表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/119

暁人との賭け

「なぁ、康貴さんよ」

「なんだ……?」


 暁人がニタニタしながら声をかけてきた時点で嫌な予感がする。


「テストも終わってあとは夏休みを待つばかりだが、お前ちゃんと高西さんと夏休みに予定入れてんのか?」


 何を言ってるんだろう……。


「その顔だと何もないってわけじゃなさそうだな」


 なんでバレたんだ……。


「ま、でもろくに進展してないのもわかったわ」

「進展も何も、なぁ」


 愛沙との仲は確かにただ怖がる相手というわけではなくなったが、だからと言ってそれ以上なにか変わるわけではない。

 そもそもが幼馴染なんだ。元に戻ることはあっても進展もなにもないだろう。


「駅前での目撃情報の件は?」

「は?」

「まさかあんな目立つ場所に出かけておいて誰にもバレないと思ったのか?」


 それはまぁ、誰かに見られるかなとは思ったけど。


「まあただの荷物持ちだったっていう希望的観測がほとんどだから表立って噂にはなってないけどな」

「その通りだからな」


 荷物持ち以上でも以下でもない、だろう。愛沙が機嫌よくしていたのも俺相手だから意外に見えただけで、今もクラスメイトに囲まれてる愛沙は笑顔で話している。

 買い物が楽しかっただけ。そう言い聞かせる。


「はぁ……」

「なんだよ」

「いや、重症だなと思ってな」


 余計なお世話だ。


「さて、例の件、覚えてるな?」

「……」


 覚えているもなにも愛沙との約束より恐ろしかったのがこれだ。


「お前、今回だけまともに勉強してるのは卑怯だろ」

「勉強に卑怯もなにもあるか。実力だ」


 うまく口車に乗せられて受けた暁人との勝負。暁人もいつも通りの点数で来ると信じていたが、こいつは普段やらないだけでちゃんとやれば相当頭がいい。知っていたはずなのにこのタイミングでやる気を出すとは思わなかった……。

 そしてわざわざ勝負してきたということは、付き合って欲しい()()もろくなものじゃないと気づいた時にはもう後の祭りだった。


「で、なにが望みだ?」

「いやなに、ちょっと数合わせに付き合ってほしいんだよ」

「数合わせ?」

「向こうが2人組なもんで、こっちもあと1人男が欲しかったんだ」


 ◇


「で、今日俺はどこに連れて行かれるんだ」

「人聞きが悪い。普通に遊びにいくだけだ」


 暁人の人となりはある程度信用しているが、こと女性絡みにおいては逆の意味の信用が厚い。


「お前もいるんだから変なとこには行かねえよ。普通にボウリングやらカラオケやら健全な遊びだ」

「健全じゃないことは……いややめよう何も言うまい」

「そうしろ。まあ今日の2人は可愛いからお前も楽しめばいいさ」



「もっとも、高西姉妹に慣れてるお前じゃ満足できんだろうけど」と付け加えられてなんとも言えなくなった。

 そりゃあの2人と比べるのは酷だろう。



「やっほー、暁人くん」

「ごめんねー、待たせた?」

「いや、ちょうど俺らも今着いたとこ。で、こっちが康貴、よろしく」


 暁人の紹介を受け頭を下げる。

 片方は金髪巻き髪でタンクトップのラフな格好。亜美さんというらしい。ちょっと苦手な感じだ。

 一方もう片方は黒髪ロングの正統派美女という感じだった。こっちは栞さん。ワンピースごしにスタイルの良さ、と言うかいっそ暴力的な武器が見え隠れしていたが。こっちは仲良くなれるかもしれない。


「お前のその女を見る目の無さ、高西姉妹以外に手出すなら俺が一度教え直すから言え」


 俺にだけ聞こえるように言った暁人の声は割と真剣だった。


 ◇


 その後すぐに遊び始めたが、カラオケやボウリングのようにやることが決まっていればまあそんなに困ることもなく打ち解けた。


「お前意外となんでもできるな」

「まなみの相手に連れ回されたからな……」

「あー、贅沢なこった」


 なんだかんだ楽しく遊べた気がする。黒髪の方の栞さんに事あるごとに体を触られるのには戸惑ったが。


「さて、そろそろ」

「えー、もう帰っちゃうの?」


 暁人が切り出すと名残惜しそうに暁人の腕に抱きつく栞さん。ここに来てなんとなく暁人の言っていた意味がわかってきた。


「また今度。と思ったけど、俺だけでいいなら残れるよ?」


 暁人が目配せしてくる。俺がもう疲れたのを察してくれてたわけだ。


「えー、康貴くんは帰っちゃうの?」

「うっ……」


 暁人の腕を離しそのままこちらにしなだれかかってくる栞さん。助け舟を出してくれたのは一見ギャルにしか見えない亜美さんだった。


「まーまー、暁人くんが相手してくれるならいいじゃん」

「んー、ま、そっかぁ。康貴くん! また遊ぼーねー!」


 亜美さんに引っ張られるように離れていく栞さん。助かった。


 帰り際、暁人がまた俺にだけ聞こえる声で囁いた。


「高西姉妹がいかにいい女か、ちょっとはわかったか?」


 返事は聞かずに2人組のほうに駆け寄る暁人。

 残された俺は1人でその言葉の意味を考えるしかなかった。


ヒロイン組以外の女性エピソードは凄い勢いでカットされる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ