表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/105

16 犬猿の仲

 食事終えた僕達は三人で食堂を出る。

 結局変な感じのままになってしまった。

 まぁ……朝比奈さんと大月さん。二人の女子に悪感情を抱かれていないならいいかな。

 昼休みが終わるまでまだ時間ある。


「じゃあわたし……花壇の方に行くけど二人は戻る?」


 ああ、大月さんは昼休みも土いじりしてるって言ってたっけ。

 本当に園芸が好きなんだろうな。

 今度獅子に伝えて上手くバッティングさせるようにしようか。


「ねぇ」


 朝比奈さんが僕の背をツンツンと突いてくる。


「小暮くんも一緒に行って、それで雫の手伝いをして」

「え」


「絶対好感度が上がるから。そうやって二人の共同作業を増やせば雫も見直すと思うわ」 

「ま、まぁ……それはそうかも」 


「それで……デートに誘うの」

「は?」


 デートに誘う? そんなことできるわけがない。

 そもそも僕は別に大月さんが好きなわけではない。

 ただ……親友のために彼女の情報を集めてるだけで必要以上に仲良くなるつもりはない。


「まだ会話できるようになったくらいでデートっていくら何でも無茶苦茶でしょ!」

「そんなことないわ。雫に好意があるならガンガン行くべきよ」


「いや、さすがに早いですって。もうちょっと仲を深めてから」

「早くないわ。悠長なことを言ってられないの」


「……」 

「小暮くん!」


 何でこんな急に詰められるんだろうか。

 朝比奈さんの考えていることが全然分からない。

 誘ったって絶対断られるに決まっている。とりあえずこの場を何とかくぐり抜けないと。

 僕は両手を挙げ、ゆっくりと後ずさっているとさらに朝比奈さんは詰めてきた。


「ちょっと聞いてるの! ねぇったら」

「おい、何してる!」


 人の少ない通路に響く男の声。聞き覚えがあるその声は親友の平沢獅子(れお)のものだった。

獅子は険しい顔をして、僕の腕を掴んで獅子の後ろに回される。


「涼真に迫ってんじゃねーよ朝比奈」

「あなたには関係ないわ平沢くん」

「関係ないことはねぇ。困ってる涼真を見過ごせるかよ。あ?」


 獅子はギリっと朝比奈さんは睨み、そのまま近くにいた大月さんにも目をやる。

 

「ひっ」


 険しい顔で大月さんを見たからか、大月さんが完全に怯えた表情をしてしまった。


「ちょっと、雫を怖がらせないで!」


 大月さん大好きな朝比奈さんがそれを許すわけもなく、すぐさま大月さんの前に立ち塞がった。

 獅子と朝比奈さんはにらみ合う。


 僕は女子二人に聞こえないよう獅子の耳元に呟く。


「僕は大丈夫だから。大月さんに悪印象を与えるのは良くない」 

「だけどよ」


「やっぱり粗暴じゃない。私、あなたの高圧的な所が気にいらないわ。女子達の想いに偉そうな所とかね!」


「はん。お互い様だ。俺はあんたの冷血っぽい性格が元々気にいらなかったんだよ。鈴木や佐藤や田中にいっつも冷たい態度を取るじゃねぇか!」


 まるで水と油のような関係。

 元々良い印象の無かった二人の関係が最悪な形になってしまった。


「二度と話かけないで。雫、行こ」

「う、うん」


「涼真行こうぜ」

「あ、ああ……」


 獅子と朝比奈さんは背を向けて歩き出す。

 完全な決別、大月さんは朝比奈さんを追い、僕は獅子を追うしかなかった。

 女の子達と別れて、校舎の中に入る。ズンズン歩いていた獅子が突然止まった。


「あああああああ」


 急に獅子は叫び声を挙げ、百八十センチの体を丸めてしまった。こんな姿、獅子を好きな女の子達にはとても見せられない。僕は獅子の正面にまわりこむ。


「どうしたの」

「……なぁ涼真。俺、大月に嫌われたかなぁ」


 あれだけ威勢の良かった学校一の人気者は泣きべそかいて落ち込んでいた。


「良い感情はもたないだろうね」

「そっかぁ」


「そもそもなんであんなことしたんだよ。僕が獅子のために大月さんに近づいてるのは知ってるだろ。朝比奈さんに因縁つけるのは絶対避けるべきだった。朝比奈さんが勘違いしてる件も夜に話したじゃないか」


 獅子はがくりと項垂れてしまう。基本的には格好いいんだけど……意外に繊細でおっちょこちょいなんだよなぁ。獅子の性格はよく理解している。

 昨日も朝比奈さんが僕が大月さんを好きだと勘違いしてる件を話したら、『涼真だったら悔しいけど身を引く……。ぐすっ、俺の好きな人を幸せにしてくれ』とか言い始めるからとても大変だった。どんな地獄なシチュエーションだ。


「僕のことなんて放っておけばよかったのに」

「そんなのできねぇよ!」


 獅子は強い口調で声を荒くする。


「涼真が困っているのに放っておけるか!」

「それで好きな子に嫌われたら意味ないよ」


「でも……涼真を放っておけない!」


 はぁ……。好きな人に嫌われても僕を助けてくれるこの幼馴染の行動が何よりも嬉しく感じてしまう。

 いつもこうやって側に来てくれるから僕は獅子以外に親友が出来なくてもいいと思ってしまう。

 僕は縮こまった獅子の肩に触れた。


「ありがとう獅子。また一から頑張ろうか」


 さて……朝比奈さんを怒らせてしまったのはまずい。

 何とか名誉挽回できるチャンスを得なければ大月さんとの会話もNGを出されてしまう。

 僕から話しかけるのはちょっと億劫だ。

 午後からの授業中に悩んでいるとピコンとスマホに一つのメッセージが届いた。

 

 ARISA「今日の放課後空いてる? あそこで話したいことがあるの」


 それは朝比奈さんからの思ったより冷静なメッセージだった。

 実際はそんなに怒ってないのかなと思ったら次のメッセージが飛び込んでくる。


 ARISA「小暮くんに詰め寄ったのが悪いって雫に怒られた。ぐすん」


 なるほど向こうは向こうでお説教があったのか。これなら……いけるかもしれん。僕は了承のメッセージを送った。

学年の人気者の二人は相性が悪い。でも性格はとっても近くて親友が大好き。

見た目だけなら超理想的だったりするのです。

この4人の関係性が今作で書きたかった肝かもしれません。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

是非とも応援をお願い致します!

『学校一の美少女と親友同士の恋愛相談に乗っていたら、いつのまにか彼女が誰よりも近い存在になってた件2』

2024年10月25日 発売です!

↓画像をクリックすると作品ページに飛べます

表紙イラスト

↑画像をクリックすると作品ページに飛べます

1巻はこちらです

『学校一の美少女と親友同士の恋愛相談に乗っていたら、いつのまにか彼女が誰よりも近い存在になってた件』

絶賛発売中です!

↓画像をクリックすると作品ページに飛べます

表紙イラスト

↑画像をクリックすると作品ページに飛べます

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ