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宿題? そんな事より花火です!

作者: 椿時雨

視点絞ってみた。これはどうだろうか。

~宿題? そんなことより花火です! ~


 一か月弱という長い長い夏休みが始まってから早、三週間。

 この間私は一体何をしていたのでしょうか? 考えたくもありません。

 そう思いながら、『夏休み宿題プリント』なんて、楽し気に私の気分を沈ませて焦りと後悔を掘り返してくる楽しげな犬のイラストを見る。

 なんですか、この絵は。むかつきますね!

 そもそも、夏休みに宿題なんて出すのはおかしいと思います! というか、なんですかこのプリントの量は。明らかに、夏休みの宿題として出す量ではありませんよ? いくら進学校だからと言ってもこれは横暴なのではないでしょうか。夏休みのない教師陣の逆恨みを感じます。

 はあ。まあでも、仕方ありません。夏休み中遊んでいたのは私ですし、今更こんなことを思っても仕方がありませんしね。ここは大人しく、先生たちの思惑通りに、宿題をしてやりますよ。

 そんなことを思いながら、教科書とほとんど変わらない厚さのプリントを始末しようと手をかけたところで、ベッドの上に放り投げていたスマホにピコンッ! と通話アプリの通知音が届いた。

 時刻は既に深夜の一時。

 こんな時間に誰でしょうか? お兄ちゃん……ではないですよね。まだ、アニメを見ていますし……。では、あかねさんでしょうか。そう言えば、彼女もお兄ちゃんと同じでアニメが大好きでしたし、ついこの間、ポロッと口からこぼしたのが原因でしょうか? まあ、なんにせよ確かめてみますか。あっ、これは宿題をさぼるわけではありませんからね? ただ、通知が来たのにそれを無視するというのも相手に失礼だと思っての行動ですから! 決して、宿題をやりたくないとかそんな気持ちはミジンコ程にしかありませんからね?

 と誰に対しての言い訳なのか、そんなことを思いながら携帯へと手を伸ばす。

 通知に表示されていたのは短く一言。

 『今から花火しようよ!』

 やはり、あかねさんでしたか。でも、今から花火って大丈夫なのでしょうか……。巡回中の警察に見つかったりしませんよね? 私、職務質問を受けるのは嫌ですよ?

 でも、どう返信しましょうか……。正直なことを言うと、行きたい。それはもうすごく行きたい。どれくらいかって言われると、エサにがっつく犬くらいには行きたい。ですが、この時間だと下手すれば警察に見つかる可能性が……。どうしたものでしょうか……。

 そんなことを思いながら部屋の中を熊のようにうろうろしていると、突然スマホがその身を震わせた。

 『も、もしもし?』

 『あっ、もしもし、しおり? さっきも言ったけど、今から花火でもしない?』

 『別に構いませんが、今何時だと思っているんですか。もう少し常識をですね……』

 『常識も何も、あんた夏休みが始まってから明け方まで私の勧めたネトゲにログインしてるんだし問題ないでしょ?』

 『そ、それは確かにそうですが……。でも、今から花火ってご近所たちの迷惑になりませんか?』

 『やるのは近くの河川敷だから問題ないよ。それに、打ち上げるタイプのやつはやらないつもりだし。それより、どうなの?』

 行きたい……行きたいのですが……。警察と宿題が……。

 『職務質問にあったりとかは……』

 『今日は回ってこないから大丈夫だよ』

 そうですか。ああ、でも宿題が……。

 そんな私の気持ちはあかねさんの次の一言で花火のように散っていった。

 『高校最初の夏休みの思い出造りしようよ! こんな事出来るの、今の内だけだよ!』

 そ、そうですよね!

 『分かりました。では、現地集合という事でいいですか?』

 『了解。先に行って準備してるからね! じゃあね!』

 そう言って、あかねさんは通話を切った。

 高校での夏休みの最初の思い出……。世の中の女子高生と言うものは夏休みに何をしているのでしょうか? まあ、いいです。どうせ、カロリーの塊を貪り食ってやれイケメンだのなんだのやっているのでしょう。

 それより、花火です。急とは言え、花火、なんですからちゃんと浴衣を着て……。

 あかねさんと通話を終えた私は、中学の時に着ていた白を基調とした浴衣に袖を通していた。

 うん! 我ながらこの浴衣は似合いますね。さながら、夏の雪女のようです。欲を言えばもう少し、胸のあたりに栄養が行ってほしいのですが……まあ、周りの女子高生(笑)よりはスタイルもいいのでよしとしましょう。

 さてと。さあ、造りに行きましょうか! 高校生活初めての夏休みの初めての思い出造りに!


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