04 REMEMBER
僕はゆっくりと体を起こした。
「また夢・・・?」とおもむろに呟くと、スマートフォンでカレンダーのアプリを開いた。
今日は8月23日らしい。
僕は、どうして8月25日の記憶があるのだろう。
みんなと海に行く計画をして、鎌倉駅に集合して、
それからの記憶が曖昧だ。
とりあえず、学校に行こう。
制服を着て部屋を出た。
いつものように電車に乗り、端っこの席に座り、イヤホンで外の世界を遮断する。ふと窓の外を見ると、ARの広告がでかでかと表示されていた。
最近は、VRやARの進化もすごいらしく、現実との区別がつかないレベルらしい。
そんなことを考えているうちに、『終点』という文字が車内の液晶に表示された。どうやら自分が降りる駅を過ぎてしまっていたらしい。
ぞろぞろと人が降りてゆく。僕もしょうがないので一度降りることにした。
ゆっくりと腰を上げ、ドアに向かう。どうやら僕が最後の乗客らしい。
電車を降りようとした時、僕の体に大きな何かがぶつかった。
それは見えない壁だった。
電車とホームの境界にまるでガラスでもあるかのような、そんな風だった。
「なんだよ、これ」
何度叩いてもびくともしない。
「おーい、だれか!助けてください!」
僕の声はホームにいる人々には聞こえていないようだった。
いや、聞こえていないだけではなく、目が合っても見えてすらいない。そんな様子だ。
ゆっくりと視界が眩んでゆく。
「はぁ、はぁ」
僕は激しい動悸と共に目を覚ました。
すぐさま、カレンダーのアプリを起動する。
日付は2019年8月29日と表示された。
「はあ?意味わかんねえよ。一体今日はいつなんだよ!!」
とにかく、スマートフォンに出ている日付を信じるしかなかった。
まさか、この世界はARの世界なのだろうか。だとしたらこの間のゴーグルを外すと消える人も、電車から出られなかったこともある程度合点がいく。
「僕が生きてきた18年間は本当に存在するのだろうか」
そう呟いたとき、
「RESTART・・・」
この言葉をふと思い出した。
とにかく今日は始業式だ。学校に行ってみれば何かわかるかもしれない。
そう思い、学校へ向かった。