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第8話「不良から助ける創造主さま」

「なぁ、オレたちと遊ぼうぜ?」


「嫌! 離して! あんたたちみたいな不良と游ぶ趣味なんてないわ」


「ああん? 誰が不良じゃ? もういっぺん言ってみい!」


 女一人と男複数の言い争う声が聞こえてくる。

 見るとファミレスの駐車場で言い争いをしている女子一人と男子複数の姿があった。

 制服から察するに有栖川みかんと同じ学校の生徒のようだった。


「何をやってるんだ。嫌がってるだろ? 離してあげなさい」


「ああん? な、なな、なんやあんた……!」


「や、やべえ……ずらかるぞ!」


「あ、おい!」


 俺は近寄って声をかけてみた。

 すると不良っぽい男子たちは俺の顔を見るなり顔を蒼白に染めて逃げるように走り去っていった。

 なんなんだ……失礼な奴らだな。


「ったく……なんなんだよ」


「あ、あの――」


「うん?」


「た、助けてくれてありがとうございます……」


 鮮やかな赤髪をポニーテールに結った髪、深紅の瞳。ツリ目寄りでどこか勝ち気そうな印象を与える少女は小さい声で俺にお礼を言った。


「ああ、別にいいよ。たまたま通りがかっただけだし。君、緑野学園の生徒?」


「え? そうですけど……どうしてですか?」


「知り合いに同じ学校の女の子がいるからさ。あとタメでもいいよ」


「あ、うん。女の子……? 彼女さん、なの?」


 赤髪の美少女はとんでもないことに有栖川みかんを彼女かと言い出した。

 俺は思わず吹き出しそうになるのを必死にこらえて反論した。


「ぶっ!? か、彼女なわけあるか!」


「彼女いるの?」


「いないが」


「いないんだ。ふーん」


 なんだこの会話は。

 俺に彼女いてもいなくてもどっちでもいいだろう。


「なんだその反応は……そういえばケガとかないか?」


「え? ないけど?」


「そうか。それならいい」


「……気にしてくれてるんだ?」


 そういえばこいつはさっきの不良男子たちに腕を掴まれたりしてたな。

 見た感じも外傷はないみたいで安心した。


「まあ、ちょっとな」


「ありがと……そういえば自己紹介がまだだったわね。私は暁鏡花、緑野学園の2年生よ」


「あ、暁鏡花……?」


「そうだけど? それがどうかしたの?」


 暁鏡花あかつききょうか

 有栖川みかんの幼馴染で同級生でクラスメイトの、ヒロイン寄りのキャラクターのイメージだ。

 妄想力たくましい有栖川みかんの暴走をたしなめて止めることができる数少ない人物の一人だ。


「いや、綺麗な名前だなって」


「そう? 名前負けしてるような気がするのよね……」


「大丈夫だ。むしろ買ってるまであるぞ」


「そ、そうかな。なんだか照れちゃうわね」


 鏡花は恥ずかしそうに髪の毛の毛先を弄る。


「今日は部活か何かなのか?」


「え? 普通に学校よ? 金曜日で、平日だし」


「そ、そうなのか……そうか、今日は平日なのか」


「なに? 学校行ってないの?」


 今日は平日で普通に学校の授業があった。

 その事実を聞いた俺は違和感を覚えた。

 じゃあなんでアイツは、有栖川みかんは家にいたんだ? 休んだのか? 何のために?


「……大丈夫? 顔色悪いわよ?」


「あ、ああ……大丈夫だ、問題ない。それより帰り送ろうか?」


「私は大丈夫だけれど……あなたの方が心配だわ。送ってあげましょうか?」


 アイツは俺のことを縛り上げるような女だぞ? 学校を休むくらいのことはなんとも思っていないはずだ。

 落ち着け落ち着け落ち着け。

 俺は大丈夫だ。

 これは夢だ。そう、夢なんだ。

 それなら、全てが解決する。


「いや、さすがに悪いというか申し訳ないというか」


「大丈夫よ。まだそんなに遅い時間でもないしね」


「いや、だけどな」


「良いから良いから! ほら、どっち?」


 空を見るとまだたしかに陽は傾き切っていない。

 鏡花は俺の腕に鏡花の腕を絡ませてくる。

 いわゆる腕を組むというやつだ。

 密着感も然ることながら柔らかいものが当たる感触がして何も言えなくなってしまう。


「あ、あっちだよ」


「奇遇ね? 私の家も同じ方角よ。行きましょうか」


「良いのか?」


「何がよ」


 男女が腕を組んでいるという状況に俺は驚いていた。

 少なくとも初対面の男女のすることじゃない、はずだ。

 俺は我が子のように知ってるがそんなことはこいつは知るはずもない。

 そして多少目を引くのは確実。

 実際に何人かの視線を感じるし……鏡花はまったく気にしていないみたいだが。


「勘違いされるかもしれない」


「……されたい?」


「なわけあるか」


「くすっ、そのわりには顔赤いわよ?」


 小悪魔的な微笑みを浮かべる鏡花。

 その顔は奥手な男子をからかうときのそれだった。

 いや、俺は違うが。


「なっ、」


「冗談よ」


「なんだその冗談は。思春期かっ」


「思春期、でしょ?」


「…………」


 どうやらこいつには俺が十代のガキに見えるらしい。

 俺は成人してるのにな。悲しい限りだ。

 そしてそんな雑談を交わししばらく歩くと有栖川屋敷が見えてきた。

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