有紀の告白
「ここなら大丈夫か……」
暁人からのアレな場所リストは結局役に立ってしまった。
本人の意図とは違うだろうけど、人目を避けるという意味では確かにうってつけだった。
「康貴……?」
「あ、ごめん」
なにも考えずに握っていた手を慌てて外す。
「ぁ……」
う……。
残念そうな顔をされると申し訳なさが……いやとりあえず今は集中しないと。
覚悟は決まった。
部屋を飛び出した時はまだはっきりしなかった気持ちも、途中で有紀に出会ったおかげで明確になっていた。
◆
「やっほ」
「うぉっ?! なんだ有紀か……なんでこんなところに……」
「うーん。ここにいれば会えるかなって、ね?」
「おぉ……」
高西姉妹のおかげで耐性がついてるとはいえ、いまの有紀は相当可愛い。
それが風呂上りで上気した表情でこちらを見つめてくるのは、それなりの破壊力があった。
「多分これが最後のチャンスだと思うから言うんだけどさ」
ぐっと顔を近づけてくる有紀。
「ボクも康貴くんのこと、好きだよ?」
「なっ……」
突然の告白。
なんでいま?
いやそもそも有紀が俺を……?
いつもみたいにからかってるだけか?
いやでもそんな雰囲気もない。
どうしよう……。
何を言えばいいのかわからず戸惑っていると、有紀の方が声を上げた。
「今さ。きっと、どうやって断るか考えてたでしょ?」
「それは……」
「大丈夫。わかっちゃうんだな、康貴くんがなに考えてるのか。……昔から」
有紀と過ごした期間は思い返せば実は短い。
だが俺や愛沙、そしてまなみにとって、期間に関係なく一番印象的だった共通の友人がこの、有紀だ。
昔から、の部分に重みがあった。
「あーあー! もうちょっと早く転入して来ればよかったかなぁ……」
わざとらしく声を出して有紀が言う。
どうやって断るかを考えていたのは、図星だった。
不思議と有紀と、いや他の誰からそう言われても、いまの俺にその相手を選ぶ選択肢はないことがわかったのだ。
「行きなよ。ちゃんと迎えに行ってあげて」
「わかった」
まさかこんな形でとは思ったが、今までボヤッとしていた思いがようやく、形になったような気がした。
後二話
あしたでなろう版完結となります!