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22 僕と天使とポンコツ美少女④

「え、ああ……あ~」


 朝比奈さんも戸惑ってチラチラ見てるじゃないか。


「コラコラ、朝比奈さんを困らせるんじゃない」

「そ、それに小暮くんには好きな人もいるわけだしね」


 そもそも朝比奈さんと僕じゃ外見的な格差がエグイ。

 今日だってひよりがいたおかげでそうでもないけど、二人きりだったらいろいろ言われたことだろう。

 このフードコートだって朝比奈さんは視線を浴びている。

 ぱっと見て、ここにいる数百人の客の中で一番綺麗なのはきっと目の前のこの子だ。


「でもおねーさんとにーにー凄く仲良かったよ」


 ひよりは僕が貸してたスマホを取りだして、操作し、朝比奈さんに渡す。

 スマホの画面を見た瞬間、朝比奈さんの顔が真っ赤に染まった。何の画面を見て……。


「げっ!」


 ホラーワールドやジェットコースターで力いっぱい僕に抱きついている写真がズラリと並んでいた。

 ひよりの奴、風景を撮っているかと思ったらこんな写真撮ってたのか。朝比奈さんのカラダに全集中したせいでまったく気づかなかった。


「わ、私……こ、こんな抱きついてたんだ」

「震えていたから仕方ないですよ! 僕じゃなくたって……他の子でも同じようにしたでしょうし」


「……しないもん」

「へ?」


「雫や心以外にしたことないもん。……小暮くんってなんなの」

「僕に聞かれても。ひっ!」


 画面の写真フォルダの一番下の写真には朝比奈さんの胸の谷間をガン見している僕の写真が映っていた。幸い朝比奈さんはまだ気づいてなさそうだ。こ、これはまずい。すぐにでも消さないと!


「す、スマホを返してください!」

「え、きゃっ!」


 これは僕もいけなかった。焦ってスマホを奪い取ろうとしたため、朝比奈さんに覆い被さる格好になってしまった。

 足がもつれてうっかりと朝比奈さんの胸部に顔を埋めることになる。

 両手は彼女の背中を抱きしめる形となり、僕の顔は彼女の柔肌の温かさと柔らかみがすごい。

 でも肝が冷えていた。


「へぇ……散々私が抱きついたから、今度はあなたが抱きつき返したってわけ」

「ずびまぜん」


「ひゃぁん、ちょ、変なとこに息にかけないで。もうっ!」

「痛いっ!」


 ぱちんと良い音をするビンタと頬に刺さる痛烈な痛みが現実に引き戻した。


「まったく……もう! あなたには雫がいるでしょ!」


 朝比奈さんはまだちょっと怒っていたが、致命的な怒りではなかったので助かった。

 たまたまのハプニングと思ってくれたようだ。そして原因の写真は気づかれず消去。

 こっちはバレたらやばすぎるので事前に察知して良かった。


「にーにー、ほっぺ痛い?」

「まぁまぁかな」


「おねーさん、とっても柔らかかった。にーにーもそう思う?」 

「そりゃ」


「ギロッ」

「なんでもありません」


 ビンタの代償があったとはいえ最高でした。

 これだけのことをしても険悪にならないのは朝の件があったからだろうか。

 

 良い時間となったため、キュアキュアショーの会場へと移動。舞台から近い席に座った。


「ひより、着替えようか」

「ん」

「え、ここで? あっ」


 僕は手荷物から衣服を取りだしてひよりの体に羽織らせた。

 お手製のキュアキュア衣装である。

 当然安物の布地で作ってるのでそんなにデキはよくない。


「わぁ、可愛い! キュアキュアがいるみたい!」

「にーにーが作ってくれたんだよ」


「そういえば雫も見せてもらったって言ってたっけ。裁縫も出来るなんて凄いわね」

「素人の趣味レベルですよ。天使なひよりをもっと天使っぽくするにはどうしたらいいかを考えたらこうなりました」


「小暮くんのシスコンも相当ね」

「褒め言葉と思っておきます」


 客も会場に集まり始めて、席がどんどん埋まっていく。僕と朝比奈さんでひよりを挟み、開始を待った。


「前の子の衣装良くできてるわね」

「前のカップル……もしかして娘さんかしら。まさかね」


 ひよりが目立つおかげで僕や朝比奈さんに対する声が聞こえてきて何だか気まずい。

 やっぱり男女で遊びに行ったりするとカップル扱いされちゃうのだろうか。

 いくらなんでも五才の娘はちょっと無理がありすぎる。朝比奈さんが気にしてなきゃいいけど……。ちらりと朝比奈さんの方を向く。


「はぅ!」


 少し照れた様子の朝比奈さんと目が合った! 気まずさを感じ、目を逸らす。

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