女心
井上は仕事を終え車を自分の家に向かわせた。着替えやちょっとした小物を取りに帰る為だ。
家に付きまずは彼女へのメールを打った。すると電話がかかって来た。
おぉ!と思い電話を見たら相手は太刀川だった。体も少し疲れていて今は彼女以外とは話をしたくなかったので無視して着替えなどをバッグにつめた。
よく考えると汗まみれのまま2日も風呂に入ってない。「こりゃ、ヤバいかもな。」
せっかく彼女との仲も良くなりそうなのにこれではイメージダウンだ。
服を脱ぎ洗濯かごへポイと投げて風呂場へ。
風呂場の前を通ろうとした時に何気なく鏡に自分が映った。
えっ?これ俺??
そこに映ったのは2日前からは確実に痩せた自分の姿があった。
冷静になり鏡に顔を持って行くと頬も少しこけていて大きなニキビがいくつか出ていた。
このニキビはカッコ悪いな....と潰してみたら、勢い良く吹き出した。
しかし、まだ何か中に残っている様な気がしてならない。同じ所を何度も潰していた。
当たり前だが潰したニキビからはもう何も出てこない。が今は脳がショートしている状態だそんな判断も出来ずピンセットを持ち出した。
普段なら痛いと思える程の力をいれてニキビを潰していた....気付くと裸のまま数時間もニキビを潰していた。
顔はぼろぼろで血だらけになっていた。それに気がついた時には既に手遅れだった。
「いかん、俺はなにやってんだ!」冷静になり自分の顔を見て少し呆れながらもべとついた顔をその場で洗い風呂へ入った。
体を洗いながら湯船にお湯を張る。まだ半分程だったが洗い終えると即座に風呂へ入った。
何とも気持ちがいい....全身の疲れが一気に抜けて行くようだ。
「はぁ〜」思わず息が漏れてそのまま目をつぶった。だんだん体の力が抜けて行き首から上がふらふらしだした。
ポチャ!
顔を湯船のお湯につけて目が覚めた。「あぁ、寝てた。」
お湯も冷めて今や水になっていた。「うぉ、これじゃ風邪引くぞ」と自分に言い聞かせながら風呂から上がり体を拭いた。
服を着て彼女の家に移こうかと思い携帯を充電器から取り上げてみるとメールが入っていた。彼女からだ。
もう家に着いたと知らせて来ていた。「え?何時だ??」ふと時計を見るとなんと深夜の3時。
時間を無駄にしたようでショックを受けた。メールも今から1時間程前に着ていたようだ。
「今夜はいくのをやめよう、彼女も今日はゆっくりしたいだろう。」とつぶやき彼女にお疲れメールを送信した。
中途半端に目が覚めて考えたら何も食べていない。お腹がすいた訳ではないが確実に昨日よりは食べられる自信が有った。
下のコンビニへ弁当を買いに出る事にした。
しかし、この顔では非常におかしい....だが何か食べとかないと明日は確実に持たない。
意を決してコンビニへ.....幕の内とお茶を選びレジへ「お弁当は暖めますか?」
いつもの問いに「はい」と答えた。会話は少ないとはいえよく顔を合わせる店員だやはり何か気になるようでこちらをチラチラみている。
会計を終わらせると早足で自宅へ戻った。
「やっぱり、少し怪しいよな。明日会社どうしよう....」
そう思いながら部屋に入り弁当を開けた。
ご飯やおかずの香りが辺りに立ちこめたが食欲はそそらない。
先ほどまでは食べれる自信があったがいざ目の前にするとそうでもなかった。
「はぁ〜でも少しでも食べとかなきゃな....」しぶしぶ口元へ運び食べだした。
すると食べた物が食道を通過し胃に行くのが分かった。完全に体が弱っていたのだろう。
そう思うと無理をしてでも食べなければと思い全部食べた。食べ終え一服しようとタバコを探しながら彼女は大丈夫なのだろうか?と気になった。
しかし、こんな時間にメールや電話をしてもし寝ていたら逆に起こしてしまって良くないな〜と思いながらタバコを吸っていた。吸い終えると今度はに睡魔が襲って来た。座ったまま、頭をまたふらふらしだしたと思いきや倒れた様に眠りについた。
携帯の目覚ましがなった。この音だけは条件反射で目が覚めてしまう。
うわぁ、眠いよ......今日はダメだ.....以外と仕事に真面目なのだが流石に起きる気力を睡魔が押さえつけている。
しかし、本来の真面目さというか気の弱さが電話だけは会社に入れなくてはと行動を起こさせる。
今は時間が少し早く会社に電話しても誰もいないだろう。そう考え、社長の携帯へかけた社長は朝が早くいつも電話の電源を入れているのを知っていた。
更に,社長は温厚な上にめったに怒る事がないからだ。
「もしもし、おはよう。どうしたんだこんな時間に」
「すいませんこんな早くから、実は昨日ですね、家の階段で顔から落ちちゃいまして全身が痛いんですよ。」
「そうか、仕事はできそうか?」
「大した事はないのですが顔中傷だらけで目元も腫れてて片目が開きにくいので運転がどうかとおもいまして。」
「そりゃいかんな、大事がなくて何よりだが今日は休むか?腫れも一日じっとしてればひくだろう。」
「はい、すいません。明日には直ってると思います。」
「そうだな。では今日はゆっくりするといい。」
「ありがとうございます。」
何とか言い訳をし顔のフォローも先に手を打っておいた、安堵の気持ちにまた眠ってしまった。
その後、昼過ぎに目を覚まし携帯を見ると彼女からのメールをチェックした。
来ていない。僕がこんなに浮かれた気持ちなのに彼女は何も思ってないのか?それとも寝てるのかな?
そう思いながら水を飲んだ。
カーテンを開けるとものすごく眩しかった。
電話しようかメールしようか考えたが寝てるかもしれないなぁ〜、せっかく鍵ももらった事だし行ってみようかな。
車の鍵をとり昨日まとめたバッグを片手に家を出た。