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19 僕と天使とポンコツ美少女①

 それから最寄り駅から電車に乗って、アメージングランドへ向かう。

 電車の中で朝比奈さんはずっとひよりと手を繋いでおり、にこやかに話をしていた。

 ひよりも懐いているし、いい感じだな。

 しかし……誰もが渇望してやまない朝比奈アリサと遊びにいくことを彼女にまったく好意のない僕が成し遂げてしまうことが皮肉だなって思う。

 彼女に想いを寄せる同じクラスの男子達には絶対言えないな。

 クラスでの凛とした姿の朝比奈さんも綺麗だけど、ひよりや大月さんと一緒の柔らかい感じの方がいいなって思う。

 彼女からすれば僕なんてその辺に生えてる雑草みたいなものだし、不快な想いをさせないようにしないと。


「ねー、おねーさん。もう一人のおねーさんは熱出ちゃったの?」

「うん、そうなの。雫って言ってね。ひよりちゃんと同じくらい可愛い子だよ」


 五才児と同じ扱いはさすがに大月さんに失礼だと思う。

 ま、天使なひよりと同じレベルにかわいい子なんてなかなかいないと思うけどね。


「どんな人なの?」

「そうだねぇ。気配り上手って言ってもわかんないか。雫は困った時にすぐ助けてくれる優しい人。困った時にはまわりを見渡せばすぐに駆けつけてくれて安心させてくれる人。おねーちゃんの一番の友達なんだ」


「へぇ、にーにーみたい!」

「小暮くんみたい?」


「ん! いっつもひーの側にいてくれるの! にーにーも優しいよ」

「そっか。ひよりちゃんはお兄ちゃんが大好きなんだね」 

「うん!」


 やばい、感激して涙が出そうだ。ひよりが良い子に育ってくれて僕嬉しい。


「それでね。ひよりちゃんのお兄ちゃんは雫のことが好きなんだよ」

「ほへ?」


「ちょ! 朝比奈さん!?」

「なによ、本当のことでしょ」


 妹に吹き込むのは止めてほしかった。

 問題はないのだけど誤解が広がりそうで。


「ひーにおねーちゃんが出来る?」

「そう! ひよりちゃんのお兄ちゃんが男を見せたらね」 


「無理難題を言うなぁ……」


 ひよりには帰ったらしっかり言い含めておかないと……。

 僕達は騒がしくも会話が弾み、目的地のアメージングランドへ到着した。

 入場門でチケットを渡して早速場内へと足を踏み入れる。

 土曜日だけあって人も多いな。


「今日は遊ぶぞ~~!」 

「あそぼ~!」

「朝比奈さんもテンション高いですね」


「遊園地に来るの久しぶりなの。昔は雫と心とよく行ってたんだけど……最近はご無沙汰だったしね」

「高校生だから仕方ないと思いますけど、中学の時は一緒に行かなかったんですか?」


「心が部活優先になったってのもあるけど、単純に三人で遊んでいると結構危ない目に遭うことも多くてね。一歩歩くごとに声かけられるし」


 そっか……。朝比奈さんは元より、大月さんも水原さんも容姿レベルは高いもんな。

 中学生だったら声をかけられる頻度も増えるだろう。

 大月さんを危ない目に遭わせたくなかったから行かないってトコか。


「そういう意味で今日は一度も声をかけられてないのは小暮くんが一緒だからかな」

「男扱いしてもらえるなら来た甲斐がありますよ」


「今日はひよりちゃんと私を守って貰わないとね」 

「にーにー、がんば!」


 やれやれ……。僕もそんな腕が立つ方じゃないけど運動部ゆえの最低限の身長と筋肉はあるからな。

 これが獅子だったらもっとしっかりと護衛っぽくなるんだろうか。


「にーにー、写真撮りたい、スマホちょーだい」

「あいよ。それよりキュアキュアショーは十三時半からですし、何か乗りましょうか」


「ひよりちゃんどこに行きたい? おねーちゃんがどこでも連れてってあげる!」

「あっち」


 ひよりがさっそく指をさした。そこはアメージングランドで最も有名なアトラクション。僕は当然ひよりの好みを知ってるので何とも思っていないが……朝比奈さんはその先を見て顔色を青ざめる。


「えっと……あれ喫茶店かな」

「そんなわけないでしょ、ホラーワールド。お化け屋敷ですね」


 百人が見て百人お化け屋敷と指摘する様相の建物。表に骸骨とかミイラとか貼り付けられてるしね。


「ひー、キュアキュアショーと同じくらい楽しみにしてた!」

「ひよりは本当にオバケとか好きだよね。朝比奈さん大丈夫ですか」

「ひっ、だ、大丈夫。大丈夫だよぉ」


 とてもそうには見えない。顔色が青いし、足も震えている。どう見たって怖いのが苦手な部類だ。


「怖いの苦手だったら待っててもらっていいですよ」

「うん、私……」

「おねーさん行かないの? ひー、寂しい」


 ひよりが寂しそうに体を丸める。だけど苦手な人を無理やり行かせるわけにはいかない。ひよりを止めるのは兄である僕の役目、宥めるために声をかけようとした、その時。


「行こう! ひよりちゃんのためなら私がんばれる!」


 ひよりへの愛が恐怖を超えた! 

 たちまち元気になった朝比奈さんはひよりと手を繋いでホラーワールドまで元気に歩き出してしまった。


「本当に大丈夫だろうか」


 まぁ、あの感じなら大丈夫か。列に並んでいる時も受付の時も朝比奈さんはひよりと楽しそうに話していた。怖いって言っても大したことじゃないのかもしれない。そう思ってホラーワールドの中に足を踏み入れた直後。


「やっぱ無理」


 うずくまってしまった。入って即行じゃないか……やっぱりダメだったのか。


「そんなダメなんですか」

「怖いのと暗いのがダメなの。あとこの音もだめ」


 ホラー系特有のキーンって音が広がっているもんなぁ。


「ひより、先に行かないようにね」

「ん! にーにー、早く行きたい」


 仕方ないとはいえ五才児がワクワクして、十五才の女の子がうずくまって震えている。この差が何とも言えない。


「おねーさん、怖い?」 

「うん、こわい」


 発言が五才児になっているんだけど……。ひよりが朝比奈さんの背中をよしよしとさする。


「怖くない方法あるよ」 

「ほんと?」


「にーにーに抱きつけばいいの。ひーも怖い時はよくにーにーに抱きついてるの。すっごく温かいよ」

「いや、それはちょっと」

「だめなの。うるうる……小暮くぅん」


「そんな泣きそうな目で見ないでくださいよ!」


 カップルならいいとして、僕と朝比奈さんはただのクラスメイトなわけで……。

 だけどこのままじゃ先へも進めないし。


「分かりました。手を掴んでください」 

「うん、絶対離さないでね」

「離しませんよ」


 朝比奈さんの手を掴み、彼女を立たせる。女の子の手のひらの柔らかさに少し意識を持っていかれそうになる。


「ゆっくりでいいから行きましょう」

「う、うん」


 さらに一歩踏み出した瞬間、ガタンと大きな音がして壁から幽霊のエフェクトが現れた。


「いやああああああっ!」

「んぐっ!」


 手を繋ぐどころか体全体で抱きしめられる。女子にこれだけ接近されたことは久しくなかったので別の意味でドキドキする。

 腕にすごく柔らかいものが当たっているんですが……。朝比奈さんマジで余裕ないんだろうな。


「あの……ちょ、ちょっとだけ離れてもらえると」


「無理無理無理! お願い、離さないでぇ! 私を捨てないでぇ! 小暮くんに捨てられたら私……死ぬ!」

「ちょっと誤解を生みそうな言い方やめて!?」

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