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26 信頼(※アリサ視点)

 いったいどれのことを指しているのか。頭がまったく回らない。雨に打たれていて体が震える。


「今日ね。昼間にこの家に人が帰ってきたんだ。アリサは夕方まで帰ってこないって分かってたからもしかして……って思って、やっぱり静流さんだった」


 兄が帰ってきてたんだ。実家はここなので問題ないのに嫌な予感が止まらない。


「静流さんの横にはね、幸せそうな顔をした心がいたんだ」

「っ!」


「わたし知らなかったな。静流さんと心って付き合ってたんだね。ほんとお似合いだった」

「……」


「アリサは知ってた?」

「わ、私は……」


「やっぱり知ってたんだね。わたしが静流さんを好きだったのは間違いないけど、叶わぬ恋だとは思ってたし、親友の心だったらお似合いで祝福できたと思う。でも」


 雫の言葉に重みが増す、私は何も言い返せなかった。


「隠していたのはひどいと思うな。わたしってそんなに信用なかった? 静流さんと心の仲を引き裂くとでも思った?」

「違うの! 隠していたのはごめんなさい。私は……雫や心を想って」


「想ってくれていたなら正直に話して欲しかった」

「……あ」


「信じてくれなかったんだね」


 降り注ぐ雨の中、それだけ言って雫は自分の家へと帰っていった。


 私は兄と心が交際したことで、三人の関係に傷がつくことを恐れて心に雫に黙ってほしいと告げていた。

 私はただ今までの関係のままでいたかっただけなんだ。

 でも雫の言う通り……すぐに話していればこんなことにはならなかったかもしれない。

 バレるはずないと思った。

 向こうは全寮制の学校で部活も忙しかったからデートもままならないって言ってたし。

 何で二人で一緒にこの家に帰ってくるの。そんなの聞いてない……。

 でも問題を先送りしたのは私だ。全部私が悪い。

 

 大粒の雨に打たれて、全身を濡らしたまま私は家に帰り、灯りの無いリビングのソファに寝転ぶ。

 雫と喧嘩なんて一度もしたことがなかった。

 あんな冷たい目で見られるなんて……私はもう雫と仲が良かった幼馴染の関係に戻れないのかな。

 その時強い雷の音が鳴り響いた。


「ひゃっ!」


 体が震え上がり、頭を抱える。

 一瞬の強い光とその直後に轟くような音。私は幼少の体験から雷にトラウマを持っている。

 だから雷の日は雫に側にいてもらわないと耐えられない


「でもっ!」


 雫は呼べない。私が傷つけてしまったから。

 夜はずっと雨だ。雷もずっと鳴り響く。

 外が光る度に私は耳を押さえて、その轟音に胸を裂かれるように悲鳴をあげる。

 怖い、怖い、怖い。でも……一人で耐え続けなきゃいけない。

 

 みんな私が傷つけた。雫だけじゃない、心や兄にも気を使わせた。私が全部悪い。でも怖いっ。誰か助けて。


『じゃあ……私が熱とか出しても心配してくれるのかな』

『しますよ。当たり前じゃないですか』

『僕で出来る事だったら助けになりますから』


 屈託のない言葉で語る彼の姿を思い出す。私はスマホを取りだして、ラインの通話ボタンを押す。藁にも縋る想いで小暮くんに着信を送った。

 そしてすぐに繋がった。


「はい……朝比奈さん、どうしました」

「わ、私……きゃっ!」


 言い始めると同時に再び雷の音が鳴り響いた。

 そのショックでスマホが吹き飛び、窓側の方へ飛んでいく。

 スマホに手を伸ばすが正面に光が包まれ……轟音が鳴り響いた。

 スマホ取りに行きたくても窓の方へ体が動かせない。そして……着信は途切れた。

 

 そうだよね通話中に出ないなんて失礼なことをしたんだ。着信が切れてもおかしくない。

 私は両耳を押さえて……ずっとうずくまった。雷が鳴る度に声が漏れて……恐怖でうずくまり続ける。


 十分、三十分、一時間……どれだけ経ったか分からない。


 そんな時家のチャイムの音が鳴った。


 こんな大雨で誰が? もしかして雫が来てくれた?   

 そんなはずない。喧嘩したし雫なら合鍵を持っている。

 私はそのチャイムに答える元気がなかった。でも。



「朝比奈さぁああん! 家にいますかぁ!? 小暮です! 困っていることがあったら開けてくださいっ!」


 何度も玄関のドアをノックする音が聞こえる。

 今日一緒にずっと過ごした彼の声だった。立ち上がってすぐさま玄関まで走る。

 鍵を開けて乱暴に扉を開いた。


 そこには合羽を着ながらもずぶ濡れの彼がいて……私は朝の時のように声をあげて彼に抱きついた。

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