旗を降る踊り
波多はヨッシーからの利益でシャブを買うつもりだ。勿論、気持ちはすごく”煽っている”
営業中だったので会社の車に乗り少し冷静になろうと深呼吸をした。
そしてゆっくり車を走らせた・・・
その後、逸る気持ちを押させて会社に帰ると太刀川が先に休憩室でコーヒーを飲んでいるのが見えた。
波多も事務処理を終わらせ休憩室に入った。
「おぅ、ハタぼう。お疲れ」太刀川が言った。
波多は前置きなく「今日ある?」
すると太刀川が言った・・・
「井上に貰えば?」
何を言い出すんだ??と一瞬、ムカッとした。
と同時に”やっぱりやってたかぁ”と思った。
「何で、急にそんな事言うんだよ。俺、いつも太刀川にはちゃんとしてんじゃん」
すると太刀川は
「お前なぁ、んじゃ先に金を渡せよ。つけがたまってる事忘れてんじゃないか?」
さすがは太刀川だ自分の金に関しては几帳面だ。
波多もそれには納得してヨッシーからの売り上げを全部渡した。
波多は1万円だけ引いてくれないかと頼んだ。
すると太刀川が
「俺も兄貴にヤリで頼むのはいやなんだよな〜」
ヤリとは1回分程度(0.2g程)の量の物だ。
続けて太刀川が言った「そうだ井上と一緒に1万ずつ出して引けば?」
「えぇ、そりゃ無いだろ〜大体なんて言ってこんな話するんだよ。」
太刀川は冷めた目で波多を見ながら
「しるか」
と言って缶コーヒーを飲みながらタバコを吸い出した。
波多は考えた見た・・・・が脳みそが空回りして何も思い付かない。
そもそも腐っている脳みそだ何も出てくるはずがない。
困っている波多に太刀川が
「多分あいつ今日も少し効いてるぜ、帰って来たら様子を見ながら言ってみな。優しく話しかければ奴はのってくるぜ」
波多はこんな抽象的なアドバイスでやる気になった。
さすがは太刀川だシャブ中の波多など手にもかけずに操れる余裕が或るし井上に対してもあながち無理な読みではない。
太刀川は1人より2人の方が経済的な負担を分担できて回転率が上がる事を期待したし何よりも井上を自分の子分に引き入れたいのだ。
3人のなかでは会社で一番下っ端の太刀川がそれ以外の所では逆転しようとしている。
一方の井上はシャブ歴の浅い男である、
自分が薬をコントロールしていると錯覚に落ちている。
しかし、すでに頭の中はミカとキメセクをする事でアタマがいっぱいになり始めていた。
野外、ハメ撮り(撮影)など愛より勝りかけていた。
愛は平常だが薬は異常なのだ理性ではなかなか押さえきれないのが現実かもしれない。
何も知らずに井上は会社に帰って来た。