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気弱な僕

「おつかれさまでした〜」


井上は少し元気のない声でいつもどうり職場を後にした。仕事は運送業だ。

最近、彼女が浮気をしているのを確信したのだ....

 職場を出るとすぐに同僚が声をかけて来た。


「おい、コウちゃん待てよ。何を落ち込んでんだ?」

井上を呼び止めた太刀川は色々な噂がある奴で

彼は一見すると人当たりはいいが

昔、埼玉や東京で宝石関係で詐欺を働いていたヤツだ。

詐欺の名残かいつも副業的な事をやっているようで羽振りはそこそこいいが借金を相当貯めていて追われて来たとも聞いた。

その稼ぎで借金を払えばいいのにとよく思う。

あまり、信用はしていないが今の所は無難なオトコだ。

「何か悩みがあるんだろ?」

太刀川はあまり酒を呑めないので居酒屋への誘いは滅多にないが立ち話はその分好きな方だ。

駐車場の自動販売機コーナーで缶コーヒーを買ってこちらへ来た。

僕はタバコに火をつけると彼もタバコを吸い出した。

少し立ち話をしてると彼が言った。

「なんで、暗いんだよ。今日は朝はそんな顔してなかったぜ?」

心配してくれているのか野次馬根性か?まぁ、関係ないが話のついでに事情を話した....

「なるほど、んじゃどうしても別れたくはないのかい?」

「だってさ、相手に取られると俺の負けって感じしないかい?」と答えると

太刀川は「お前の自尊心が優先で相手の女の子は二の次って感じもするけど、まぁ〜気持ちは分かるよ。」

彼はコーヒーを飲むと続けて話しだした。

「経済的には多分相手が上だろうな〜」

全く嫌な事を言うなぁ、とも思いつつ外れてはいない。

正直、彼女とは気持ちよりも体の相性がいいのは事実だ

勿論、愛情もあるのだが気の強い所がありよく喧嘩になるのも事実だった。

太刀川は続けて言ってきた。

「どうしてもって時は奥の手があるぞ、でもこれはなぁ〜...」

「何?」

「いやいや、どうしようもない時に教えてやるよ。」

もともと信用していないオトコの言うことなので僕もそれ以上は聞かない事にした。


僕はそのまま自分の車に乗り曲をかけた。

thug lifeがかかっていた。これを聞くとよく彼女と知り合った頃を思い出す。

職場を後にそのまま彼女の家へ.....

はっきり言ってこんなに僕をボロボロにしたのは彼女が始めてだ。

わがままで気まぐれ、理屈が通用しない。まさに感情の女王様と言う感じだ。


しばらくすると彼女の家に着いた瞬間すぐに分かった。

...彼女はいない....

木造二階建ての少し古い2Kに住んでいて駐車場から彼女の部屋の玄関がすぐに見える。

しかし、こういうアンバランスな状況では玄関をみただけ...と言うよりなぜか雰囲気で分かるもんだ。

悲しみと怒りが吹き上がるが何故かこの気持ちにも慣れてきた冷静な自分もいる。

とはいえ即座に携帯に連絡を入れた。

「留守番電話サービス....」

違う女の声だ....というか電源が入っていない。

...クソっ、もういいや、別れよ....と今まで何度も頭をよぎり、今回も同じ事を思った。

そのまま2時間近く彼女の家の駐車場にいた。

心の弱いオトコは「もしかしたら、買い物かも」などと下らん事を思い相手の言い訳を考えてあげるもんだ。

しかし、現実はそんなに甘くない事は時間が証明している。彼女のいそうな場所を回りながら家路を辿った。


家に帰り、涙をギリギリでこらえながらコーラを飲み、テレビを見たりゲームをしたり本を読んだり.....

しかし、携帯チェックは忘れていない。メールや電話もかなりの数を発信したが今だ返事が来ない。

結局、ソファで自分で自分を哀れみながら眠ってしまった。


「ざ〜す」

僕は昨日の事を考え引きづりながらも何食わぬ顔で仕事に就いた。

勿論、仕事中も何度も彼女への連絡は忘れてはいない。

『ピィ〜ピッピッ』

見ると警察が僕のトラックを止めている。あわてて止めると警察官が

「車をそこの左側に止めてくれる?」と言った。

あぁ〜、携帯のメールを打っていたのが見られたようだ。

「運転手さん携帯触ってたよね?、こんな大きな車でそれは危険だよ〜ちょっといいかな。」

免許書と車検証を要求され黙って出した。

免許書を渡しパトカーの後部に座らされ、携帯電話の事を言われたあとも

色々と聞かれあまりにも長いので

「おい、まだかよ?事件が合ったらSECOMに頼むからもう、俺に関わるなよ」

と言うと少しむっとした若い警官がにらみつけて何かを言いかけた、すると助手席の年配警官が

「はい、もういいよこれからはドライバーの自覚を忘れず安全運転でね。」

と言うと助手席の窓から手を出し後部座席を空けた。

僕は、トラックに戻るとすぐにメールを確認し少し落胆して運転に戻った。

今日のルートを終えて会社の駐車場について携帯を見ると彼女からの着信があった。

僕は全く気付かずに見ると...呼びだし時間1秒との表示。


何故か怒りより先に安心感があった、がすぐに怒りがわいてくるがとりあえず電話をかけた。

するとすぐに出た。僕は怒りに任せて「あぁ〜もしもし!!あのさぁ〜」

と言った瞬間更に怒った声色で彼女が

「もしもし、何あのメール?私はず〜っと京子ちゃんの家にいたんですけど!」

...でた....嘘見え見えなのに、逆ギレで彼女の物語が始まった。

この物語は多分、彼女の作ったストーリーを大声で聞かされて一方的に電話を切られて終わり、その後すぐにかけても電源が入っておらず、2〜3時間後にこちらが低姿勢でかけないと終わらない理不尽な展開だ。

んで、調子良く話が出来るときは浮気相手が相手してくれない日だ。


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