修学旅行 与えられたデート
「おいしい!」
「よかった」
二人にされてしばらくは「本当に良いのかな……」と不安そうにしていた愛沙だが、店に向かう道中にはもうすっかりいつもの様子に戻っていた。
「自分で焼くのかと思ってたからちょっと練習してたのに……」
残念そうに呟く愛沙。
そんな表情一つとっても可愛いなと思うあたり、いよいよ重症だなと思った。
「関西は作って持ってきてくれるところが多いみたいだな」
「まあでも、食べたらその方がいいってわかっちゃう美味しさよね。あ、康貴ソースが飛んでる」
「え?」
「ふふ。取れた」
「ありがとう……」
愛沙の態度がおかしい、というか距離が近いのは多分、修学旅行というシチュエーションに少なからず興奮しているからだろうな。
その勢いをそのままにして話題をぶっ込んでくるのでこちらは気が気ではない。
「ねえ康貴」
「ん?」
「私たちみんなにどう思われてるのかしら」
その表情にどきっとさせられる。
期待を込めて告げられたその言葉になんて返そうか迷って言いよどんでしまった。
「んー……」
流し目でこちらを見ながら、愛沙がこう続ける。
「私はもう藍子たちに付き合ってると思われてたくらいなのよね……」
「おぉ……」
そこまでいってたのか。
男性陣の反応は早くくっつけという感じだけど……。
「今日の夜も多分、部屋を追い出されて会ってこいって言われるわね」
「そうなのか……」
「うん……」
心臓がバクバクする。
愛沙が期待する言葉がわかったからだ。
「じゃあ……」
「はいー。おまたせ、明太チーズ! 熱いから気ぃつけてたべよ〜」
うっ……。
誘おうとした所でちょうど追加していたお好み焼きが来てしまった。
「食べよっか……」
「そうだな……」
気を使ってくれた愛沙に合わせて、とりあえず食べることに集中した。
味はやっぱり美味しかったけど、ちょっと食事に集中しきれていない自分がいた。
昼にも更新します!
あと5話