星空の下で
最終話です。
「ん?」
「有紀たちとよく遊んだ公園、覚えてる?」
「覚えてるよ」
毎日のように、約束したわけでもないのに公園に集まって遊び倒したはずだ。
糸が切れるまではしゃぎ続けるまなみが倒れるように眠ると、俺か有紀がまなみを背負って家まで帰った。
「そこでした約束、覚えてる?」
「そこで……どれのことかわからないくらいしたけどな」
「ふふ……そうだったかも」
ほんとに毎日のように俺たちは一緒にいたし、それこそ数え切れないほど色んな話をしていた。
でもまぁ、今このタイミングで言い出した愛沙の意図は、さすがにわかった。
「思い出した?」
「ずっと覚えてたよ」
――大きくなったら結婚して、ずっと一緒にいよう。
「来年もね、ううん、もっとずっと、こうやって過ごせたらって思った」
愛沙の顔が星明かりに照らされている。目をそらして、暗くてもわかるくらい顔を真っ赤にして言葉を紡いでいた。
愛沙が顔をそらすように空を見上げる。俺も釣られて空に目を向けた。
星が綺麗な夜だった。
「流れ星、願い事叶えたくて、一緒にずーっと見たの、覚えてる?」
「あのあとまなみが風邪引いたやつだろ……」
「結局そこから全員風邪引いちゃってたもんね」
懐かしいな……。三回も唱えなくても見ただけで願い事が叶うと思ってた。
あのときなにを願ったか思い出せないけど……。
「今ならなにを願うと思う?」
上目遣いに聞いてくる愛沙。
「愛沙がなにを願うか、か?」
「うん……」
難しい質問だ。
「今も昔も、私は多分ずっと、おんなじことを願ってた」
「ヒントは?」
「……康貴とのこと」
それだけ言うと、また顔を真っ赤にしてそらした。
「わからないけど、こうだったらいいなってのは……ある」
「言ってみて」
「あの約束が叶いますように……か?」
俺まで顔が赤くなったのがわかった。
目をそらしたままの愛沙が、さらに顔を赤くさせながら、小さくうつむいて返事をしてくれた。
「うん……だから――」
「待った」
「え?」
ここからは俺がやらなきゃいけないと思った。
「俺も、来年からも一緒にいれたらって、あの約束も、叶えられたらいいなって……」
気づいたら愛沙を抱きしめていた。
愛沙は一瞬驚いた顔をしたあと、ゆっくり俺を受け入れるように答えた。
「うん……」
「夏休み、一緒に遊ぶようになって、多分愛沙が思ってるより俺、楽しんでた」
「ふふ……そうなの?」
至近距離で笑う愛沙にまたドキドキさせられた。
「俺は多分、ずっと愛沙のことが好きだった」
「っ……」
愛沙と距離ができたからとか、愛沙が遠くなった気がしたから、勝手に諦めていただけだった。
思い返せばほんとに、愛沙を意識しない日なんてなかったように感じる。
「私だって! ずっと康貴が……」
そうだったらいいなと思っていた部分もあった。
あの睨んでいた表情すら、今思うとなんというかこう……愛おしい気さえする。
あんなに怖がってたのにな……。
あれは多分、俺が愛沙を好きだから、もしあの表情が悪い意味ならって思いが、余計恐ろしく見せていたのかもしれない。
「愛沙」
「うん」
「好きだ」
「うんっ」
愛沙はぎゅっと顔を俺の肩に押し付けるようにして返事をした。
「私も、ずっと……康貴のことが好きでした」
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!
小説家になろうにおいて、私がランキングに顔を出させていただくようになった最初の一作でした。
【重大発表】
書籍化が決まりました!
本当に皆様のおかげです。
いつもありがとうございます!
書籍化に伴い、現在のなろう版のストーリーと異なる描写が多くでてくる関係で、
本作は打ち切りという形にするか、独自路線で進める場合にはかなり遅い更新になりそうという状況にありました。
そこでせっかくなら「書籍でしか見れない」という形ではなく、書籍版に沿った内容もみなさんにお楽しみいただければと思い、
リニューアル版として投稿を開始させていただきました。
https://ncode.syosetu.com/n5405gh/
幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら疎遠だった幼馴染が睨んでくる件
タイトルは少し変わってますが書籍版がこれになるかは確定ではないです。
書籍版は8月に発売予定で現在準備を進めております!
また追加情報がお伝えできるようになりましたら随時リニューアル版のほうで公開させていただく予定です。
広告の下に☆☆☆☆☆があり、評価ボタンになっております。
完結にあたってぜひ☆1でも5でも皆さんの評価入れていただければ幸いです。
なろう版にお付き合い頂いた皆さんにも満足いただけるような内容が作れるようがんばりますので、
今後ともリニューアル版、書籍版ともどもよろしくおねがいします!