〜8時10分の待ち合わせ〜
この作品は、中学の時の親友が高校生になり初恋をして、バレンタインの日に思い切って好きな人を8時10分に学校に呼び出してチョコをあげるという話を聞いて思いついた作品です。
物語はフィクションですが、親友の恋が叶いますようにと思い書きました。
小説を書くのは初めてですが、読んでいただけると嬉しいです。
〜8時10分の待ち合わせ〜
登場人物
川瀬 藍乃
高校1年生
宮沢 翔
高校1年生
結那(藍乃の中学からの親友)
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2月13日夜
今日は日曜日、翔が明日の学校の準備をしていると
ピロン〜♪翔の携帯に1つのメールが届いた。ふと見てみると。
(明日、朝8時10分に昇降口に来て下さい!)
それは、翔と同じクラスの女の子からのメールだった、名前は川瀬藍乃、真面目であまり目立たない女の子、翔はクラスの女子にあまり興味が無いが、唯一名前を覚えてる子だった。
「急にどうしたんだろう」
翔はメールを返信した。
(どうしたの?)
すると、直ぐに返事が返ってきた。
(渡したい物があるの!)
「渡したい物?あっ、もしかして」
翔はメールを見ながら何故か頬を赤らめた。
そして、何故か胸が高鳴っているのを必死に隠して(わかった!)と一言返信をし、その日は早くベッドに入った。しかし、動悸が止まらず、なかなか寝付けなかった。
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2月13日朝
藍乃は、朝から明日のバレンタインのためにチョコを作っていた。ほとんどは、同じクラスの女友達に配るためのチョコだったが…一つだけ、みんなのと違う、明らかに手の込んだチョコが、紛れ込んでいた。
それは、藍乃が密かに恋をしている翔に渡すものであった。
藍乃が、翔に恋をしたのは、文化祭の時だ、藍乃が文化祭実行委員でクラスの出し物の準備をしている時
クラスの男子がはしゃいだり、ふざけたり、真面目にやらなかったりして、もうどうまとめればいいのか分からなくなっていた。
そんな時
1人だけ真面目に手伝いや男子に注意をし纏めようとしてくれている男の子がいた、それが、翔だったのだ。
それから、藍乃は、翔を目で追うようになり、日に日に恋を募らせていった。
しかし、もうすぐ、進級、クラス替えがある、もしクラスが離れてしまったら、二度と翔の視界には入れない、だから、今回勇気を出してバレンタインで、チョコを渡すこと、想いを伝えることを決心した。
バレンタインのチョコを作る藍乃
「あっ〜緊張する〜どうやって渡そうかな?」
「結那に相談してみよう!」
藍乃は、中学からの親友結那に度々恋愛相談をしていたので、バレンタインの事も相談することにした。
ピロン〜♪
(ねね!今年のバレンタイン翔くんにチョコ渡そうと思うんだけど、どうやって渡せばいいかな?)
数分後
ピロン〜♪
(バレンタイン渡すの?!!!)
(うん!どうしよう!)
(う〜ん…じゃあ、朝早めに行って渡せば!)
(早め?)
(他の子に渡してるのバレるのも恥ずかしいじゃん)
(確かに!!!)
(よし!頑張れ!応援してるね!)
(うん!ありがとう!)
藍乃は、結那からの、後押しで、いつもより少し早い8時10分に翔を呼び出すことにした。
ようやく、全員分のチョコを作り終わると藍乃は翔にメールすることにした。
「よし、これで大丈夫かな?」
藍乃メールを読み返してみる。
(翔くん、急にごめんね、明日朝チョコ渡したいんだけど…昇降口に8時10分に来てくれない?)
「いや、これじゃあ、好きなのバレバレじゃん」
「う〜ん、難しい、翔くんに変に思われないように…」
藍乃はこの後結局読み返しては消してを繰り返しメールを書き終わるのが夜になってしまった。
「よし、もうこれでいいや」
((明日、朝8時10分に昇降口に来て下さい!) )
「どうにでもなれ」
ポチッ
「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」
「どうしよう、やっぱ迷惑だったかな?」
ピロン〜♪
(どうしたの?)
「えっ!」
藍乃は、すぐに携帯を見た!それは翔からの返信だった、メールには(どうしたの?)
藍乃は思いきってメールを返信した。
((渡したいものがあるの!))
すぐに返事が来た。
ピロン〜♪
(わかった!)
藍乃は、飛び跳ねて喜び、明日の緊張と胸のドキドキを堪えて、明日の学校の準備をしていつもより早くベッドに入った、しかし、顔の火照りと鼓動が止まらずなかなか寝付けなかった。
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2月14日バレンタイン当日
朝早く起きた藍乃は、チョコをカバンにつめて、家を出た
「よし、頑張ろう!」
学校に着くと、深呼吸をして、教室に入る、もちろん誰もいない、今の時間は、8時待ち合わせまで後10分
「よしもうすぐ翔くんが来る」
藍乃は渡す分のチョコを持って昇降口に向かう。
待ってる間、今まで感じたことがないくらい胸がドキドキして、心が叫びたいってこういうことなんだなぁとふと思った、そして、残り5分
着々と、時間が進むのを感じ心の中でカウントダウン後4分…後3分…後2分…後1分…後0分…
「あれ?少しくらい遅れるよね?」
少し心配な顔で昇降口1人待つ藍乃
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2月14日バレンタイン当日
「翔!翔!〜」
朝早く母は、真っ青な顔をして翔を起こした。
「翔!翔!早く起きて!」
「なに?」
「おじいちゃんが病院に運ばれたって」
「えっ?」
「話はいいから、早く着替えて急いで出るよ」
「学校は?」
「もう連絡したから…今日は休み」
「でも…今日は…」
「ほら行くよ」
母は、翔を連れて急いで病院に向かった。
結論でいえば祖父の、容体は、心筋梗塞だった、しかし、早期発見だったため、大事には至らなかった。翔は藍乃に連絡する暇もなく一日が終わり…深夜それに気づきメールを送った。
(夜遅くにごめんね…。今日、朝行けなくて本当にごめん。急に祖父が病院に運ばれちゃって…)
ポチッ
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2月15日バレンタイン翌日
返信は翌朝帰ってきた。
ピロン〜♪
(大丈夫!気にしないで!チョコ渡したかっただけだから…チョコは今日下駄箱に入れとくね。)
(ありがとう!)
翔は、ホットして学校に向かった。
下駄箱には、藍乃のメール通り、しっかり丁寧に包装されたチョコが1つ入っていた。
翔は教室に入り、藍乃にお礼をいいに行こうとするが、何故かタイミングが悪いのか、一日中話せる機会がなかった…
翔は何故か違和感を感じた、それがなんなのか分からないが、胸がチクチクして、その日から藍乃を目で追うようになった。
彼女を見てると、真面目に見えて少し天然なのか、よく小さなミスをしてる、それが可愛く見えてきて、いつの間にか好きになっていた。
しかし、自分の気持ちに気づいた時にはもう遅かった。
3月になって翔は藍乃に意図的に避けられてることを知った。
もうすぐクラス替えもあるし、このままクラスが離れてしまったら、藍乃との(クラスメイト)という関係が崩れ、ひとつも関わりがなくなってしまう。何とか気持ちを伝えないと。
そして、ある行動に出ることを決心する…。
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2月15日バレンタイン翌日
朝、藍乃は、腫れた目を冷やしながら、昨日のことを思い出していた。
8時10分になり、なかなか来ない翔が遅れてくるかもと、ギリギリの時間まで昇降口で1人待っていた。しかし、翔は来なかった…
「あれ?何かあったのかな?」
「来ないってことは、振られたのかな?」
「なんだろう、どうしてこんなに苦しいんだろう…」
「あれ、なんで、勝手に…止まって、ねぇ止まってよ」
藍乃は、初めて感じた失恋のショックに涙が止まらなかった、我慢しようとしても、出てくる涙を、自分で止めることは出来なかった。
教室に戻ると、翔が学校を休んだことを知る、なぜ休んだかは、知らされなかった。そのため来たくなかったと、解釈してしまい、その日はなんとか重い一日を終え、帰ってからは泣き続けた。
「明日はちゃんと吹っ切って、普通に接しられるようにしよう!」
その日は、早くに泣き疲れて寝てしまった。
「藍乃まだ寝てるの?」
母の、声とともに現実に戻った
「起きてる!」
藍乃は、返事をして急いで学校の準備をした。
ふと携帯に目をやると
【メールが届いてます。(翔24:15)】
翔からのメールに気がついた藍乃は、重い指を動かしメール画面をタップした。そこには
(夜遅くにごめんね…。今日、朝行けなくて本当にごめん。急に祖父が病院に運ばれちゃって…)
「そうだったんだ」
藍乃は、来れなかった理由を知り納得して、返信メールを打つ
(大丈夫だよ!そっちこそ大変だったね。本当は、翔君にバレンタイン渡そうと思ったんだ…後、好きって言おうと…)
その瞬間昨日の気持ちが蘇る。
目頭が熱くなる。メールを打つ指を止め
「もしかしたら、迷惑だったかも」
藍乃は何を考えてもネガティブな事ばかり考えてしまいもう一度翔に告白できるような勇気は無くなってしまった。
「恋があんなに苦しいなんて」
「吹っ切らないと」
告白文を消して明るい文面でメールを返した。
((大丈夫!気にしないで!チョコ渡したかっただけだから…チョコは今日下駄箱に入れとくね。)
)
その一言を送り、藍乃は、学校へと向かった。
学校に着くとメールの通り下駄箱に昨日渡そうと思ったチョコを入れて、教室へ向かった。
そして、後から翔くんが教室に入ってきた、するとこちらの方に向かって歩いてくる。
「あの、川瀬さ…」
「ねぇ、この前の委員会の提出今日までだったよね出した?」
「あっ、忘れてた、藍乃手伝って。」
「いいよ!」
藍乃は咄嗟に、翔を避けるように友達に話しかけてしまった。
それを見た翔は、自席へと戻って行った。
それから顔が合わせられず、そのまま避け続ける日々が続いてしまった。
3月になり、クラス替え発表の日が迫ってきた。
藍乃は、相変わらず、翔を避けていた。
そんな中(3月13日)始業式の前日、放課後、委員会が終わり帰宅しようとロッカーを開けると1つの手紙が入っていた。
宛先は不明で、内容は
( 明日、朝8時10分に昇降口に来て下さい!)
藍乃は、自分が翔に送ったメールの内容が何故書いてあるのか、冷やかしかと思って、家に帰って、手紙を机の奥底にしまった。
その夜、藍乃は放課後の宛先不明の手紙が気になっていた。
「どうして、メールの内容がバレたんだろう。」
「まさか、翔くんが誰かに見せた?」
「ってか、なんでこんなことするんだろう?本当にただ話したいことがあるとか?」
藍乃は、明日の呼び出しに応じて行くか、それとも行かないか、沢山悩んだ結果一応行くことにした。
「しょうがない、明日誰が書いたのか見に行くだけ見に行こう。」
手紙の宛先人を見て決めることにしたのだ。
次の日、朝8時00分、少し早くついた藍乃は、昇降口の死角の場所で待つことにした。
「ここなら見えないよね、あと10分誰が来るかな」
藍乃は、何故か、ドキドキしていた、それもそのはず、誰かに呼び出されたのなんて藍乃にとって初めての事だから。藍乃が、緊張しながら待っていると。そこに、1人の制服を着た男子が走ってきた。藍乃は、足音に気づき、誰か確認した。
そして思わず一言
「えっ!嘘でしょ」
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(3月13日)放課後
翔の決心から数日後
(川瀬藍乃)という名前が書いたロッカーの前で、制服を着た男子が手を合わせ何かを願っていた。
「お願いします。川瀬が来てくれますように。」
それは、藍乃のロッカーに呼び出しの手紙を入れた翔だった。
数日前の翔の決心はホワイトデーに、謝罪と感謝と告白をする事だったのだ。
呼び出しの手紙は、わざとあの日と同じ文面にした。
また、翔はあえて宛先を書かなかった。それは、藍乃があの日から自分を避けている事に気づいたから。
翔は、ロッカーへ手を合わせ終わると、急に緊張してきて、いてもたってもいられなくなって昇降口を速足に出ていった。
そうして、翔は明日のお返しを買って、家へと帰った。
その夜、学校の準備を早めに終わらせ、明日の朝起きる時間を目覚ましにセットして。寝た。いや、正確には布団に入っただけ、寝ようと思っても明日の事を考えると緊張してきて寝れなかった。日付が変わる頃やっとのことで眠りについた。
朝いつもより早めに起きて、寝癖を整える。そして藍乃へのお返しのプレゼントを持って、家を出た。
「行ってきます。」
外に出ると、とてもいい天気で春の木漏れ日を感じさせるようだった。翔は1つの深い深呼吸をして。学校へと向かった。
「よし、頑張ろう!」
学校に着くと、誰もいない校庭にとても不思議な気持ちになる、すると何故か無性に走りたくなった。きっと、緊張から気持ちが興奮状態なのだろう。
「ここから、昇降口まで、ダッシュだ!」
心の中で(よーいスタート。)、ドラマのカチンコが鳴るように翔の告白と言う大切な人生ドラマがスタートを切った。
息を切らしながら昇降口に着くと。ここでも、誰もいないことを確認して。時間を見る。
「えっとー8時5分あと5分かもう少しで来るかな?」
(ガタッ!!、何かが倒れる音がした。
「誰かいるの?」
翔は音がした方へと少しずつ近づいた。
すると、目の前で何かが飛び出してきた。
「わっ!」
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3月14日ホワイトデー当日
「えっ、嘘でしょ。」
「なんで翔くんが…なんのために?」
藍乃が見た、制服を着た男子は翔だった。
あまりにびっくりで後ずさる、すると、後ろにあった傘立てが倒れた
(ガタッ!!
藍乃は、頭がま真っ白になった。翔がこちらを向いて少しづつ近づいてくる。
「やばい見つかる。」
逃げられない。もうダメだと思い。藍乃は、自分から出てくことにした。
「わっ!」
「おはよう、翔くんごめん、宛先が書いてなくて誰が来るか分からなかったから、隠れてた。」
「ってかどうしたの?」
翔くんは驚いていた。そして、少し落ち着いてから笑顔で話し出した。
「おはよう、あ〜びっくりした急に川瀬さん、出てくるから。」
「今日は、これを渡したくて。」
翔から渡されたのは、可愛らしい包装をされた箱だった。
「これは?…」
「バレンタインのお返し。まぁセンスは保証しないけど。笑」
「笑…」
「でも、本当にバレンタインのチョコありがとう。美味しかった。後、あの日約束守れなくてごめんね。」
「ずっと話したかったんだけど、なんかだんだん話せない空気になってて。」
「いや、翔くんのせいじゃないよ、私があの日の後、翔くんと話すの気まづくて逃げてたの。こっちこそ、ごめんね。」
「いや、約束守れなかったのは俺だから。本当ごめん」
2人は、揃って頭を下げる。それが、あまりにもおかしくて2人とも思わず笑ってしまった。
「笑」
「笑」
何となく緊張感が溶けた2人、そんな中、翔は、告白を切り出すことにした。
「あと、今日呼び出したのは、話があったんだ。」
「えっ?なに?」
少し間があき深呼吸をして翔は口を開く
「川瀬藍乃さん君が好きです。」
「えっ」
「君とは、たまたま同じ学校に入学して同じクラスになったっていうつながりで。正直、最初は、頑張り屋な子だなぁとしか思ってなかった。でも
あの日のバレンタインを境にどんどん目が離せなくなって気づいたら好きになってた。」
「こんな俺で良かったら付き合ってください。」
藍乃は、びっくりして、しばらく声が出せなかった。そして、少し頭を整理させる。藍乃の心は決まっていた。そして、流れてくる涙を拭いながら、答える。
「私も、翔くんが好き。」
「バレンタインの日も、本当は告白しようと思ってた。でも、あの日告白できなくて、諦めようと思ってた。本当に私でいいの?」
翔は嬉し涙を浮かべる藍乃を抱きしめる。
「藍乃がいいの。」
藍乃は翔の胸の中で言う。
「名前で呼んでくれたの初めて。」
「これから、そう読んでいい?」
「いいよ。」
少し落ち着いた頃藍乃はふと時計を見る。
時計は、8時10分を指していた。
「今度こそ本当に約束守れたね」
「えっ?」
「ほら時計見て。」
「8時10分」
「じゃあ、今日が俺達が付き合った記念日だ。」
「これからよろしくね。」
そうして2人は、誰もいない昇降口で、こっそりキスをした。初めてのキスはほんのり甘い香りがした。
2人のチョコのような恋
少しビターなチョコと、とても甘いチョコ。
苦い恋と甘い恋
これからも、2人の恋は続く〜
〜8時10分の待ち合わせ。〜
最後まで読んで下さり誠にありがとうございました。
この作品のように皆さんの恋が叶うことを願っています。