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11 学校一人気のあるボスに目をつけられた件⑦

「バス来てるから、先行くよ」


 水原さんが一足先に発進しそうなバスの方へ行く。


「じゃ、小暮っちも進展を楽しみにしてるからね」


 あっと言う間にあだ名をつけられてしまった。

 陽気な人だなぁ。

 水原さんを見送り、僕と朝比奈さんはバスを待つ。

 どっちの路線もあと十分後くらいに来る見込みだ。


「明るくて人懐っこい人ですね」

「そうね。あれでもだいぶ変わった方よ。中学の時は三人いつもべったりだったのに学校が変わってから一人で行動することが増えてきた」


「朝比奈さん」

「恋愛すると人は変わってしまうのね」


 ふぅと朝比奈さんはため息をついた。


「ところでこれからも雫に声をかけ続けるつもり?」

「まぁ。のんびりですかね。少しずつ仲が深められたらいいなって」


「遅い」

「え」


「それじゃ遅すぎるわ。すぐさま告白できるようにならなきゃだめ!」

「告白!? さすがにそれは早すぎると思います!」


 僕は親友のために大月さんに近づいているのに告白なんてしたら最悪じゃないか。

 なぜかは分からないけど朝比奈さんは相当に急かしているように感じる。


「それに僕一人でそんな積極的にいけるわけないです」

「だったら私が協力してあげる」

「へ」


「雫との仲立ちをしてあげる。雫と交際できるように私が協力してあげるから」


 なんでそこまでと思ったけど僕が大月さんに想いを寄せているって設定にする以上、否定をするわけにはいかなかった。

 若干心苦しいが僕は頷くことにする。


「……お願いします」

「もちろん雫と付き合いたいならそれ相応にならなきゃダメだからね。仕方ないから私がいろいろレクチャーしてあげるわ」


 やばい、思った以上の展開になっている。もう逃げられないかもしれない。僕が実は大月さんに好意がないってバレたら……八つ裂きにされるかも。


「あの……」

「なに」


「協力って言ってもどうするんです。さすがに学校では人目もあるから会話できないですし、部活あるので毎日は無理ですし、あの店で週一打ち合わせとかですかね」

「そうね。って言いたいところだけどそれじゃだめ。週一じゃ遅すぎる」


「それ以上は連絡先を交換しないと無理ですよ。でも連絡先交換は朝比奈さんの立場上は良くないですよね」

「別にいいわよ、はい」

 

 朝比奈さんがスマホをポンと差し出してきた。

 スマホにはラインのQRコードの画面が出ており、いつでも交換できる状態だ。

 僕は彼女の立場を思ってその手段を取らないように進めたのにその気遣いを何だと思っているのか。


「朝比奈さんって高校にいる間は同級生と連絡先を交換しないって言い張ってませんでしたっけ」


「え? あっ」


 朝比奈さんの口から空気の抜けた声が漏れる。

 さっきも言ったとおり朝比奈さんは男子との交流を完全に拒絶している。

 彼女の容姿を考えれば当然だし、自衛と言えば今のご時世、仕方ないで通ることも多い。

 だから僕も遠慮したんだよ。なのにこの人はもう……。


「朝比奈さんって実は結構抜けてますよね。もしかして学校では相当猫被ってます?」

「ちょっ、雫と同じこと言わないで!」


 やっぱり大月さんも同じこと思ってたのか。完璧なフリしたトボケ美少女、それが朝比奈アリサの正体だ。


「ぐぬぬ」

「うっ」


 僕に突っ込まれて朝比奈さんは悔し涙を目尻に浮かべる。

 怒らせたかって思ったけどスマホは差し出したままなので連絡先の交換はOKのようだ。

 僕は朝比奈さんのスマホのQRコードを読み込まして、互いに登録を完了した。

 まさか学校中の男子が望んでも手には入らない朝比奈アリサの連絡先をこの僕が手にいれることになるなんて……。

 バレたら男子から血祭りに上げられそうだ。朝比奈さんは自分のスマホをじっと見つめていた。


「私さ」

「はい」


「今思えば親兄弟以外の男子に連絡先を教えたの本当に初めてかも」

「ちょ、本当ですか!? てっきり学校外の彼氏の番号がズラリと並んでいると思ってました」


「ふふっ」


 夜も更けたバス停の灯りの下、朝比奈アリサはスマホを口元に当てて笑う。


「いたことないわよ彼氏なんて。……雫に想いを寄せるあなたの番号が私の初めてなんて何かすごく面白いわね」


 大食いで抜けてて、猪突猛進みたいな性格の彼女だけど、こういう姿は綺麗だと本当に思った。


 朝比奈さんと別れて最寄りのバス停で降り、僕は一人自宅への道を歩く。

 朝比奈アリサ。


 確かに綺麗な人だったし、初対面の時はドキドキしたけど……何かすぐに平常心で落ち着いたな。何となく性格や振る舞いに既視感があって……安心したような感じがあった。あれは……誰に似ている?


「おぅ! 涼真」


 家の前では幼馴染の平沢獅子(ひらさわれお)が僕の帰りを待っていた。

 そのいつも明るい笑顔に朗らかな気持ちになって、でも彼の制服を見て一変する。


「れ、獅子。制服が破れてるけどどうしたの」

「ああ、木に上って降りれなくなった猫を助けたらさぁ。引っかけて破れた」


「そんなまさか」

「あとついでにボタンも外れたから、いつも通り縫ってくれ」


「まったくもー! 獅子は相変わらず抜けてるし何も考えず突っ走るよなぁぁぁああ!」

「助かるぜ涼ママ」


「それはやめろ」


 こうして僕は朝比奈さんとの思い出も忘れ、いつもの騒がしい親友のお守りに勢を出すのであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

今話で一旦区切り、次話はアリサ視点のお話となります。ヒロイン視点は大事ですね!


本作を読んで頂けているならブックマーク登録や下側の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」に決めて頂けるととても嬉しいです!

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