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弱者

ヨッシーは友達のウエムラに電話した。

「おうヨッシーどうした?」

ウエムラは派遣社員で昔の同僚だ、少しアングラ系の趣味が有りルートを持っていると睨んだ。

「ねぇ、薬とかって手に入らない?」

ウエムラは驚きを隠せなかった。

「お前、止めとけって!もしかしてそんな事やってんの?」

「いやいや、違うよ。ただ、お前はそんな事しそうだから聞いてみただけ。」

「ふざけるなよ。大体俺がやるはずないだろ?それにあれってすごく金かかるらしいじゃん。お前の方こそ急にそんな事言いだして怪しいな」


ヨッシーは脅されて探しているとは言えないので

「いや、知り合いが薬してて捕まったもんでふとお前が心配になってなぁ、捕まった奴もアングラ系の雑誌とか買いあさってたから」


「おいおい、何言ってんだ?一緒にするなよ。しかし、それは寂しい事だな。心配してくれてありがとう」ウエムラとしてはどうでもいい事だが早く電話を切りたかった。 


その後も数人に電話をいれたが入れたが電話をすればする程、廻りの信用を失って行った。


そしてヨッシーは後輩のシミ君に電話した。

「あ、安部さんすか?お疲れっす」

シミ君はフリーターで佐賀県出身の20代位前半だ。


「おうシミか?お前の知り合いでシャブ扱ってる奴いないか?」

「安部さんシャブやるんですか?」少し驚いた様子だ。


「いや、俺じゃね〜けどよ組関係の奴がいて俺に頼み込んでくるもんだから。」

さすがに後輩にも脅されて探しているとは言えない。


「そっすね〜、バイト先の奴なら居ますけど俺あんまり関わりたくないっすね」

人ごとである。シミはそもそもヨッシー(安部)のことをナメている。

ヨッシーは日頃から虚勢を張り、見栄を張り、口ばかりなのを見透かしている。

更にノリが軽すぎるのである。

井上が偶然、ヨッシーの店を訪れた時も軽いノリで井上に話しかけて来た様に

ヨッシーは軽いのである。

しかし、そんなヨッシーもいまは必死である。


「なぁ、何とかならない?』

「いや、何とかって言われても僕がそいつに会いたくないんっすよねぇ〜。」

「んじゃさぁ、俺も着いて行っていいなら一緒に行くから。」

「いや、安部さん勘弁して下さいよ。」

「おい、俺とお前の付き合いじゃん。なんとかならね〜かなぁ。」

なるはずがない、そもそも日頃から軽い(信用されていない)男の願い事など聞くだけ無駄である。

そはシミも感じていた。

ヨッシーは後輩に最後の手を使った


「おぉ、んじゃ俺今から組の奴にお前の事言うよ、お前が協力しないって。シャブ売ってくれる奴を隠してるってよ。」


するとシミが言った

「おう、言えよ。なんならそいつ連れてこいよ。」

シミはヨッシーを日頃から舐めておるので今更脅しには屈しなかった。


さすがはヨッシーだこの展開は読めていなかった。

というか行き当たりばったりで生きて来た彼には予想すら出来なかった。


しょうがないのでヨッシーは

「おい、お前が困った時に昔5千円貸してやったろ?飯だってよく奢ってやったじゃん。今は俺が困ってんだから頼むよ。それにこんな事はお前にしか頼めないだろ?俺ってなかなか人を信用しないタイプだしさぁ。」

今度は哀れみをこう作戦に出た。

彼はこの手でさんざん女を騙して来ただけあって切り返しは早い。



シミは面倒くさくなり「あぁ〜んじゃ少し待ってて下さい。それと今回だけですよ、後で連絡します」

というと一方的に電話が切れた。


するとすぐにヨッシーの電話が鳴った。波多である。

「てめぇ〜何やってんだ。俺がどんな状況か分ってないようだな!おぉ??」

いきなりの怒鳴り声である。

ヨッシーは慌てて

「すいません、今ですねちょっと連絡待ちなんですよ。すぐに折り返しますから」

「あのなぁそれならそうとと連絡の一本ぐらい入れよ。」

波多はすでに兄貴分気取りである。

「はい、すいません。すぐに折り返しますから。」

「んじゃまってるからとにかく急げよ」

波多はヨッシーの言葉を聞いて少し安心したのか電話を切った。


ヨッシーは馬鹿正直に架空の親分に恐れをなして怯えていた。


ヨッシーの携帯が鳴ったシミからだ。

「あぁ〜量はどれくらいですか?」


肝心な事を聞いていなかった!ヨッシーは慌てて言った。

「少しでいいと思うよ」

シミは聞き返す

「少しってヤリですか?ヤリなら1万らしいっすよ」


ヨッシーは訳が分らず「うん、そうだね」

と言ったがすぐに良かったのか悪かったのか迷いだした。

「んじゃもう一度連絡します」

と言ってシミが電話を切った。するとヨッシーは空かさず波多に電話を入れた

「おう、どうだ?」波多が聞くと

「ヤリ?って言うんですか?それなら有るそうです。」

「ほぉ〜幾らだ?」

「1万です」

「お前1万有るか?立て替えておいてくれよ。こっち来た時払うから」

波多は金がなかった。なけなしの金を太刀川に吸い取られたばかりである。

しかし、ヨッシーもギリギリであった。

「すいません、手持ちがないんですよ」

「お前なぁ、俺が今ココ離れる訳には行かないの分ってんだろ?なんとかしろよ。」

困ったもんである。ヨッシーは色々考えだした。

シミはさっきの様子からも払ってもらえそうにはない。

目の前には店のレジが有る。誘惑にかられた・・・・

しかし、気が弱すぎるヨッシーは悔しそうに自分の財布を開いて札に目をやった・・・

悔しさで涙が出て来そうになった。

脅されて金を出す自分の弱さにだ。

しかし、この手の人間は何度も悔しさを経験しすぎて慣れっこである。

この気持ちが向上心に発展する事は少ない。

本当に悔しければいま、この環境には居ないはずである。


すると、今度はシミから連絡が入った。

「あぁ、今からいいそうです。なので店まで迎えに行きますねぇ。」

「あぁ、わかった。」と言うと電話はすぐに切れた。


ヨッシーは店には交代のバイトがくるまでいつも一人である。

”すぐに戻ります”と張り紙をし

店を勝手に閉めた。



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