうね。何かイベントがあるのかしら」

「あの横断幕に何か書いてあるよ」


 大月さんの指摘通り、横断幕にはアメージングランド新イベント開催中と書かれていた。

 どうやらタイミングが悪かったかもしれない。


「この人数じゃかなり待ちが長そうだな」


 ジェットコースターが二時間待ち。他の絶叫マシーンも軒並み一時間待ちとなっていた。

 遊園地に遊びに行ったって考えると損だが、今日の目的はあくまで獅子と大月さんの仲を深めることだ。

 アトラクションに乗るよりも二人きりで喋らせる方がいいと思う始末。どちらにしろお弁当を持ってきているから絶叫マシーンは乗れやしない。


 朝から会話メインになると昼頃には話題が尽きちゃうので何か四人でアトラクションに行って場を温めるべきだと思う。


「あ、あそこのアトラクション。待ち時間十分だよ」

「それにしましょうか。じゃあ」


 そのアトラクションを見る前に朝比奈さんと獅子の顔が青ざめているのを見て思わずぎょっとした。

 嫌な予感がして、そのアトラクションの看板を見てみるとホラーワールドと書かれていた。前回、良い思いをした……じゃなくていろいろと思い出してくる。


 朝比奈さんは怖いのが苦手だってことは知っている。

 そして僕の親友平沢獅子はオバケがとても苦手な人種だ。怖い番組を見た後、僕に助けを求めてくる。

 最近僕が塩対応気味なので助けを求める対象がひよりに変わったくらいだ。

 妙にひよりが五才児らしくない母性を発揮するのはだいたい獅子のせいである。


「でもオバケとか苦手でしょ。やめておいた方がいい?」


 当然幼馴染を理解している大月さんは朝比奈さんに忠告する。本来であればやめておこうって話になるんだろうけど……。


「はっ、オバケが怖いなんて情けねぇな。俺が前に出てやるよ!」


 好きな子に格好いい所を見せなきゃいけない獅子はここでポイントを稼ごうといきがる。無理しなきゃいいのに。


「ま、朝比奈がどうしても無理って言うなら別のアトラクションに並んでもいいぜ」


 内心はそうして欲しいと思うんだろうけど、相手が多分良くないね。


「はぁ? 無理じゃないし! ホラーワールドは前回小暮くんとひよりちゃんと一緒に抜けたんだから余裕よ! 舐めないで!」


 びびりまくって泣いて、五才のひよりに慰められてけどね。

 そしてあの時抱きつかれた時のむっちり具合は今、思い出しても最高だったよ。

 前より仲良くなったとはいえ、やはり獅子と朝比奈さんは相性が悪い。

 獅子と大月さんが恋愛関係になること自体は朝比奈さんも了承してるけど、大好きな大月さんが構ってくれる量が減るのがやっぱり嫌らしい。

 そして獅子は朝比奈さんが大月さんマウントをしかけてくるのも嫌らしい。

 二人とも僕にその不満を言ってくるから何とも言えない。


「小暮くん、どうしようか」

「行きましょうか。今回はお互いの親友のフォローを頑張りましょう」

「よぉし、行くぞ!」


 そうしてホラーワールドに入ったのはいいが三十分でかからず抜ける道を一時間かけてようやく出ることができた。

 小さい僕と大月さんは大きい親友達に抱きつかれて動きづらい目に合っていた。


「怖いならあんなにイキらなきゃいいのに」

「あ、あんなに怖いなんて聞いてねぇよ……。俺、もうおばけ屋敷とかマジ無理」


「アリサも……前行ったから大丈夫じゃなかったの?」

「イベントが変わってた。私が知ってるホラーワールドじゃなかった。無理」


 入って早々、獅子と朝比奈さんが泣き叫ぶせいでそっちの方がホラーだったように思えた。

 ホラーワールドを抜けた先のベンチで休憩する。沈んだ二人を置いて、僕と大月さんは飲み物を買いに行くことにした。


「大月さんはあんまり怖がってないですよね。得意なんですか?」

「どっちかというと苦手な方かも。幼馴染だったら心の方がホラーは好きだよ」


 二人のもう一人の幼馴染、水原心さん。あれから仲直りして三人で仲良くしているって聞いてるけど……。確かにオバケとか得意そうな性格をしている。


「アリサがここまで怖がってたらさ、怖がってられないよね」

「周囲により怖がってる人がいると冷静になるって言いますもんね」


「わたしは平沢くんがここまで怖がりって知らなかったな」

「結構弱点多いですよ。怖いのも高いのも雷も、辛いのもダメ。あんなでかい図体してるのに」


「そういう所アリサにそっくりだね。わたしが苦手な男性には果敢と立ち向かうのに」

「あはは獅子にもそういう所もあるけど格好いい所もあるので幻滅しないでもらえると助かります」


「そんなのしないよ。でも怖がってる平沢くん可愛かったな。何か慰めたくなるね」


 元来、やっぱ大月さんってお世話好きなんだろうな。獅子も完璧な所を見せるよりも……素の方を見せる方がいいのかもしれない。

 未だ落ち込んでる二人のところに戻って水を渡す。


「じゃあ……次は何に乗りましょうか」

「そうだね。あ、一番怖い絶叫マシーンが三十分待ちで早いよ。乗ろうか」


 大月さんの無情な言葉に獅子も朝比奈さんもぴくりと震える。高いのが苦手な二人になんてことを言うんだ。ちょっと呆れてると獅子が立ち上がった。


「お、おう。絶叫マシーンとか余裕だし!」


 足が震えてるぞ。大月さんが朝比奈さんの肩に触れる。


「じゃあ三人で行ってくるけど、アリサは待ってる?」


「っ! いやぁ、一人にしないでぇ! オバケに捕まっちゃう! 雫ぅぅぅ!」

「あぁ、怖がってるアリサかわいい」


 はぁ仕方ない。


「みんなで遊園地の中をぶらついて、ちょっと早いけど昼飯にしましょうか」

「そうだね。アリサ、平沢くん、行こっか!」

「……」


「小暮くん、なぁに?」

「大月さんってSっ気ありますよね」


「ふーん、じゃあ小暮くんの苦手なことも教えて欲しいなぁ。最近すごく気になるの」

「こっわっ。僕は大月さんみたいな女の子が怖いです。あぁこわい」

 

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