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32 仲直り①(※アリサ視点)

 起きた。

 何だろうすごく長い夢を見ていた気がする。

 頭はほんのちょっと痛みは残っているけど、熱は完全に下がったようだ。

 額を濡らしてくれたタオルや手を伸ばして取れる位置にあるスポーツドリンクは本当にありがたかった。


 いつもは雫がやってくれるけど昨日は。


「……はい!?」


 思考がクリアになると昨日の夜のことを鮮明に思い出せてくる。

 そうだ。私、雫と喧嘩して泣いた勢いで小暮くんを呼び出しちゃったんだ。

 私は何をしでかした。

 リビングで小暮くんが作ったスープやカレーを食べた。それはいい。

 まだ頭も正常だった。なのにほっとして急に熱が出て、意識が朦朧になって………。

 いつも雫にするおねだりを小暮くんにしていた気がする。

 まずいのは自分の部屋に男の子を入れたことだ。

 兄ですら入れるのを嫌がったのに何で私はさも当然に小暮くんを部屋に入れちゃったんだろう!私は大馬鹿だ!


「でも」


 あの時全然不快に感じず夢心地でいられたのは彼の優しさによるものだろう。しかし。


『……眠れるまで手を繋いで欲しいの。駄目?』

『駄目なら雫といつもやってるみたいに……一緒にベッドでもいいよ』

『小暮くんの手ってすごく安心できる』


 やめてぇ! 何か鮮明に思い出してきた。彼氏でもない、ただのクラスメイトの男の子にあんなに甘えてしまうなんて。


「はぅ」


 顔が熱い……何だか昨日のことを思い出すだけで胸がドキドキする。


『ゆっくりお休み』


 優しい声と柔らかな手つきで頭を撫でてくれたことが寝入る前のかすかな記憶に残っている。思い出すだけで胸がきゅっとなって頬の熱みが増していく。


 私は一階に降りてオープンキッチンの方に行く。キッチンテーブルには大きなお皿にサンドイッチとメモが置かれていた。


『たくさん作ったのでゆっくり食べてください。今日は一日お大事にね』


 ラップを外して、盛られたサンドイッチの一つを掴んで口に入れる。

 新鮮なレタスとミモザ風の卵が挟まれたサンドイッチはシンプルながら凄く美味しい。

 空腹だったおかげでどんどん胃にサンドイッチが注ぎ込まれていく。

 メモには追加でコーンスープを作ったので温めて飲んでくださいと書かれていた。

 準備良すぎだと思う。

 私より寝るのが遅かったのに、私より早く活動して朝食を作っていくなんて。


「ってことは小暮くんこの家に泊まっていた!?」


 どこに泊まったんだろう。

 普通にリビングのソファだろうけど、綺麗に掃除されていて形跡がまったくない 

 いや、そもそも男の子を二人きりの家に泊まらせるなんて両親が知ったりしたら。

 私って何て無防備なんだろう。一歩間違えたら襲われてもおかしくない状況だった。

 でも小暮くん、何も言わず私の心を癒やしてくれた。あとで御礼を言わなきゃ。

 

 ピンポーンと家のチャイムが鳴る。

 もしかして小暮くんと思って身なりが問題ないかを確認し、すぐさま玄関へと向かった。そのまま勢い良く扉を開ける。


「え……雫」

「おはよう、アリサ」


 そこには幼馴染の雫がいた。なんでこんな朝に。

 もしかして昨日の件に加えて、さらに嘘吐きと言われたりするだろうか。

 

 怖い。


 雫のことが世界で一番大好きだったのに今は会うのが怖い。

 たじろいだままの私に対して雫はゆっくりと近づいてきて、思わず目をそらす私に対して胸に飛び込んできた。


「わっ」

「昨日怖い想いをさせてごめん。放り出しちゃってごめん。わたしが悪かった」


「……怒ってないの」

「アリサが嘘ついたことは怒ってる。でもそれはそれ、これはこれだから」


「雫ぅ……」


 じわりと目から涙が漏れ出す。嫌われたと思った。許されないと思った。

 私のしてしまったことは雫を大きく傷つけるものだったから。雫はそれでも許してくれるんだ。


「雫、傷つけてごめんね。もう絶対雫には隠し事をしたりしないから!」

「うん、……うん」


 私と雫は玄関でお互いに対して謝り続けた。


 互いに互いを大好きだからこそ話し合い、私達はもう一度親友に戻れたんだ。

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