01 START!
この作品は実際の地名が出てきますが、あくまでストーリーはフィクションであり、話中に出てくる日付も実際のものとはずれた表記をしております。
あらかじめご了承ください。
遠くでセミの鳴く音が聞こえる。
「何か面白いことないかな」と松本遊は授業中、窓を眺めながら思った。
窓の外から見えるグラウンドでは野球部が懸命に練習をしているのが見えた。
遠くには入道雲がこれでもかというほどの存在感を放っており、いかにも夏の終わりを感じさせる風景がそこにはあった。
夏休み開始前、クラスメイトは口々に夏期講習の小言を言っていたが、僕は高校最後の夏を、この蒸し暑い教室の中で勉強をして過ごすことに対して何も疑問に思っていなかった。
そんな夏休みも後半に差し掛かったある日のことである。
講習が終わり、何とはなしに友人である渡辺恵梨と教室で話していた。
「ねえ、せっかく高校最後の夏休みなのに勉強ばっかじゃない?」
受験生なんだから当たり前だろ。と僕は思った。
「高校最後の夏をこんな風に終わらせたくないじゃん。私はもっと遊びたい!」
子供のように駄々をこねる恵梨に対してどう答えてよいか分からず、思わず
「そんなこと言ったって・・・」と声を漏らした。
「あっ、今週で後半の講習も終わりだし、夏休みが終わる前にみんなで海に行こうよ」
「海?やだよ、僕泳げないし」
「湘南とかなら泳げなくても楽しめるでしょ?」
「そうかもしんないけどさあ」
彼女の誘いに困惑していると、帰宅しようとしていたであろうクラスメイトの田中和樹が通りかかった。
「あっ和樹、今帰り?今週末遊と海行くんだけど来ない?」
「ん?いいよ。どこの海?」
「湘南だよー、遊が泳げないっていうからさー」
「湘南かあ、いいね。他にはだれか誘うの?」
「んー、沙良に声かけてみようと思ってる」
「これで4人か」と真顔で和樹はつぶやく
恵梨と和樹の二人で湘南への旅行計画が着々と練られていく。
僕はまるでその空間には2人しか居ないかのように、すっかり取り残されてしまった。既に断れないことを悟り、諦めていた。
その時、恵梨が突然立ち上がった。
遊と和樹はびくっと肩をあげる。
「じゃあ、今週の土曜日の、25日ね!」
ここから始まることを、3人...いや僕は想像していなかった。
いや、そうではない。あまりに突飛だったために想像できなかったんだ。
大切で、そしてどうでもいい残り1週間の僕の夏休みが始まろうとしていた。
こんにちは、奥山颯と申します。
僕は、田舎生まれ田舎育ち、上京おのぼりマンなのですが、湘南とかに高校性の友達と行けるような都会に暮らしたかったという願望も含めてこの作品を執筆しました。
もともとは数年前に私が書いたけれども制作しなかった映画の脚本を小説っぽく書き換えたのがこの作品です。
短い作品なので今後も読んでいただけるとありがたいです。