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看病2

「愛沙、入るぞ」

「んぅ……」

「寝てる?」

「入ろ入ろ! 康にぃ!」


 まなみが率先して扉をあける。愛沙は苦しそうな表情で眠っていた。


「うなされてるな……」

「優しく起こしてあげるか、撫でてあげたら良いと思う!」

「起こすか」

「優しくしてあげるか、撫でてあげたら良いと思う!」


 まなみが言い直す。優しくしてあげるってなんだ……? ハードルが低いほうにしよう。


「んう?」


 ベッドのそばでまなみと騒がしくしてしまったからか愛沙が寝返りをうつ。

 苦しそうな表情にとれかけの熱冷ましと汗が妙な色気を醸し出していた。


「ほらほら、康にぃ」

「わかったわかった……」


 愛沙の頭に手をやる。


「んっ……」


 うなされてた表情が柔らかくなってくれた、気がする。


「さすが康貴にぃー!」

「はいはい。起きるから静かにな」

「はーい」


 しばらく頭をなで続ける。すると少しずつ愛沙の身体がこちらへ傾いてきて……。


「あ……」


見えてはいけないものが露わになった。


「あちゃー……」


 寝返りと同時に布団がめくれる。そこまではいい。問題は愛沙の格好にあった。


「康にぃ、ちゃんと目を瞑ってて偉い!」


 まなみには褒められたがまぶたの裏にしっかりといまの愛沙の姿が浮かび上がっているから罪悪感が消えない……。


「暑かったんだねぇ、お姉ちゃん」


 布団の中の愛沙は、パジャマのボタンをすべて外していた……。寝ていたので当然といえば当然なんだが、下着もつけていなかった……。


 ごめん……愛沙……。

 心のなかでそうつぶやきながらまなみが服を整えるまで目を瞑って待った。


 ◇


「康貴……見たのね……」


 なんで言ったんだまなみ……。


 愛沙はまなみが服を整えていると途中で目を覚ました。もうついでに身体を拭いて着替えたほうがいいだろうということで俺は部屋の外に出ていたわけだ。

 戻った第一声がこれである。


「えへへ」


 まなみを見ると片目をつむってごまかされた。


「えっと……」

「いい……から……なるべく早く忘れて……」


 顔を背けながら、でも俺の服の裾を掴みながら愛沙が言う。


「お、おう……」


 それは無理というか……しばらくは絶対頭から離れないと思いながら、答える。

 無理やり話題を変えよう。


「顔色は少し良くなったか?」

「あ……」


 さっきまでの感覚で普通におでこに手を持っていったら愛沙の頬が少し赤くなる。


「まだ熱はあるな」

「ほら! 康にぃ、りんごりんご!」

「ああ、食べれるか?」

「うん……」


 まなみが何故か皿とスプーンを俺に渡してきた。距離的に愛沙に直接渡せば良いのではないか……?


「お姉ちゃん、自分で食べるのしんどいよね?」

「え?」

「しんどい、よね?」

「え? えぇ……まぁ……?」


 戸惑いながら答える愛沙。


「ほら! 康貴にぃ! 食べさせてあげなきゃ!」

「あ、あぁ……」


 皿と愛沙を交互に見る。


「えっと……」

「ごめんね、康貴……お願いしていい?」

「お、おう……」


 熱のせいだろうか……愛沙が妙に素直だ。

 スプーンを口元に持っていくと、愛沙が口をあける。


「あーん」

「それをわざわざ口に出すとことかは、姉妹だなぁ」


 りんごを口に運ぶ。


「ん……甘い……」

「やっぱり甘くしすぎたよな……」


 好みじゃなかったかと思ったが愛沙は手を握って微笑んだ。


「んーん、ありがと……」


 髪も乱れ、顔色も良いとは言えないその笑顔が、ここ最近で見た愛沙の表情の中で一番魅力的に見えた。

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