一話
魔王討伐への道のりは決して楽なものではなかった。
勇者アキラ、剣聖エナ、そして託す者の僕の3人で構成される勇者パーティは、それぞれが無くてはならない理想のパーティだと思う。
その3人の力が結集して初めて魔王と対峙するに至ったのだ。
「トーマ!いくよっ!」
「わかった!僕の力を2人に託す!」
エナの声を皮切りに、僕は全力で能力を発動する。
「―――エントラスト、発動」
僕の体から発せられた眩い光が2人に乗り移る。
「今日は力のノリがいいじゃねぇか」
パーティの要、勇者アキラがニヤリと笑みを浮かべた。
「いくぞぉ!!」
「うん!!」
爆発的な速さで2人は魔王へと向かっていく。
―――頼む、無事に帰ってきてくれ。
力を全て託してしまった今、僕は2人を見守る事しかできない。
この瞬間、直接戦いに参加できない無力感を感じながらも祈るばかりだった。
戦いは終盤へと差し掛かっていた。
「おらぁ!!」
「いっけえぇーー!!」
勇者のみが使える聖属性魔法と剣聖の斬撃が合わさった一撃には、さしもの魔王もひとたまりもなかった。
地獄のような唸り声を最後にあげ、魔王は灰となり消え去っていった。
「やった…のか?」
しばしの静寂の後。
ドゴォン!!!
「キャッ!なにっ!?」
「やべぇ、城が崩れるぞっ!」
大きな爆発音が鳴り響き、その後明らかに魔王城が倒壊しているであろう音が聞こえてくる。
「「トーマ!!」」
2人は僕に触れ、出口に向かって走り出す。
力を取り戻した僕も2人の後に続き走り出すのだった。