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思い出話

「愛沙……」

「ひゃ、ひゃい!」


 人気のない場所に連れてこられて突然名前を呼ばれたらそりゃびっくりするか……。


「あーえっと……ごめん。急に……」

「それはいいけど……どうしたの?」


 愛沙は顔を下げて、チラチラと上目遣いでこちらを見てくる。


「あー……」


 困った……どう切り出せば良いんだろう。


「えっと……来年からも一緒に色々したいなと思って……」


 咄嗟に口をついて出たのはこんな言葉だった。

 だが幸い、お互いの緊張を解きほぐすことには成功したようだった。


「ふふっ。なにそれ」


 愛沙が柔らかく笑う。


「今年は確かに、久しぶりにね……夏休みも、楽しかった」


 そう思ってくれてたなら良かったと思う。


「康貴は?」

「楽しかったよ、ほんとに」

「良かった」


 お互いになにか色々思い出すように、ぎこちないと言えばぎこちないし、これはこれでなんとなく、心地いいような、そんな空白の時間が生まれる。


「確かに来年も、遊べるといいわね。まなみも喜ぶし」

「そうだな」

「来年は受験で大変かもしれないけど」

「あー……そうか」


 なんとなく、愛沙はうまくやるだろうとは思うんだけどな。俺は来年、夏休みからしっかり取り組んでるかわからなかったが。


「今度は私も家庭教師してもらおうかしら」

「逆だろ」


 どうやって自分より成績の良い相手に教えろっていうんだ……。


「ふふ」


 愛沙は柔らかく笑って、愛沙が星空を見上げて話し始める。


「楽しかったなぁ、ほんとに」

「キャンプも久しぶりだったしな」

「あれ! またやりたいかも? ボルダリング?」

「ああ、近くにもできる場所あったな」

「そうなのっ?」


 愛沙は運動が得意ではないが嫌いなわけじゃないからな。というより、まなみに振り回されて色々やってる分、他の女子よりはアクティブだった。


「愛沙は泳ぎも結構できるもんな」

「うっ……水着は恥ずかしかった……」


 顔を赤らめないで欲しい。俺も色々思い出す。

 愛沙のその態度のせいか、俺も変なことを思い出してしまった。


「水着どころか――」

「それはだめ! 忘れて!」

「ああ……」


 パタパタと手を振りながら、それでも顔が真っ赤の愛沙が可愛かった。


「ごめんごめん」

「もう……」


 顔を赤らめて、しばらく照れ隠しするように二人で星空を見上げた。


「ねえ、康貴」


 不意に愛沙がこちらに視線を戻した。

 なにか覚悟を決めたその表情は、今まで見たどの愛沙とも違って綺麗だった。


次で最終話の予定です!

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