21 僕と天使とポンコツ美少女③
さも当然に撫でを要求してきたことにびっくりした。
にーにー早くとひよりに要求される。
朝比奈さんは多分思考が働いてないだけなんだ。
だがこのままというわけにもいかない。女の子の頭を合法に撫でられるチャンスと思おう。
ひよりにするみたいに朝比奈さんのプラチナブロンドの髪に触れた。
「……」
やっば、サラサラすぎる。天使のひよりを超えてるんじゃないか。
そりゃウチが使ってるトリートメントなんて安物だけど……。
これは人助けなんだ。邪な気持ちで考えるのはやめよう。
「はふっ」
朝比奈さんから変な声が漏れ出した。
「ありがと……。だいぶ落ち着いた」
「良かったです」
もうちょっと堪能したかったけど……普通で考えれば交際してない女子の髪を触る時点でギルティだ。
これ以上は望まない方がいい。
「おつかれさまでした!」
係員さんに言われ、僕達は立ち上がる。
だが……朝比奈さんはバランスを崩して再び座ってしまう。
まだ足が竦んでいるんだろうな。
差し出した手は握られゆっくりと立ち上がる。
今度はちゃんと立てたようだ。
朝比奈さんはにっこりと笑った。
「小暮くんが気持ち良くしてくれたおかげで腰が抜けちゃったけどスッキリしたから」
あんまりにも淀みなく言うものだから僕も係員さんも止まってしまったじゃないか。
「え、ここでナニをしてたんですか!?」
「何もしてません! 朝比奈さん、誤解を生む言い方はマジでやめてください!」
「へ?」
後ろ指をさされつつ、僕達はジェットコースターのアトラクションを抜けた。
時刻は十二時過ぎ。良い時間かもしれない。
「にーにー、お腹空いた」
「ご飯にしようか。朝比奈さんもそれでいいですか?」
「叫んだらめちゃくちゃお腹空いたかも」
「そりゃあれだけ叫んだらねぇ」
僕達はアメージングランドのフードコートに足を運ぶ。
十二時を超えていたため混雑していたが幸いまばらにテーブルは空いており、席取りしつつ交代で昼食を購入した。
僕はハンバーガーセット、ひよりには本人の希望も聞きつつサンドイッチを購入。
そして大本命は。
「親子丼にうどんに大量の唐揚げ。相変わらずの健啖家っぷりですね」
「ごはんに味噌汁にメインがあると思えば普通じゃない?」
「無理あるでしょ!」
朝比奈さんの持ってきた量は相変わらず人一倍だった。分かっていたけどやっぱよく食べるなぁ。その細さでどこにそんなメシが入るんだ。
「にーにーもいっぱい食べないと大きくなれないよ」
「一応百七十センチは超えてるんだけどね」
百八十を超えてる獅子と比べるとひ弱なのは否定できないけど。
「ひよりちゃん、サンドイッチ美味しい?」
「ん、美味しい! 本当はカレーが食べたかったけど昨日食べたから諦めるの。おねーさんはカレー好き?」
「うん、カレー大好き。甘くて美味しいよね」
「甘い? ああ……。朝比奈さんってさては辛いもの苦手でしょ」
「なんで分かったの!?」
思えばパンケーキにもあれだけ甘いシロップかけてたもんな。
辛いの駄目、高いの駄目、怖いの駄目、暗いの駄目。駄目のオンパレードが続いていく。
「カレーは辛くないのが一番よ。雫が作ってくれる甘口カレーはほんと絶品でね」
「にーにーのカレーも辛くなくて美味しいよ! ひーも大好き」
「へぇ、小暮くんって結構家庭的だよね」
「家庭的にならざる得ない状況ですからね」
共働きの両親や育ち盛りの妹だけならまだしも、幼馴染も甘えん坊だからな。
見てあげないと心配で心配で仕方ない。
昼食を取り、キュアキュアショーの時間までまったりしていた。
十五分前くらいになったら席取りしにいくけど……今はまだ早いかな。
「ひよりちゃん、ほんとに可愛いなぁ」
ひよりは今、朝比奈さんの膝の上に座ってぎゅーっと抱きしめられている。本当に子供が好きなんだな。しかしあのボディに抱かれるのは正直羨ましい。
「おねーさんはきょうだいいないの?」
「お兄ちゃんがいるよ」
「にーにーとどっちが格好いい?」
「……。うん、ひよりちゃんのお兄ちゃんも素敵なところあるよ」
その間はなんだろうか。あと微妙にフォローされてる感がある。
朝比奈さんのお兄さんか。相当なイケメンなんだろうな。
おまけに朝比奈さんの持っているバッグとかハンカチとか見るとブランドものだし……。
家庭教師のバイトはしてるって行ってたけど、社長令嬢の話はガチなんだと思う。
羨ましいと思いコップの水を口に含む。
「私もひよりちゃんみたいな妹が欲しかったなぁ」
「ん? おねーさん、ひーを妹にする方法あるよ」
「えー、なになに。教えて」
「にーにーのお嫁さんになればいいの」
「ブーーーー!!」
妹がとんでもないこと言ったため口の中の水を全て外に出してしまった。