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デート

「いってらっしゃーい!」


 玄関で手を振るまなみに送り出される。

 愛沙と目を合わせようにもなんとなく合わせにくい微妙な距離を感じながら家を出た。

 それもこれもほとんどまなみのせいだろう……。


 ◇


「2人とも、わかってると思うけどこれはもうれっきとしたデートです」


 出かけようとする俺たちをわざわざ呼び止めたまなみが何やら真剣な表情で告げる。


「まぁ、男女2人で出かけるのはデートと呼ぶわね」


 愛沙が顔を逸らしながら答える。まなみは笑顔で頷いていた。


「で、せっかくの貴重な体験をさらに大切なものにするために、2人にミッションを与えます!」

「ミッション……?」

「うん! デートコースは今日はお姉ちゃんので良いので、大事なのは中身!」

「中身……」


 いまの愛沙はポンコツなのでまなみの言うことは割となんでも受け入れそうで怖い。


「まずね、2人の距離がぎこちないとナンパにあいます!」

「ナンパ……」


 これについては前例はあるのでなにも言えなかった。大人しくまなみの話を聞くことになる。


「お姉ちゃんが1人の時に声をかけられるのは仕方ないにしても、男の人がそばにいながら強引に誘うタイプも中にはいます!」

「そうなのか……」


 勇気があるなと思うが迷惑ではあるな。


「あ、こいつらカップルじゃないな、と思われたらその時点でターゲットだよ!」

「確かにそうかも……?」

「そうなのか……」

「と、いうわけなので! カップルに見える行動をしっかりすること!」


 カップルに見える行動……ってなんだ?


「例えば! 2人で歩くときは手を繋ぐとか!」

「手を繋ぐ……」

「カップルシートで映画を見るとか!」

「カップルシートなんかあるのか……」

「パフェをあーんで食べさせあったりとか!」

「あーん……」


 なるほど確かにデートっぽい、のかもしれない。


「じゃ、頑張ってね!」


言いたいことだけ言うとまなみは俺たちを追い出すように送り出した。


 ◇


「ん」


 無言で手を差し出してくる愛沙。顔を赤くして逸らしているがまだ玄関でまなみが見てる以上繋いでおいたほうがいいだろう。


「はい」

「ん……」


 絡めるように繋いだ手に意識を持っていかれる。細くて折れそうな指だった。


「で、どこ行くんだ?」

「とりあえず、駅前」


 地元の駅は割となんでもある。映画、カラオケ、ゲームセンター……少し歩けばボウリングもある。

 普段なら自転車で行くが今日はバスを使うことになってるらしい。


「映画、何か見たいのある?」

「映画かー……今何やってたっけ」

「バスで一緒に……調べましょう」

「ああ……」


 こんな感じでぎこちない会話を続けながらバス停に向かうことになった。それでも一応、繋いだ手を離すことはなかった。

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