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ゲーセン2

「疲れた……」

「ふふ。お疲れ様」


 終始余裕のある愛沙に笑われながらなんとか撮影を終え、休む間もなく落書きコーナーでまたよくわからない作業をさせられ、なんとか自分のアドレスを打ち込むところまで終わった。


「あとはもう待つだけで良いんだよな?」

「そうね。もう一枚とる?」

「え……」

「冗談だからそんな絶望的な表情しないで」


 笑いながら愛沙が言う。こんな屈託無くお腹を押さえるようにしてまで笑う愛沙を見たのは久しぶりな気がした。


「あ、出来た。あとはこれを切ったらーー」


 そう。プリクラの相手に必死過ぎて、あるいは愛沙との時間が楽し過ぎてだろうか。

 すっかり忘れていた。ここが駅前だということを。


「あれ? 愛沙?」


 まぁ、いるよな……知り合い。

 この駅は周辺一帯全てからアクセスがいい。ある程度住んでる場所が離れていても休日はここまで出てくる生徒が多いという便利な駅だった。


「藍子……?」


 声をかけてきたのは委員長の東野。俺を見てしまった、という顔をしているところを見ると、愛沙だけを見つけて声をかけたんだろうな。

 まさか一緒にいるのが俺とは思わなかった様子だ。


「えっと……邪魔してごめん?」

「なにがよ」


 東野が目で謝ってきていた。いや別にいいんだけど、周りのメンバーに見覚えがあるようでないという不思議な感覚の方が気になる。

 クラスメイトではないが、どこかで見たことが……。


「ふーん、お友達?」

「はい。クラスの」

「こんにちは」


 どこで見たかわかった。全校集会だ。

 目の前に立つとふわりとウェーブのかかった髪が揺れて隠れていた目元が見える。一見ただのおっとりしたお姉さんだがこの人も愛沙やまなみと同じ、学年を跨いだ有名人。壇上で喋る姿は堂々たるもので最近だと校長先生より喋るのが上手いとか言われているくらい。


「はじめまして。一応生徒会長をやってるんだけど……で、あっちが書記、あっちが庶務」


 下級生っぽい2人がペコリと頭を下げた。


「はじめまして、会長さん」

「はじめまして……」


 生徒会の中でも女子だけで集まったというところだろうか。全員整った顔立ちなのは人柄をろくに知らない学年を跨いだ相手に投票せざるを得ない選挙システムのせいだろうか。


「あはは……ごめんね? でもいよいよ付き合ったんだねー! また話聞かせてね!」

「いや、俺たちは別に……」


 修正しようとした俺の言葉は会長の言葉に遮られる。


「お似合いのカップルね。まるで長年連れ添ってきたみたいな」


 完全に誤解されてしまった。

 なんとかしようと口を開くも今度は東野が気を利かせたように早口で捲し立てた。


「あ、会長。この2人は幼馴染で……あ、ごめんねー! また今度ー!」


 そのまま会長の背を押して移動する東野。

 2人の下級生もペコリと頭を下げて去っていった。

 結局誤解を解くことはできず、嵐のように過ぎ去る4人をただ見送るしか出来なかった。


「あー……悪い。あとで東野に言っといてくれるか?」


 幸い生徒会の人間たちがわざわざ言いふらすようなことは無いだろうから、東野だけ勘違いを訂正すればいい。

 と思ったが愛沙はぼーっとしていて反応がない。

 

「愛沙……?」

「お似合い……カップル……」

「愛沙?」

「あ、ごめんなさい。何かしら」

「……いや、プリクラ、切ろうか」


 東野には俺からいっても良いだろう。


「そうね」

「これ、どうやって使うのが正解なんだ……?」

「別に何かに貼ったりしないで持っていることが多いかも?」

「そうなのか」

「うん……」


 そう言ってなぜか愛沙は半分に分かれたそれを大事そうに胸の前で抱えた。

 その様子がなぜか、すごく可愛く見えていることに、いよいよ覚悟を決める必要を感じながら愛沙を眺めていた。

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