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31 雨上がりの朝②

「僕と獅子ともう一人でとても仲良しだったんだ」

「え?」


「ある日獅子とその子が大喧嘩をした。僕は当時、時間が経てば仲直りするだろって二人の幼馴染の喧嘩を静観してたんだ。でも二人は気まずくなって仲直りできなかった。そしてもう一人の幼馴染は親の都合で引っ越してしまったんんだ。僕が男だからどうしても獅子よりになってしまうこともあって……僕もその子とそれっきり」


「わたし達もそうなるって言いたいの?」

「あなたの幼馴染と僕の幼馴染はよく似ている。だから、あんな目にはあって欲しくない。朝比奈さんを思うなら今すぐ会話してもらえないかな」


「どうして小暮くんはそこまでわたし達に絡もうとするの? ……やっぱりアリサのことが好きなの?」

「好きじゃないよ」


「嘘。好きじゃなかったらそこまでしないよ」

「僕が好きなのは大月さんと朝比奈さんの関係だよ。幼馴染で仲良しな二人を見るのが好きなんだ」


「……。アリサと遊びに行って好きにならなかったの?」

「僕はもう()()()()()()女の子に対して恋をしないって決めてるんだ。この言葉遣いは過去の過ちを忘れないようにするため」

「なにそれ……わけがわからない」


 見惚れて、好きになって、相手のために必死に尽くして、それが迷惑だと突き付けられる。

 だからもう……こんな口調で異性に対して壁を作ったんだ。

 恋さえしなければどんな女性から拒絶されても耐えられる。


 中学時代のトラウマよ出てくるな。今は関係ない。僕自身は何も望まない。

 僕の問題を掘り下げる必要はない。

 

 一呼吸を置いて、口調を整えた。


「分からなくていいです。とにかく行ってください。きっと朝比奈さんも大月さんを待っていると思いますから」

「うん……」


 大月さんは僕を横切り、校門の方へと歩いていく。だが急に立ち止まってしまった。

「あのさ、きっかけを作ってくれてありがと……。わたし大事なものを無くすところだった」


 大月さんは振り返り、ぎこちないが笑顔を見せた。これなら大丈夫だろうか。


「次会った時は二人仲良い所を見せてください」

「うん、ありがとう。でもね」

「へ?」


「わたしの方がアリサに好かれてるし、小暮くんがアリサを好きになってもそう簡単には渡さないから」

「意外に負けず嫌いですね……」


「そうだよ。わたしは負けず嫌いなの。同じような性格の人には負けたくないかな」


 大月さんはばっと走って行ってしまった。大月さんはすっきりしたような表情で走って行ったような気がする。

 朝比奈さんも大月さんもその本質が見えてきた。

 次に大月さんと出会った時はもうちょっと腹を割って話せるような関係になれるかもしれないな。


 さぁ帰ろう。睡眠時間が足りないけど部活はサボリたくない。

 自転車を走らせて家にとんぼ帰りする。


 家に入ってに~に~って抱きついてくるるひよりを撫で撫でして自室に戻った。

 直後、窓がガタガタ音がし始める。

 彼が僕を待ち構えていたのだろうか。

 軽く頭を手で押さえて、窓を開ける。すると案の定親友が出てきた。


「どうしたの獅子」

「どうしたもこうしたもねーよ!」


 獅子は表情がかなり険しくなっていた。僕の両肩を掴んでぶんぶん揺らす。


「昨日雷鳴りまくって死ぬほど怖かったのになんで来てくれなかったんだよ! 寂しかっただろぅ!」

「あ、そう」

 

 そうだ。僕の親友、平沢獅子は雷に苦手意識を持っていた。子供の頃から雷の日にびびってはよく僕が慰めてあげていた。


「雷が怖くて泣いちまったよ!」

「で、結局昨日の夜はどうしたの?」


「ひよりがよしよしってしてくれた」

「ご褒美じゃん」


 似ていると言ったけど、僕と獅子は朝比奈さんと大月さんのような喧嘩になることはきっとない。

 結局僕達はどこまで行っても男で大馬鹿同士だからだ。男は単純なんですよね。それがいいところでもある。

 ふぅ……仲直りできたかな、あの二人。


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