下級生のアイドル
まなみの同級生である後輩男子たちがチラチラと俺とまなみを見比べる。
「そっちの人って……もしかして……」
「ふふふー。何に見えるー?」
「何ってそりゃ……えっと……」
「彼氏……とか?」
こちらの様子を伺いながらまなみと話す後輩たち。なんか品定めされているようで居心地が悪い。
まなみも同級生の中じゃアイドル的存在だろう。むしろ姉より愛想がいい分、人気は高いかもしれない。いや愛沙も俺以外には愛想もいいか……。
「……」
目が合うと無言で挨拶するように頭を下げる後輩たち。
同級生にとって憧れの存在であるまなみがどんなやつと付き合ってるのかと思えば、別に大したことないやつだったので引っかかりを覚えている、という状況だろうか。付き合ってるわけじゃないけれど。
「だって! 康にぃ! 彼氏だって彼氏!」
なぜかテンションが上がったまなみがまたバシバシ腕を叩いてくる。
「だから痛いっての!」
「ふふふー」
聞いちゃいなかった。
「ま、残念ながら彼氏じゃないんだなぁ〜」
「コウニィってことは……歳上の?」
「そだよ。お姉ちゃんの彼氏」
「えっ!?」
「は?」
まなみの言葉に驚いたのは後輩たちより俺の方だった。
「それは冗談でー、えっとね、私の先生で、お姉ちゃんの……友達? 以上恋人未満のような?」
「知り合い以上友達未満じゃないか?」
「もー。それお姉ちゃんが聞いたら怒るよー?」
むしろ友達以上恋人未満とか言った日にはどんな恐ろしい仕打ちが待っているかわからないと思うんだが……。
「まぁとにかく、高西の彼氏さんじゃないってことか」
後輩グループの半分くらいはどこか安心したような表情を見せていた。人気だなぁ、まなみ。
「そだねー」
「そっかそっか。まだ遊ぶの? もしよかったら――」
勢いづいたのかまなみを誘おうとしたところで、それを察したまなみが断るためと言うにはやりすぎな手段に出た。
「まだ彼氏ではないんだけど、私は付き合って欲しいと思ってるんだよねー!」
そう言って腕に抱きついて来る。
おいやめろ。勘違いされるしなんか絶望的な表情になってるやつもいるだろ。
「馬鹿なこと言うな」
そう言ってくっついてきたまなみを小突いて離れさせた。
「ただ悪い。今日はまだ遊ぶ予定だったし、最後もちゃんと送り返すから、また誘ってやってくれ」
「あ……えーっと……はい……すみません」
「もー! 康にぃ! 振りほどかないでもいいじゃん!」
「はいはい。ごめんな」
「聞いてないし! あ! じゃあまた学校でね! ばいばーい!」
その場を立ち去る俺にじゃれ付きながら、後ろ向きに手をぶんぶん振るまなみ。
「危ないから前見て歩け」
「あっ……ふふ……はーい」
手を引いてやると大人しくなって付いてきてくる。
後輩たちは呆然と彼らにとっての学年のアイドルを見送っていた。
あとでまなみにはしっかりフォローを入れるよう言い聞かせる必要があるなと思いながら、また当てもなく2人で歩き始めた。
康貴目線のまなみはいつまでも妹
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