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第4話「そして私は創造主さまにめぐり逢う」

「うわあああああ! だめだあ……全然、みかんっほくない。有栖川みかんはもっとこう――」


「ふふっ、また私のこと話してる。嬉しい……でも――」


 どれくらいの月日が経過しただろうか。

 有栖川みかんのいる世界に時間の変化はもうない。

 なぜなら物語が完結しているから。

 つまり創造主の頭の中では既に答えは出ているのだ。

 しかし納得できないでいる。


「…………私のことだけ考えてくれたらもっと嬉しいのに」


 少なくとも有栖川みかんがこの映像を見始めてから創造主のいる現実世界では三ヶ月ほどの時間が経過していた。

 気付かぬ間に有栖川みかんは創造主にいびつな独占欲が混じった恋心を抱くようになっていた。


「さあて一段落したし、そろそろ新作に取り掛かるか。タイトルは完璧すぎる学級委員長は俺にだけデレるツンデレ幼馴染だった件。にでもするかヒロインの名前は――」


「え……嫌……やめてよ……」


 創造主は新しい物語を紡ぎ出す。

 その瞬間、画面にノイズが混じり始める。

 それは有栖川みかんの想いと呼応するようにノイズは徐々に激しさを増す。

 このパソコンに創造主の他世界作品に干渉する力はない。


「考えないでよ……私以外の、私がいる世界以外のことなんて!」


「――――」


 ノイズが混じりすぎていて創造主が何と言っているか聞き取れない。

 ただ眠ることなく今日までずっと見てきた有栖川みかんには理解できた。

 創造主はこの世界以外の世界。

 この世界以外のキャラについて考えていると。

 創造主が楽しそうに考える様子から見て取れた。


「認めない認めない認めない! あなたが私以外のヒロインのことを考えるなんて許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないッ!!」


 有栖川みかんは涙を流し狂ったように叫びながらキーボードを乱暴に叩く――するとパソコンの画面が暗転して画面が切り替わり一番上に小説編集モードと書かれた画面が表示された。

 その下には――


「え……なに……?」


 有栖川みかんは涙に濡れた顔で驚く。

 画面には――


「物語を再構築しますか?」


「なによ……それ……」


「主人公、猪狩圭介。メインヒロイン、有栖川みかん。小説タイトル、”俺の彼女候補はヤンデレでお嬢様だった件"」


「メインヒロイン……もしかしてこれがこの世界が小説で、私がその登場人物だとでも言うの?」


 ”物語を再構築しますか?"

 そう表示されていた。

 テキストを読み上げるソフトか何かが起動しているのか機械的な音声で読み上げられていた。


「物語を再構築しますか?」


「物語を再構築……でも私にはさっきの男性が――」


「創造主をこちらの世界に組み込むことも可能」


「創造主って、さっきの?」


「YES」


 まるで生きてるかのように答えるパソコンの音声。

 その名前が今までパソコンの画面に映し出された人物であると解ると有栖川みかんは決意する。

 物語を再構築する決意を。


「じゃあやって」


「物語再構築の実行を確認。再構築します」


「…………」


「ERROR! 主人公、猪狩圭介は完結処理を実行済みのため物語再構築が実行不可能。主人公登録が未登録になりました。主人公登録を再度行ってください」


 エラーの表示。

 どうやら主人公登録というのをしなくてはならないようだった。



「な、なにそれ……主人公登録……これ?」


「YES」


 有栖川みかんは訳も分からずマウスを操作し主人公登録という項目にマウスカーソルを合わせるとパソコンの音声に問い掛ける。

 返事はYESだった。


「これをすれば再構築が……」


「マスター権限を持つ創造主以外の主人公登録には本人確認が必要です。主人公登録しますか?」


「本人確認って私しかできないってこと……? わかった。お願い」


「主人公登録実行を確認。Webカメラ認識。該当登場人物検索、有栖川みかんが該当。主人公登録を実行します」


 主人公登録を行うように指示する。

 主人公登録の本人確認のためWebカメラで有栖川みかんを映し出しパソコン内部データと照らし合わせて確認すると主人公登録を実行した。


「やった。これで――」


「主人公登録完了。メインヒロインが未登録になりました。メインヒロイン登録を実行してください」


「主人公登録の次はメインヒロイン登録……? もしかしてそれも本人確認が必要?」


「NO。登場人物一覧から選択可能」


 これで物語再構築ができると喜んだのも束の間、メインヒロイン登録を指示される。

 もしやと思い、有栖川みかんは本人確認が必要か聞いてみたが答えはNOだった。


「えっとメインヒロイン登録で登場人物一覧を参照。誰がい――え? 創造主?」


「創造主のデータを取り込みました。主人公もしくはメインヒロインに選択可能。但しその代償として創造主の――が削除されます」


「それはだめ!」


「……創造主の――を削除でなら?」


「! それなら! メインヒロインは創造主さま!」


 正しい順序で選んでいき登場人物一覧の一番下に創造主と表示されて有栖川みかんは目を見開いて驚く。

 どうやら創造主をこちらに取り込むことに成功したらしい。

 有栖川みかんは嬉しい気持ちを抑えながら創造主を選択しメインヒロイン登録を実行した。



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