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第2話「家なき創造主さま」

「創造主さまはいなくならないですよね?」


「いなくなんてならないよ。ただ帰らせてもらうだけで」


「帰る……? どこへ?」


 俺はとりあえずこいつと話すのは構わないが家には帰りたい。

 そのことを自称有栖川みかんに言うときょとんと不思議そうに小首をかしげて見つめてきた。


「そりゃ自宅にだよ」


「自宅……? 創造主さまの自宅なんてこの世界には存在しないんですよ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「え? 今、なんて……」


 俺は震えた。この自称有栖川みかんの、少女の言葉に。

 なんとなくそうではないかと思っていた。

 こいつは有栖川みかんを自称しているのではなく、正真正銘、本物の有栖川みかんかもしれないと。

 オウムのオムちゃんのくだりからもしかしたらここは現実ではないのかもしれないと。


「だから一緒に暮らしましょう! 大丈夫です! うちは空室がいっぱいあるので創造主さまのお部屋はすぐご用意するので!」


「ち、ちょっと待ってくれ! そんなのありえないだろ……?」


「……ありえない?」


 満開の桜のような笑顔で有栖川みかんは笑った。

 その笑顔は無邪気な少女のそれでヤンデレヒロインのそれとも似つかわしくはいない。

 いやこれもたしかに有栖川みかんだ。

 彼女は俺に最高のもてなしをしてくれるに違いない。

 だが俺はこれが現実だと受け容れられない。

 恐怖で声が震える。

 そんな俺とは対照的に有栖川みかんは俺の言葉をニュアンスを理解できていないようだった。


「そうだろ? ゲームや漫画じゃあるまいし! 別の世界だなんて」


「創造主さま。この世界は創造主さまが創造した世界、”俺の彼女候補はヤンデレでお嬢様だった件"の世界ですよ」


「は、はあ!? そんなわけ……そんなわけが……」


 俺は一瞬、思考がフリーズする。

 なぜかって? こいつが明確に俺の小説の――俺の書いたヤンデレ小説のタイトルを一語一句間違えることなく言ったからだ。

 こいつは本当に俺のヤンデレ小説のヒロインなのか? それとも俺の小説のキャラクターだと思い込んでるヤバいやつなのか!?


「創造主さま……確かめてみますか?」


「確かめる?」


「はい。外をお散歩すれば、創造主さまが間違っているか、私が間違っているのかわかりますでしょう?」


「あ、ああ……そうだな……」


 有栖川みかんは同情したのか俺の拘束を解いてくれた。

 俺はその有栖川みかんの提案に乗る。

 外を歩く。

 たしかにそうだ。

 外を見ればここが小説の世界なのか現実世界なのかはっきりさせることができる。


「創造主さま、行きましょう」


「なんだよ、逃げないって」


「違います。私が創造主さまと手を繋ぎたいだけです」


「っ……」


 鎖の手枷足枷から解放された俺は立ち上がる。

 瞬間、有栖川みかんに握られる。

 俺が逃げるとでも思ったのだろうか。

 逃走の意思を伝えると有栖川みかんは笑顔で恥ずかしげもなく言った。


「創造主さま……?」


「手を繋ぎたいだけって付き合いたてのカップルかっ!」


「あっ……でも、なれたらいいですね。なれたらいいな」


「いいものかっ」


 俺は有栖川みかんの手を振り払う。

 しかし有栖川みかんはそんなことをしても小さく声を上げて残念そうにするだけで強要してこなかった。

 なれたらいいのにカップルに。それはどこか叶わない願いのようで、祈るように有栖川みかんは呟く。


「創造主さま……私が彼女……お嫌ですか?」


「はぁ? 別に嫌とかじゃない。ただお前が本当に有栖川みかんなら運命の人がいるだろ?」


「運命の人……?」


「猪狩圭介のことだ」


 うるうると今にも泣きそうな悲しい表情で見つめてくる。

 俺はそれに対してこの小説の主人公の名前を出す。

 猪狩圭介。

 この有栖川みかんと結ばれる男だ。


「猪狩圭介? あぁ……壊れた人形のことですか」


「は? 壊れた人形……?」


 瞬間、有栖川みかんの表情は今まで笑顔はどこに捨ててきたのか無表情で無機質で無感情な冷え切ったもなのに変わった。

 主人公であるはずの猪狩圭介が壊れた人形……なんだよそれ。


「そんなことより早く行きましょう! お外を散歩! きっと楽しいですよ!」


「お、おい!」


 俺は有栖川みかんに手を掴まれ、手を引かれて部屋の外へ連れて行かれる。

 有栖川みかんの表情はさっきまでの無感情の冷たい目が嘘のように笑顔だった。

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