一大行事
一話抜けてたんですが違和感なく進んでしまってました!
ちょっとさかのぼったシーンですすみません!
「えー……そろそろ学園祭なわけだが」
担任が前でしゃべるのをぼーっと聞いていた。
体育祭、合唱祭、文化祭……。学園が誇る一年に一度の一大イベント。
これらを一週間かけてぶっ通しで行うのがうちの学校の伝統の学園祭。とはいえ、うちより賢い近くの学校が同じような日程でやってはいるので文化祭の集客は毎年微妙ではあるが……。
「体育祭については実行委員……違った、応援団は藤野しかいなかったんだが、もうひとり、特に女子が欲しくてだな……」
そういえばうちのクラスは俺しかいなかったか。
応援団としての集まりは割と居心地の良いものになっていたから、クラスの人間がいないとかは気にならなくなっていた。
「だれか立候補はいるか?」
そう言って担任がクラスを見渡すが、ほとんどの生徒が目をそらした。そりゃそうだろう。面倒事でしかない。俺が言うのだから間違いない。
と思っていたら、一人だけやる気になったのがでてきた。
「はいはいはーい! ボク、やるよ!」
「おお! やってくれるか! 入野!」
「はーい! 何やるかはよくわからないけど、康貴くんがいるならやりまーす」
こちらを向いてウインクしてくる有紀。
間違いなく可愛いんだが、俺の中のイメージはいつまでも男だったあいつが浮かぶ。その微妙な違和感がなにかブレーキになっているような感じだった。
「入野がやるなら俺も!」
「いや俺が!」
「お前は部活で禁止されてるだろ! ここは俺に任せろ!」
男子が急に積極的になる。だが、担任の言葉に沈静化された。
「残念だが男子は足りてるんだな。一年が多かったのもあって」
「くそー! また藤野か!」
「なんなんだお前!?」
「いや……じゃあ代わるか?」
あれ別に楽しいもんではないぞ……。地味な作業に駆り出されるだけだ。
「あ、じゃあやりまーす」
「えー、じゃあ降りまーす」
「藤野、お前がやれ……」
逃げ場がなかった。
「ふふーん。よろしくね? 康貴くん!」
ウインクが様になりすぎている。
違和感がひどい……。あいつは男だったはず……なんだこの違和感……。
「お前……高西姉妹じゃ飽き足らず……」
暁人が声をかけてくる。
「いや……」
「まあ、わかってるけどな……だけどそろそろはっきりさせたいとこだな」
「まぁ……それもわかってるんだけどなぁ」
有紀の態度を見て愛沙は俺を睨みつけているかと思いきや、別に気にする様子がないのも逆に気になるところだった。