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114 僕に出来る全力⑤※アリサ視点

「むぅ」


 私、朝比奈アリサはご立腹。だって涼真が全然構ってくれない!

 分かってるよ。文化祭の活動で二十四時間動きっぱなしだから、そんな涼真を支えたいってのも事実。

 この家に来ても文化祭のお仕事ばかりで全然イチャイチャできない。外で話せない分、家の中でしか会えないのに。 


 でもそんな不満も許してあげる。今日は家事代行のお仕事をしてくれるって言ってたから、今日はいっぱい甘やかしてもらうんだからね。


 呼び鈴が鳴って、ウキウキ気分で扉を開ける。そこには恋心を抱く男の子の姿が。


「やぁ、アリサ。お待たせ」

「いやあああああああああっ!」


 目、目が死んでる! ものすごい隈が出来てる! 少し童顔で笑顔が素敵な涼真の目つきがとんでもないことになっていた。


 涼真はふらふらのままこちらに来る。


「仕事のしすぎだよっ! 夜、全然寝てないんじゃないの!」

「うん、夜は衣装作りしてるから一睡もしない」

「体壊すわよ! いつ寝てるのよ」

「学校行けば授業中は寝れるから」


 それは寝ていい時間じゃない気がする。


「一応先生には言付けしてる。めっちゃ怒られたけど最近は見逃されてる」


 ごり押しをしている。先生も涼真が文化祭実行委員で忙しくしていることを知っているし、元々模範的な生徒だから、文化祭が終われば元に戻ると思っているから諦めたのかも。


「成績落ちるわよ」

「落ちたら助けて。アリサに教えてもらえたらすぐ伸びるよ」


 それでもいいか。それを口実に二人っきりになれるし。一問解けたらご褒美上げるとか。それだけでもいろいろ捗る。ふらふらの涼真を支えるようにする。


「ご飯作ったら服作らなきゃ……」

「無理しすぎよ。ちょっと寝ましょう。ご飯は残りもので大丈夫だから」


 一度ソファに寝かせて、私が膝枕をしてあげる。本当に頑張りすぎだと思う。文化祭実行委員になって相手校のもめ事にまで介入してるみたい。その努力のおかげで涼真を知る人は少しずつ増えていた。


「ねぇ涼真」

「んん、なに」


「今、涼真がしたいことを言ってくれたら叶えてあげる。頑張ってる涼真にご褒美」

「ほんと」


 眠気でうつろになっているのか言葉が少しだけ遅い。こういう時は素が出て本当にしたいことを口にするものだ。涼真の願いを聞いてあげたかった。


「じゃあ」


 私は涼真の頭を撫でながらその言葉を聞いた。


「おっぱい揉んでいい?」

「ええ! ……えっ」


 今、何て言った。正真正銘おっぱいって言ってたよね。そりゃ涼真が私の胸が大好きって知ってるけど、えっとその……どうすれば。


「雫ぅぅぅ!」


 膝枕している涼真の頭をソファの上に落として、側を離れ、スマホの通話ボタンを押す。すぐに雫に繋がった。


『どうしたの』

「涼真におっぱい揉ませてって言われた!」

『殺せ』

「殺したらダメだよ!」


 今の涼真の状態を雫に説明する。


『なるほどね。涼真くん限界に近そうだったもんなぁ。学校にいるときは気合いでやってるけどやっぱアリサが側にいると気が抜けるんだろうね。信用されてるんだよ』


「えへへ、そっかぁ」


 何か凄く嬉しい。


『じゃあ揉ませてあげたら。どうせ付き合ったら揉まれまくるんだからいいんじゃない?』

「ふぇっ! で、でもっ」

『大丈夫。わたしが太鼓判押してあげるから。アリサの胸は柔らかくて張りがある。ほぼ毎日揉んでるわたしが一番よく知ってる』

「そんな太鼓判いらないわ!」


 まぁ、別に両想い同士だし、私だって胸の谷間が強調される服着て涼真をからかってるから別にいいんだけど。

 何というか雰囲気ってのがあって……。でも涼真が望むなら。別に恥ずかしくない。私は顔も体も理想な姿だと思っている。誰にも劣っているとは思わない。


『話変わるけど、やっぱりミスコンに出るの? アリサが一番嫌なコンテストだと思ってたけど』

「例の女が出るって言うんでしょ。だったら負けたくないし」


『水着って話だよ』

「別に構わないわ。私に劣ってるところなんてないし。ただ、嫌らしい視線を浴びたくないだけ」


 私は学校一の美少女と呼ばれることに対して別段おかしいとは思っていない。

 両親譲りの美貌やスタイルには自信を持っている。自信がないのは涼真の好みと合致しているかどうかだけ。


 紬の方がほどよい美乳だし、太ももも大きいし、男受けしそうなのってあっちの方だと思うのよね。雫だってあの小柄でほどよい体つきは可愛らしいと思うし。男って結局美しいより可愛い方を取るってのは良く知ってる。


 此花陽菜という涼真の初恋の女の子。私は見たことないけど紬と雫は向こうの学校で会ったという。


「髪は長くて、胸が大きくて、とにかく美人だっけ。その子だけには負けたくない。それに後夜祭のキャンプファイヤーでは男女ミスコン同士が全校生徒の前で踊るんでしょ」

『女子側は断れるって話だけどね』


「もし涼真が相手の子を選んだりしたら……」

『今の段階で涼真くんが初恋の子を選んだりしたら頭かち割るけどね』


 雫はそうは言ってくれるけど、絶対はないと思う。だから私がミスコンに勝利しておいて誘われる準備をしておかないと……。

 男子のミスコンで涼真が惜しくも負けて他の男が選ばれた時はさっさと帰るけど。


『アリサが他薦でミスコンに出るって分かったらみんな出場取りやめるかも。あ、紬さんも出場禁止にしておかないとね』

「やっぱり紬は向こうの学校でも人気なの?」


『紬さんって凄いね。あの天然で向こうの学校の男子を骨抜きにしてるみたい。此花会長からやんわり不満を言われた』


 多分紬は私よりも学校内で人気だろう。あの媚びまくる愛嬌、甘える仕草は私にマネできる気がしない。二校分の男子票を集めたら私も相手の子も多分勝てないと思う。


『そして女子からの苦情が凄いよ。ネットとかで良く聞くサークルクラッシャーって心とか紬さんみたいな子を言うんだろうね』

「それはさすがに言い過ぎよ」


 否定はしないけど。心も所属する水泳部全部崩壊させてきたからね。

 あれで水泳の才能あるからまたややこしい。誰も文句を言えないのよね。

 嫌われ者と同士を引き合わせて親友同士にさせた私と雫の手腕を褒めてほしいと思う。


『話は戻るけど、揉ませてあげた方が男の子はやる気出るみたいだし、いいんじゃないかな。あとはアリサの気持ちだけだよ』

「それって実体験の話?」

『ノーコメント。あ、獅子くんから電話だ。じゃ、またね』


 ぶちっと切られてしまう。おのれ、平沢獅子め。雫にえっちなことをしてるんでしょ。許せないんだから。スマホを置いて、覚悟を決める。


 今日も涼真を喜ばせてあげるために胸元が緩い服着てるから準備は良し。ブラも可愛いのを選んでいる。もう一度ソファに座って、自分の膝の上に涼真の頭を乗せようとする。


「涼真、そのいいよ。それで気が済むなら……胸を触って」

「すぅ……すぅ……」

「だよねぇ」


 時間を掛けすぎたのかもしれない。ちょっとだけ安心したってのは嘘じゃない。でもいつかはえっちなことだって受け入れないといけない。私と涼真は恋人同士になるんだから。


「私だって涼真のカラダに興味あるんだからね」


「ん、うーん」


 それからスマホで時間を潰していたら涼真の体が動く。目が覚めたみたい。


「ごめん、寝てしまったみたい」

「どう? 私の膝の寝心地は」


「最高でした。太もものスベスベなところとか、空が半分しか見えないところか」

「それだけ?」


「頭撫でてくれるのがすげー気持ちいいよ。すごく安らぐ」


 安心しきった声で言われると本当に嬉しくなる。私はお世辞にも良い性格ではない。昔から敵も多かった。

 クラスのカーストトップなんて言われるけど私の場合は畏怖の方が強めの立場にいる。昔から中心にいたから例えば教室の隅でグループを作っているような子と仲良くした覚えがない。

 気が強いせいか人をいじめてそうって思われるのよね。

 そんなこと絶対ないのに。だから涼真が私に安らいでくれるのがすごく嬉しい。あなたを愛しく思っている間は優しくなれるから。

 時が来たらあの人を徹底的に詰め寄る予定だけどね。まだ証拠が揃っていないから何もできないけど。


「アリサ?」

「ん、何でもない」


「ごめん、本当に疲れてて……アリサの家に来てから記憶無いんだ。変なこと言ってなかった?」

「え? ああ~。うん、大丈夫」


 おっぱい揉ませてくれって言われたけど……。でもこれって涼真が本当に望んでることだよね。変って思うのは失礼な話よね。だって胸に興味を持つことは男の子なら当然だもん。私だって涼真が動揺してくれるから胸元が緩い服を着ているわけだし、変と思ってはいけない。


「涼真。文化祭が終わって落ち着いたらね。涼真がしたいこといっぱいしようね」

「うん」


「涼真が望んでることできるだけ叶えてあげたい」

「アリサは優しいなぁ。そんなところも素敵だ」

「だからいつでもおっぱい触らせてあげるからね」


「ありがとう。本当にそれは僕の一番願いだよ……。っ!」


 涼真ががばって起き上がる。


「今何て言った」

「え、えっと……その胸をその」


「やっぱり僕寝ぼけて何か言った!? アリサ、真っ赤だけどこっち向いて、僕の目を見てっ」


 やっぱり恥ずかしいよぉ。胸を触らせてあげるなんて言っちゃダメだったかな。よく考えれば私から言うべきじゃないよね。どうしよ、どうしよ。私はスマホを手にした。


「雫ぅぅ! 涼真におっぱい触らせてあげるって言っちゃったぁ! 私えっちな子かも!」

「アリサっ! 雫さんに絶対罵倒されるからそういう通話するのやめてっ!?」


 ちょっと騒ぎになったけどお互い話し合い、そういうことは正式にお付き合いしてからという話になった。そして涼真は睡眠を取って元気になったようだ。


「よーし、衣装を作るぞ~」

「あんなに疲れてたのに服作る時は輝いてるよね」


 涼真が衣装を作る時は基本私の家で行っている。涼真の家はひよりちゃんもいるし、学校からの距離的にもここで作った方がいいということで涼真は文化祭の仕事が終わったらここで夜通し作ってる。恋人(仮)の家で二人きりなのにずっと集中して作ってるもんなぁ。


「好きなんだよ衣装作るの。これやってるときは嫌なことも忘れられる。作って着せて喜ぶひよりの顔を見るのが嬉しいんだ」

「初めてデートした時のキュアキュアの衣装、本当に凄かったもん」


「だからどんなに忙しくても疲れていても衣装作りは妥協したくない」

「やっぱり涼真って雫と似てるよねぇ」


「あんな凝り性の鬼と一緒にされるのは嫌だなぁ」


 私からすれば似てると思うけどどっちも似てると言うとすごく嫌がる。代わりに私が平沢くんと似てるって言われるのは正直嫌。全然似てないし。


「出来た!」

「誰の衣装が出来たの。やっぱ平沢くん」

「アリサのだよ。僕にとって今はアリサが一番だから」


 私が聞きたい言葉を言ってくれる涼真しゅき。確かチーパオだよねぇ。ドレスならよく母の実家に行ったとき来たけど、中華系は初めてかも。


「着替えてくるね」

「うん!」

「ここで着替えた方がいい? 涼真が望むなら」

「個人的な思いで言うならすごく見たいけどっ! それは我慢するよ」


 血の涙を流すように歯を食いしばってる。冗談のつもりだったんだけど、やっぱり望むんだね。正式にお付き合いしたら私の自慢の体で悩殺しよっ。衣装を傷つけないようにゆっくりと着る。うん、寸法もぴったり。やっぱり涼真ってすごい。でも……でも。


「お待たせ」

「……」


 チーパオに着替えた私の姿を見て、涼真は呆然としていた。髪とか流したままだし、ただ衣装を着ただけなんだけど……。


「はっ!」


 涼真が息を吹き返した。


「あまりに綺麗で似合っていて、見惚れてしまっていたよ」

「衣装が可愛いからかな」

「アリサが可愛いからだよ」


 そんなはっきりと言われると顔が熱くなってしまう。あまり可愛いってのは言われ慣れてないのよね。美人とか綺麗とかはよく言われるんだけど……。涼真は両想いになってから素で言ってくるようになった。


「どう、衣装はきつくない? 一応みんなのサイズに合わせて作ったからびったりのはずだけど」

「大丈夫。でも採寸したのは雫とはいえ、涼真に知られるのは恥ずかしいなぁ」


「正直驚いたよ。アイドルでもここまでスタイルが良い子いない気がする。まだ成長中なんだよね」

「母とか叔母とかはもっとスタイルいいから……あと三年くらいで近い所まで行くんじゃないかしら」

「おお……。楽しみのような、末恐ろしいような」


 衣装は可愛いし、これで接客は楽しみではある。だけど気になることがあった。


「衣装に文句はないんだけど三つだけいいかな」

「どうぞ」


「まず、腰回り……。結構下着が見えるギリギリのラインなんだけど……ここまで丈を上げる必要あった? スリットも入ってるから見えそうなんだけど」

「必要なことです」


「次、背中がものすごく空いてるんだけど……。空気が入ってちょっと冷たい。ここを空ける必要あった?」

「必要なことです」


「最後、胸! 胸のスリットは絶対必要ないよね」

「必要なことです」


「これら全部、涼真の趣味でしょ」

「シュミジャナイデスヨ」


 私は自分の体に自信あるから見えなきゃいいけど、紬や特に雫は嫌がるだろうなぁ。作ってしまえば押し切れると思ってるのかしら。涼真の底知れぬ性欲を垣間見れた気がする。


「自分の好みの服が作れるからモチベーションが上がるってわけね」

「解析しないで。ま、その通りだけど」


 気まずい顔をする涼真をからかいたくなったので涼真の側に寄り、至近距離に近づく。ぎゅっと抱きしめるように涼真の背中に手をまわした。


「それで。涼真好みのチーパオを着た私が可愛いってことよね。ね、もっと見てもいいわよ。


 思いっきり近づいてあげると涼真の目が泳ぎ始めた。


「アリサ近い。その……あたって」

「ハグはしたいもの」


 私はハグをするのが大好き。雫にもよくハグしてたし、涼真にハグされるのは大好きだけど、自分からもしていきたい。これで涼真が喜んでくれるなら嬉しい。


「涼真、私を見て」

「……うん」


 私を可愛いって言ってくれるならもっともっと見てもらう。それでもっと好きになってもらいたい。初恋の女なんて忘れて欲しい。私だけを見て欲しい。


「アリサって本当に可愛い」


 涼真の目が少しうつろになった気がする。やっぱりまだ眠いのかな。涼真の顔が少しずつづいてくる。あれ……ちょっと待って、これ以上近づいたら。


「僕さ。アリサの顔で一番好きな所があるんだ」

「ど、どこ。胸? 顔?」


「違う。唇」


 そのまま涼真に唇を奪われて、頭の中が真っ白になった。


「すぅ……」


 衣装が完成した反動かそのまま眠ってしまう涼真。気が抜けたのかな。とりあえず言えることは一つ。


「キスしちゃった! ついにっ!」


 もちろんスマホを取り出す。


「雫ぅぅ! 涼真にキスされちゃったぁぁぁあ!」

『うるさい』


 平沢くんとイチャイチャしてる時だったのか雫は思ったより冷たかった。そして運命の文化祭がようやく始まる。


かなりアウトなチーパオアリサが挿絵でありますので良ければ書籍版にも興味を持って頂けると嬉しいです。

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