キャンプ2
まなみは父親似
「なんで俺、1人なんだ……」
「手伝う……?」
「だめよー。愛沙ちゃんは料理の準備ー」
キャンプ場に来てまずやることと言えばテント張り。2家族なので2つある。普通に考えれば家族ごとにやるよな? なんで俺の父親と愛沙たちの父親は2人がかりでテント張りをはじめたんだ……?
「康貴ー! 順調か?」
ハイテンションな父親に声をかけられる。
「しばらくかかりそう」
「だろうなぁ。まあこっちはこっちでやるから心配するな」
「俺の心配をしてくれ……」
結局手伝われることなくタープまで1人でやる羽目になった。きつい……。2人がかりのほうが圧倒的に効率が良い要素が多い。1人だと抑えながら引っ張るとかそういう動きが出来ずにどうしても2倍以上の時間がかかった。結果……。
「いやー、うちの愛沙はもう、康貴くんがもらってくれないと厳しいなぁ」
「それこそうちの康貴のほうが厳しい」
「ははは!」
「おい! 酔っぱらいども働け!」
父親2人はすっかり出来上がっていた。
それでもまぁ、テントにタープにバーベキューの火起こしも終わらせてくれていたからまぁ……いいか……いいのか……?
「康貴、もう火、大丈夫?」
「ああ」
火起こしだけはしたようだがすぐに火の番を任された俺のところに愛沙が料理を運んでくる。
意外なことにまなみもしっかり料理の準備をしている。ただ油断すると「この前動画で見たんだけどセミって食べられるんだってね! 康貴にぃ!」とか言ってくるので目を離せなかった。バーベキュー網にゲテモノが並ぶのは避けたい……。
「しっかり頼むぞー、康貴」
「酔っぱらいはもう大人しくしててくれ……」
フランクフルトやら肉やらとうもろこしやら、特段こだわる必要のないものは俺が並べていく。
愛沙はなんかアヒージョっていうのか? を準備したり魚介系を中心に網に乗せていった。まなみもカレーの具材を切っている。
「あれ、任せて良いのか?」
「多分……?」
母さんとおばさんも見ているんだが、愛沙より信頼できる人物はいない。カレーからセミが出てこないのを祈る……。
「お、まなみ。捕まえたのかー」
「えへへ! すごいでしょ! ほら!」
おじさんとまなみが話をしてる方に目を向けると――
「えぇ?!」
「へび……」
「大丈夫だよ! これ多分毒ないから!」
「多分じゃ困るだろ!」
「ははは。大丈夫大丈夫。こいつはアオダイショウだから毒はないよ」
おじさんが笑いながらまなみの握っていたヘビを受け取って腕で遊ばせ始める。
「で、食える」
「勘弁してくれ……」
まなみの父親なんだなという部分が垣間見えたところで本格的に昼食のバーベキューが始まった。