デート2
「これとこれは面白そうだと思うの。レビューも良かったし」
そう言って愛沙が見せてきた画面には、今話題の監督の最新作と、子犬が花畑にたたずむハートフルそうなものが並んでいた。
「あ、これは気になってたかも?」
動物の方はあんまりよくわからなかったがもう一方は知っている。
というより曲も人気になっていることでいまや町中で話題になる人気作だ。そのうちチェックしておこうと思ってたものだった。
「じゃあこれから行きましょう」
「いいのか?」
「うん。でも他に見たいのがあれば、それでもいいわ」
スマホを覗きあって他のものもチェックしていく。
話題さえ見つかればまあまあぎこちなさも解消される。バスに乗るときに手を離したからという理由もあるが。
「? どうしたの?」
「いや……」
ただバスに乗った弊害もある。2人がけの席は妙に狭く肩がどうしても触れ合う距離。
その状況でお互いの携帯を覗き込むわけだから、当然距離は近くなる。
良くも悪くも愛沙がそこはあまり気にすることがなかったので必死に合わせていた。
「んー、これ、次の上映まで時間あるわね」
「そうなのか。まあ時間はどこでも潰せるだろ?」
「まぁ、そうなんだけどね」
多分ゲームセンターとかカフェに行くだけで大丈夫だろう。
「じゃ、チケット取っちゃうね」
「ああ」
携帯からシートまで選択できるらしい。
「えっと……」
愛沙が躊躇ったのはまさにこのシートの選択画面だった。
通常の間取りの一部だけ、ペア専用のシートになっている。そこには堂々とカップルペアシート、と記載されていた。
「カップル……」
「普通にペアシートとか書いてくれればいいのにな……」
「えっと、これは……カップル料金になるみたいだから……」
下の方に小さくこう記されていた。
入場時にカップルであることを証明していただくために手を繋いで仲の良さをアピールしてください。
「なるほど……」
そういえば監督に注目が集まって意識が薄れていたが、この映画は割と恋愛描写も強いらしい。
キャンペーンも兼ねてあえてペアシートをカップル用と銘打っているようだった。
ちなみに通常の2人分の料金より少し安く、飲み物とポップコーンも付いてくるサービスの良さはあった。本当のカップルならありがたいサービスだろう。
「手を繋ぐくらいなら、いいよね?」
「それは今さらだろ」
「そうだよね……! うん、そうだよね……」
話しているうちに駅前にたどり着く。
結局愛沙はカップルシートを携帯から購入したらしい。
「お金、崩して渡したいからゲーセンでいいか?」
「……いいわ」
「?」
何故か顔を赤くする愛沙に首を傾げながら、バス停の目の前にあったゲームセンターに入っていった。
流石に目的地が目の前だったし、駅前は他の生徒の目も多くなるので手は繋ぎはしなかった。
顔が赤くなった理由は次話以降で