まなみの電話
ストックがそろそろ……
『お姉ちゃんがヤバいから何とかして』
まなみから突然メッセージが飛んでくる。
『何がヤバいんだ』
『デートに誘ってあげて』
『いやなんで……』
『デートに誘ってあげて』
以降、それしか来なかった。
で、どうしていいか迷っていると電話が来た。
「あ、まなみか。あれどういう」
「康貴にぃが悪いです」
話をする気がまるでなかった。
「えーっと……」
「康貴にぃが悪いのでお姉ちゃんとデートに行って、私にもなんかしてください」
「何で……」
「自分の胸に……いや康貴にぃにそれ言っても気付くはずないか……」
電話口でやたら大きくため息をつかれている。俺が何をしたっていうんだ……。
「綺麗なお姉さんに抱きつかれて鼻の下を伸ばしてましたね」
「え……？」
否定したいが一部事実なので否定しきれない。多分暁人と遊びに行ったあれだ。
「えーっと……」
「いや、多分なんか事情があるのはわかるんだけど、私は康貴にぃがお姉ちゃんと私以外の女の子と仲良くしてるのが嫌なの！」
「お、おう……」
なんだろう。独占欲か。兄と姉を取られたくない的な……？
「というわけで、お姉ちゃんとデートに行って私にもなにかしてください」
「なんで……」
「してください」
「おう……」
愛沙がなんで出てくるのかよくわからなかったが、まあ俺が鼻の下を伸ばしてると感じたなら、そういうときに怒ることは昔からあったからそういうことなんだろう。あとはまなみを怒らせたからとかかもしれない。その方が強いか。なんだかんだまなみに甘いし。
愛沙とデートに、と言ってるがきっと荷物持ちだな。
「お姉ちゃんとプールの約束はしたんだよね？」
「あぁ、したした」
あの日ちゃんと約束は守った。
「よし！ じゃあさ、海に行こう」
「海……？」
「お姉ちゃんの水着、何回でも見たくない……？」
「それは……」
見たくないと言えば嘘になる。
「ふふ。海は荷物がかさむから2人で行くよりいいんだよね。うん、そうしよう！」
「そうしようって」
「じゃ、日にち決めたら連絡するねー！」
「おい」
言いたいことだけ言って切られる。
どうしろっていうんだ……。いやまぁ、連絡を待つしかないか。
「しかし、愛沙があれで機嫌が悪くなる……のか？」
ちょっと期待してしまいそうになる一方、普段の行いを考えてその発想は頭の奥の方へ追いやる。
以前のような関係に戻れたら楽しいと思ってるのが俺だけなのか、愛沙もなのかはよくわからない。ただ出かけた日以降、態度が柔らかくなってくれたのはありがたかった。
「海か……」
多分日程的に愛沙とのプールが先になるが、まなみともとなるとこれは……。
「バレたら刺されても文句が言えない」
いや、実際に刺されれば文句は言うというかそれどころではないが、ここ最近2人の人気は身にしみてわかってきている。学園を代表する美少女姉妹の2人と荷物持ちとはいえ海に行って水着姿を拝めるとなったら……やめよう、考えるのは。
現実から目を背けるように、近隣の海水浴場の情報を調べ始めた。
どうせ行くなら2人が楽しめるように頑張ろう。
愛沙の水着回があと2話です
作者を甘やかすと更新が早まります
最新話の下から評価ができるのでぜひ！
