キャンプ3
遅くなりましたすみません!
「クライミング体験?」
昼飯を食べてキャンプ場の散策を始めると、気になる文字が見えた。
「クライミングってオリンピック競技にもなってるやつ?」
「あー……ボルダリングとか……だっけ?」
ただそういう人工的な壁は見えない。岩場を使ってやってるらしい。
「やる!」
まなみは基本的に身体を動かすことは全部好きなのでノリノリだ。
「まあせっかくならやってみるか」
「そうね」
俺たちも別にいいかと軽い気持ちでエントリーする。
説明を受け、貸し出されたプロテクターやらを身につけて岩壁に挑む。
「あ! 意外と楽しい!」
「おお、難しいなこれ……」
インストラクターが軽々登って見せるので簡単そうに思っていたが、実際やるとなかなかうまくいかず何度も下のマットに落ちることになった。
「流石だな……まなみ」
「怪我しないかしら……」
見上げる先にはほとんど地面と平行になった岩壁にしがみついてひょいひょい動き回るまなみの姿がある。
「なんで頭より上に足があって怖くないんだろうな……」
「まあほら、まなみだから……」
半ば呆れるように見上げるのは俺たち以外の参加者も同じだった。
結局ほとんどの壁を攻略しきったまなみは賞状やら景品のお菓子やらを大量にもらってホクホク顔で帰ってきた。
「ほんとにすごいわね……」
「えへへー。夜一緒に食べようねー!」
戦利品の入った袋をまなみから受け取ろうとしたところで違和感に気づく。
「あれ?」
「どうしたの? 康貴」
心配そうにこちらをみる愛沙だが、多分他人事ではない。
「腕、めちゃくちゃ痛い」
普段使わない筋肉を酷使した影響が早くも出ていた。
「え? ほんとー?」
まなみはピンピンしてるが鍛え方が違うというやつだろう。そしてその理論で言えば、1番まずいのは愛沙だ。
その愛沙を見つめると……。
「あ……これは……思ったよりくるわね……」
案の定腕が上がらなくなっている。今までは楽しんでいたから感じていなかったわけだ。
「大丈夫か?」
「ん……いや……結構やばいかも……」
歩き方もぎこちなくなった愛沙に手を貸しながらテントに戻る。
◇
山は夏でも涼しい。
蝉を始めとした虫の声も、普段と違ってうるさいというよりどこか風情のある音ばかりになる。特に夕方を越え夜になるとなおさらだ。
「で、あれどうするんだ?」
父親2人はそうそうに酔いつぶれ、広い方のテントで眠り始めている。
「2人ともああなったらしばらく起きないわねぇ。あっちのテントは私達で使うから、あんたたちはあっちね」
「は……?」
「一応言っておくけど、愛沙ちゃんたちに手出すならちゃんと責任取るのよ……?」
「いやその注意はどうなんだ?!」
ほうけている間に母さんは向こうのテントに行ってしまう。
「ん? どうしたの康貴?」
「いや……俺ら、同じテントらしい……」
「え……?」
固まる愛沙。そりゃそうだよな。いくら寝袋があっても狭いテントに男といるのは嫌だろう。
「俺、もっかい母さんに」
「んーん。それは大丈夫」
まだ起きてるだろう母親の方に言って代わってもらおうとしたが愛沙に袖を掴まれる。
「いいのか?」
「ん。それに、まなみが……」
「あー……」
まなみがお菓子の袋とトランプを持って目を輝かせているのを見て、愛沙と俺は覚悟を決めた。
今週は投稿途絶える可能性ありです、書き溜めないです……がんばります