第二の助け舟
「またみんなでこの道を歩くことになるとはねー」
「ねー!」
感慨深そうに呟く有紀とひたすら嬉しそうなまなみ。二人がスキップするようにどんどん前に行くので必然的に俺と愛沙が横に並ぶことになる。
「どうした……?」
「んーん」
露骨にテンションが下がった愛沙に戸惑うが原因がいまいちわからない。
そこに有紀が突然こちらを振り返る。
「ねーねー。幼馴染と結婚って、良いと思わない?」
「結婚?!」
「うんうん。ボクは憧れるなー。康貴くん、結婚する?」
「は?!」
過去はともかくいま目の前にいる有紀は間違いなく美少女だ。そんな子が微笑みながら俺に身を寄せてそんなことを言ってきたら、全く意識していない相手でもドキドキはさせられる。
「ふふ。冗談だよー?」
パッと離れる有紀。ころころ変わるところはまなみと似てるんだが、まなみと違って有紀は何を考えてるのかいまいちわからないところがあった。
「でもさ。どう? 幼馴染って小さい頃からずっと一緒で、たまに離れちゃったりしてたとしても最後にくっつくてさ、運命って感じして、良くない?」
今度は標的を愛沙に変えたらしくそちらへ向かっていく。愛沙はパタパタと赤い顔でキョロキョロしていた。
「さっきの男子たちは幼馴染は恋愛対象外って言ってたけど、二人はどうかなって」
なるほど……。
「別に幼馴染でも何でも、好きならそれで良いと思うけどな」
「お、良いこと言ったね! 康貴くん!」
「私は……有紀が言ったみたいに……そういうのも良いかなって、思うわ」
「ふふー。だよねー!」
目を逸らしながら言葉を紡いだ愛沙に近づいてニヤッと笑うと、すぐに有紀は走ってまなみの方に向かった。結果的にまた愛沙と並ぶことになる。
「なに……?」
口ぶりだけはこんなだが、顔は赤いままで随分柔らかく見えた。
「そういえば! 康貴くんはそんな素敵で運命的な幼馴染が三人もいるんだねー!」
「あはは。康にぃ、誰を選ぶのかなー?」
「からかうな」
そう言って前を行った二人。本当に何を考えてるかわからない。
ただ、愛沙だけはこの言葉に何かを感じ取ったらしい。
「なによ……」
なぜか服の裾をきゅっとつままれている。
いつもと違う表情で、いつもの口調で。
「なんでもない」
目を合わせていられなくなって逸らす。
少し歩いて愛沙をみると、耳まで赤くして顔を逸らす愛沙がいた。
帰るまでずっと、服の裾は握られたままだった。