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緑豊かな地 エリア020地上居住区

キャラクターの台詞は「ボイコネ」というアプリに対応した表記にしています。


エリア020の地上居住区は、「地球最後の自然」と呼ばれている。020の居住区には手付かずの自然が残されていて、自然保護区としても扱われているのだ。


戦争によって荒れ果てた地上は、人間達によって打ち捨てられたが、大地は少しずつ再生していた。かつての過ちに気づいた人類はこれ以上大地が傷つかない様に、保護活動を始めていた。


エリア012にも地上の居住区はあるが、あちらは人が住んでも問題ないだけで、自然は少ない。建物も雑然と並んでいるので、一般市民からの評判も良くない。


一方でエリア020の居住区には、住宅を建てる事にも制限がかけられている。住人による自然破壊を防ぐ為の経歴などのチェックも、他のエリアとは比べ物にならないほど厳重である。


そのせいで020の地上居住区の人口は少ないが、地上にあるのは自然公園だけでは無い。行き場を失った子供達を受け入れるための、孤児院も建てられている。


現在は各地で戦火が発生していて、今まで以上に家族を失った子供が増えている。エリア020の上層部は、そうした難民の救済にも積極的である。


難民が増える現状を見た空中居住区の住民達は、反戦のデモに非常に積極的である。一方で市民と警察の衝突による怪我人も発生してしまっている。


その状況を少しでも落ち着ける為に、eLNAによる孤児院の子供達を呼ぶチャリティーコンサートが企画された。人気の歌手であるeLNAが020に来る事で、民衆を一つに纏められると考えたのだ。


ーー


ミサキ:ここから見ても、緑が綺麗だ…


エリア019の隣にあるエリア020の地上には、他の土地とは違う大自然が広がっている。遠くのエリアから見ても分かるほど、広大な自然公園なのだ。


ミサキ:あの土地が踏み荒らされる様な事になったら…人類に救いは無いね


他のエリアの地上に広がっているのは、荒れ果てた曠野だけであり、012は人が住める土地だが自然は少ない。人類が始めた償いの証であるあの緑が、焼き払われるなどあってはならない。


ーー


ハヤト:eLNAの020でのチャリティーコンサート、ササハラさんの所の孤児院の近くのスタジアムでやる事が決まったみたいだ。


ユイ・ササハラさんは父さんの友人で、孤児院を経営している。しっかりとした気丈な性格の女性で、身寄りをなくした子供達を守る事に心血を注いでいる。


ハヤト:私達だけでは無く、ミサキにも来て欲しいと連絡が来た。確認するまでもないな


ミサキ:もちろん!すぐに準備する!


父さんからの連絡を受けて、私はすぐにエリア020に行く準備を始めた。ユイさんに連絡して、泊めてもらう許可を貰った後は、パスポートのチェックだ。


ミサキ:012から来た人はやたら厳しくチェックされるからな…


エリア間の行き来が自由な今の時代にしては珍しく、エリア020に入るには許可証が必要となる。特にエリア012の地上はイメージが悪いので、やたらと怪しまれるのだ。


ミサキ:まぁ前科なんてないし、無事に入れるだろうけど


パスポートの有効期限も確認して、私は020に向かう準備を済ませた。エルナのライブ…実は直接現地で見るのは初めてなのだ。


ーー


ミサキ:020の空気は012とは全然違う…


パスポートのチェックは予想通りしっかり行われたけど、怪しまれる事は無かった。駅を出るとすぐそこが自然公園になっていて、眩しい程の緑が見えた。


ミサキ:流石に道は舗装されてるね


地上居住区のメインストリートは舗装されていたけど、脇道を見てると舗装されていない道が細かく枝分かれしていた。私は公園の散策は後回しにして、両親との合流を急いだ。


ミサキ:もう夕方…早くしないと


ーー


ユイ:ミサキちゃんやっと着いたのね


ミサキ:遅れてすみません…


私は孤児院の横にある、職員用の住居に泊めてもらう事になっていた。既に子供達は寮の方に戻っていたので、静かだった。


ミサキ:ここの子供達…かなり良い環境で暮らせているみたいですね。


ユイ:子供達に質の良い生活をさせる為の努力は、惜しむ必要はないの


孤児院があるこの街には学校もあり、教育の面でも困る事はない。この街の中心部にあるスタジアムで、チャリティーコンサートが行われる事になっている。


ーー


スズネ:無事に着いてたのね!良かった…


ミサキ:連絡遅れてごめん


連絡をしていなかったせいで、先に到着していた両親からはかなり心配された。私が到着して数十分後に、夜ご飯を食べる事になった。


ーー


ユイ:どうかしら?012育ちのあなたからすると、シンプルすぎるかもしれないけど…


ミサキ:大丈夫です。いただきます


ユイさんが用意してくれた夕食は、パンとチーズ、ハムやカプレーゼと、シンプルなものだった。020の家庭では、夕食はそこまで凝った料理をしないのが基本だそうだ。


ーー


ユイ:将来はこの孤児院で働きたい?


ミサキ:はい。自分のやり方で、戦争の被害者を守りたいんです。


正直、自分でもかなりふわふわした志望動機という事は分かっている。それでも、ここで働きたいという意志を示しておきたかった。


ユイ:まぁ、危険なエリアで救助活動をするよりは、現実的な選択肢だよね。色々審査させてもらうけど


ユイさんは、私の将来の考えに一定の理解を示してくれていた。どちらにせよ、今の軍に関わっている会社での仕事は数年以内に辞めるつもりだった。


ーー


eLNAのチャリティーコンサートが行われるのは、私が020に到着した翌日だ。コンサートに招待されたのは孤児院の子供達以外にも、学生や小学校の生徒などである。


ミサキ:会場としては…まあまあなサイズかな


ネットの情報によると、コンサートの会場となるスタジアムは、普段はベースボールなどのスポーツの会場としても使われている。今回のライブではチケットの販売は公には行われず、来場者の半数以上が招待された人達である。


ミサキ:eLNA以外のゲストは…


今回のチャリティーコンサートにはeLNA以外にも数グループのゲストが呼ばれる。019で高い人気を誇るバンド"LEONheart"や、エリア030出身のDJ"QIboy"など、有名アーティストが参加する。


ミサキ:やっぱり一番楽しみなのはeLNAかな。事前に会う事は出来なさそうだけど…


エルナと連絡したが、ライブの準備でかなり忙しいという事だった。その為、友達とは言え一般人でしかない私と会う時間は取れないという事だった。


ミサキ:まぁ仕方ないか…


既に23時を過ぎていたので、早く寝床に就く事にした。明日はそこまで早く起きる必要は無いが、ユイさんに迷惑をかける訳にはいかない。


ーー


020は朝食もシンプルで、自分が食べる分だけサンドイッチやハムを食べるスタイルだった。朝食を食べ終えた後は、色々と雑用を頼まれたので引き受けた。


ユイ:悪いね、こんな仕事を手伝わせて…


ミサキ:大丈夫ですよ。ちょうど、時間を持て余していたので


ただライブに行くのを待つよりも、こうやって体を動かしていたい気分だった。意外と忙して、時間も早く過ぎていった気がする。


ユイ:次は子供達の昼ご飯の準備だよ。020で一番しっかりとした料理をするのは、昼食の時だからね


私は孤児院の子供達の昼ご飯の準備を手伝った後は、ライブに行く準備を始めた。


ーー


ライブ会場には孤児院の子供達以外にも、なんと修学旅行で来た学生達も招待されていた。やはり、多くの学生が意外な形でeLNAのライブを観れる事を喜んでいた。


マイケル:LEONheartも来るんだよな!楽しみ〜


アイリス:前座なのが残念だよね…


学生達にはLEONheartの方が人気がありそうだった。今も人気が上昇し続けているバンドで、特に若年層のファンが増え続けている。


ミサキ:まぁ、私が一番楽しみなのはeLNAだけどね


ーー


QIboy:みんな盛り上がってるな‼︎次はついにeLNAだぞ〜‼︎


QIboyのパフォーマンスが終わり、次はeLNAのステージだ!

私のテンションも高まる中で、eLNAがステージに現れる。


ミサキ:このイントロは…still fightだ!


eLNA:gravitational、pull〜still「I」fight…


ーー


エルナ:良いのかな、孤児院の方に行って…


ミサキ:大丈夫だよ


チャリティーコンサートが終わった後、私はエルナを連れてユイさんの孤児院に向かっていた。芸能事務所は孤児院の子供達に会ったらトラブルが発生するかもしれないからと指示を出したけど、寮の建物に入らなければ大丈夫だろう。


エルナ:今回のライブは普段とは来てる人たちの雰囲気が違ったな…


ミサキ:子供達がメインだったからね。でも、いつものライブと同じ歌声だったよ


ーー


ユイ:まさかエルナさんを連れて来るなんて…


エルナ:ミサキとは友達なの!


ユイ:簡単な料理しか無いけど、平気かしら?


エルナ:大丈夫です!


今晩は、孤児院の職員用の住居で、エルナと一緒に夕食を食べる事になった。エルナも020の食文化に驚いていたけど、興味を持ったみたいだ。


ーー


エルナ:ここの地上も良いねぇ…緑が豊かだし


ミサキ:012と違って、建物がゴチャゴチャしてないからね


エルナ:私は012も好きだよ!あそこのラーメン美味しいもん


ミサキ:ふふ…確かにね


エルナも緑豊かなエリア020の地上が好きになったみたいだ。感受性が豊かな彼女にとっては、居心地が良い場所なのかもしれない。


エルナ:戦争がずっと続いたら、ここも焼き払われるのかな。いつまで続くんだろう…


ミサキ:それはダメ。ここが焼かれるなんてあってはいけない事


エリア060から始まった戦争は多くのエリアを巻き込んでいた。いつ終わるとも分からない争いに、人々は不安を抱いていた。


エルナ:私…また、ここの子供たちの為に歌いたいな


ミサキ:良いと思う。きっとみんな喜ぶよ


争いはいつまで続くか分からない。


でも、私たちはこの世界で生き続けるしかない。


エルナ:いつまでも友達で…


ミサキ:どうしたの?


エルナ:ううん…なんでも、ないよ


ミサキ:大丈夫…私は、いなくならないから


次回はエピローグとなります。


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