キャンプ7
キャンプは1泊2日。つまり今日が2日目にして最終日だ。
「今日はどこかいくんだっけ?」
起きたらもう愛沙はテントの外で朝食の準備までしてくれていた。作ってくれた朝食を食べながら聞く。
「んー、特に決めてないんじゃないの?」
未だ出てこない父親たちの眠るテントを見ながら答える愛沙。
母さんたちはとっくに起きて散歩に出たらしい。メッセージが来ていた。
「昨日は眠れた?」
「まぁ……」
愛沙たちを意識すると眠れないかと思ったが、俺も朝早くから起きていたしクライミングでいい感じに疲れていたので自分でもびっくりするくらいすんなり眠れた。まなみのことを笑えないなと思った。
ちなみにまなみは案の定ボードゲーム中に船を漕ぎ始めたので愛沙とふたりで寝袋に突っ込んだ。いまも幸せそうに眠っている。
「あ、メッセージだ」
愛沙に言われて携帯を見ると母さんから連絡が来ている。
内容を確認するより先にまなみがテントから飛び出してきた。
「おっふろー!」
「おふろ……?」
いや、それより――
「まなみ、服をちゃんと直してから出てきて」
「わわっ、押さないでお姉ちゃっあっ!」
ちらっと見えたまなみは多分、下はパンツだった。寝袋で脱いでそのままにしたんだろう。
「見た?」
「いや……」
「そう。ピンクだったのにね」
「え? 青じゃなかった? ……あ」
ジト目で愛沙に睨まれた。いやこれ、俺が悪いのか……?
「はぁ、まなみももう少し気をつけさせないとね……」
「それはよろしくおねがいします」
一段落して携帯を確認する。まなみの言葉の通り近くにあった風呂に行こうというものだった。
混浴じゃないから期待しないように、と書いてある。そりゃそうだろ……。
「じゃ、片付けて、お風呂いって、おしまいかぁ」
愛沙がつぶやく。
そう考えるとなんか、寂しくなるな……。
「まだ夏休みは始まったばっかだろ?」
「康貴がどこかに連れてってくれるのかしら」
首をかしげて微笑む愛沙にドキッとする。
「……どこ行きたい?」
「え? ほんとに……?」
多分、どうせ、この夏休みは愛沙とまなみと過ごす時間が増えることはなんとなく感じている。
だったらまぁ、今決めても一緒だろう。
「康貴にぃ! 私も!」
テントから飛び出してくるまなみに抱きつかれる。
「こら! まなみ」
「んー? お姉ちゃんもぎゅってする?」
背中に抱きついてぶら下がったまま声をかけるまなみ。まさか愛沙がそんなことをするはずはないだろう……。
「康貴が困ってるでしょ」
「えー。康にぃ、困ってる?」
「えーっと……」
答えにくい……。
「康貴……早くまなみに困ってるって言いなさい……」
愛沙はそう言うが楽しそうなまなみに言うのはためらわれた。
「言わないなら……私も抱きつくから……」
「それは……」
どんな脅しだ……。いやでも愛沙に抱きつかれるのは色々やばいと思う。
まなみですら最近少し身体つきが女っぽくなって意識させられそうになるというのに……。
「で、どうするのっ!」
愛沙がぐいっと近づいてきた。
「わかった。ほら、まなみ、やめろ」
「えー……もー」
しぶしぶ離れるまなみ。良かった……。これで愛沙も満足――
「そんなに嫌だったのね……」
なぜか少し拗ねた様子で口を尖らせていた。
どうすれば良かったんだ……。
キャンプ編終了です
お風呂回はおっさんに囲まれるだけで特筆すべき点がありませんでした
そのうち家族風呂が使える施設とかに旅行させようと思います