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10 学校一人気のあるボスに目をつけられた件⑥

「はぁ……朝比奈さんって大月さんの宣教師みたいですね」

「悪くないわね。雫専用のザビエルってところかしら」


「もはや宗教レベルとか」


 小気味の良い相づちで会話が進む、その時だった。


「アリサ!」


 通りを進む僕達を呼び止める声。

 通りの逆側に視線を向けた。

 ウチの学校ではない制服に身を包む女子高校生。

 僕が朝比奈さんに視線を向けると気を許した時のような柔らかい顔立ちになっていた。

 その女性は横断歩道を渡り、僕達の側まで寄った。


「珍しいわね、こんな所で会うなんて」

「このあたりにいい店があってね、学校帰りに寄るんだよ」


 朝比奈さんと親しげに話す別の学校の女の子。

 肩まで伸ばしたミディアムヘアーに若干つり目な瞳が印象的。

 顔立ちは整っており、隣の朝比奈さんに匹敵するくらい可愛らしい。


 何より特徴はその体躯だろうか。

 身長は百七十センチある僕とほぼ同じくらい。

 なのに手足はどう見たって僕よりも長い。

 でもこの顔……どこかで見たよーな。女の子はちらりと僕を見た。


「もしかして彼氏とお邪魔しちゃったかな」


 いたずらっぽく言われる。

 そんな言葉に朝比奈さんがどんな顔をするか気になってちらりと見てしまった。


「バカなこと言わないで。彼氏が出来たらすぐにあなたと雫には言うんだから違うって分かってるでしょ」


「ま、そうだねぇ」


 予想通りではあるが、ここまで素だとちょっとだけ寂しい。僕と朝比奈さんでは格差がありすぎるから仕方ない。僕が獅子級の容姿だったら話は違ったんだろうけど。


「でも男子が苦手なアリサが連れそうなんて珍しいよね」


 朝比奈さんは男子が苦手? 嘘だろ。男子にすっげー強気だぞ。とてもそうには思えないが朝比奈さんはばっと飛び出し、その女の子の側に寄る。


「彼はね」


 耳元でゆっくりと呟いた。


「へ~」


 その女の子は小悪魔っぽい顔立ちで僕をじろりと見る。


「雫に好意があるなんて見る目あるじゃん」 

「うっ」


 何だか照れくさい。

 僕が大月雫さんに好意があるというでまかせがどんどん広がってしまったようだ。

 こういう時って女子にからかわれるんだよな。


「あたしは水原心(みずはらこころ)。アリサと雫の幼馴染なんだ」


 女の子は微笑んだ。やっぱりそういった関係だったか。

 そういえば水原心ってその名前と顔……最近テレビで見たぞ。そうだ確かあれは。


「水泳のオリンピック候補生に選ばれた地元の女子高校生」

「はは、よく知ってるね。最近、ニュースでインタビュー受けた時に知られたかな」


 そのニュースを僕は見ていた。

 この地区出身の水原さんが日本新記録を更新したことでニュースとなり、話題になっていた。

 見た目も凄く良いから男子の間でも話題になってたっけ。

 まさか朝比奈さんと幼馴染とは思わなかったけど。

 そういえば水原さんの着ている制服はこの近くにあるスポーツ強豪校のものだった。


「凄い方なんですね……」

「凄くなるかどうかはこれからだよ。雫と離れたせいで毎日寂しく寂しくてつらい」


 この人も大月さんラブな人だったか。このとんでも女子二人と幼馴染なんて大月さんも意外に凄い人だなって思う。


「心。あなたこれからどうするの? せっかくだし、ウチでご飯食べない?」

「いいね。って言いたいとこだけどごめん、先約があるんだ。あの人と今日は過ごすから」 


「……そっか」

「アリサ、まだ雫に隠さなきゃダメ? 雫の気持ちは分かるけど……あたしだって」


「分かってる。でもお願い、もうちょっとだけ待って」

「分かったよ。でもいずれはバレるよ」


 何か急に深刻そうな話をし始めたぞ。仲良し三人組を予想してたけど何かあるんだろうか。

 少し気まずくなっているのか朝比奈さんと水原さんは無言のまま立ち止まったままだった。

 ほぼ部外者である僕が言えることはただ一つ。


「あ、あの!」


 二人の視線が僕に集中する。


「大月さんのこと……もう少し教えてくれませんか。良ければ、帰りながら!」


 驚いたように目を開かせ二人の美少女が僕を見てくる。

 空気の読めない発言だったと思う。だけど……言うしかないじゃないか。水原さんは笑う。


「ふふっ、そうだね。そこのバス停までだけどあたしがいっぱい教えてあげるよ」


 ふぅ、何とか空気を変えることができたようだ。このまま無言で時間が過ぎて貰っても正直困るし……。

 あとはバス停まで適当に歩いてっておさらばかな。

 こんな二人の美少女と歩くのは気が引けるから距離を少し置こう。


「じゃああたしはこっちっと」


 水原さんが僕の左隣へと行く。そして右隣には朝比奈さんが。なぜ僕は今、美少女に挟まれているのだろう。


「じゃあ行きましょうか」

「せっかくだし手を組んであげようか?」


 それはマジで勘弁してください。それから僕はバス停に到着するまで両隣の女の子から大月さんの魅力について布教されまくった。


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