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4.婚約者様の接触

午後の昼下がり、場所は学園内のガゼボ。頭にはリリア用のカツラ。目の前に座っているのは、婚約者のウィリアム様。置かれた茶菓子に湯気をたてている紅茶。


リリアの振りをしたクレアをリリアだと思ってるクレアの婚約者ウィリアムとお茶の最中よ。ややこしいでしょ。わざとよ。


私も多少焦っているの。まさかリリアの私にウィリアム様が接触してくるなんて。何か用なのかしら。


それに私がいうのも何だけど、いつもとキャラが違うのよ。


私の知っているウィリアム様は私に負けず劣らずの無表情、なんなら眉間に皺を寄せている。会話は大抵お天気から始まって、ご家族は息災な事、飲んでいる紅茶の種類と産地プラス茶菓子について。後は庭園を散歩して花を愛でるというのがお決まりのパターン。


ところが目の前にいるウィリアム様は、最初こそ眉間に凶悪な皺を寄せたいつものお顔だったものの、リリア(私)と対面した途端、鳩が豆鉄砲喰らったようなお顔になった。その後一瞬の困惑、困惑の表情を挟んで今は微笑んですらいる。一人百面かしら?それともこれはリリアパワーなのかしら。だとしたら凄すぎない?


「会うのは初めてだったな?君のお義姉さんの婚約者のウィリアム・ドゥプラスだ。今日は突然誘って悪かったな。」

「リリア・ミュレーズです。本日はお誘い頂きましてありがとうございます。」

「…公爵家に来て二ヶ月ほどと聞いているが、随分と所作が綺麗だな。」

「っ!たくさん練習してますから。うふふ。」

「…練習…。」

「今日はとても良いお天気ですね。」

「…そうだな。」


焦り過ぎていつも通りに挨拶した上に、うっかりお天気の話までしてしまったわ。慣れって怖い。それにしてもさすがウィリアム様、気を抜けないわ。


「ところで公爵家での生活は慣れたか?」

「はい!皆さん本当に優しくて楽しく暮らしています。」

「クレアとは仲良くしているのか?」

「勿論です!寝る前は隣のお部屋から合図を送りあってるんです。」


本当よ。“お休み”の意味で4回壁を叩き合うの。以前読んだ本で仲良し姉妹がやっていたのをずっと真似したかったのよね。


「昨日の夕食は何を?」

「チキンの香草焼き、一口キッシュ、温野菜とエビのアヒージョ、コンソメスープ、デザートにはパンナコッタといちごタルトです。」

「…美味そうだな。」

「何か?」

「いや、何でもない。」


何なのかしら?ボケ防止に前日の夕食を答えるって聞いた事あるけど、さすがにまだ大丈夫だと思うのだけど。澱みなく答えるとウィリアム様はあからさまにホッとした顔をしていた。


「…そうか、良かった。何か問題はないか?」

「?特にこれと言ってありませんが?」

「…じゃあ、君はその…何をしているんだ?」

「??普段ですか?お義姉様とドレスの着せ替えとか、お義母様も交えてお茶会とかですね。」


ウィリアム様は何だか奥歯に何かが引っ掛かったような顔をされていたけど、結局その後当たり障りない会話をしてお茶会は終了したわ。何だったのか意図が全く分からないままだった。


けれど、このお茶会によって思わぬ所から予想もしなかった方向に話が展開してしまった。


「リリアさん!見ましたわよ、ウィリアム様と先程お茶をしてらしたでしょ?」

「えぇ。お声をかけて頂いたの。」

「…どうでした?」

「?楽しくお話しましたよ?ウィリアム様はとても紳士的な方ですね。」

「やっぱり!お二人とってもお似合いでしたもの!」

「???いえ?ウィリアム様はお義姉様の婚約者ですけど。」

「運命には逆らえませんわ!私は応援します!」


どうしたのかしら、全く話を聞いてもらえないわ。しかも似たような会話をこの後五回ほどする事になった。困り果てた私は早々に帰宅しアンリ先生に事情を説明した。


「恐らく“野の花~”の影響でしょう。ヒロインが義姉の婚約者と恋に落ちるシチュエーションを現実でも期待なさってるんでしょうね。あと先生やめて下さい。」

「全く話を聞いてくれないのよ。妄想族が逞しすぎなの。アンリ先生、どうしたらいいかしら?」

「話を聞いてくれないと困る事に気づいて頂けて良かったです。先生やめて下さい。まずはリリア様に扮している時のウィリアム様との接触を控えては如何ですか?」

「そうね!さすがアンリ。」

「お嬢様、成長なさいましたね…。」


リリアが学園に来るまであと二ヶ月。平穏な学園ライフのためにお姉様は頑張るわ!


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