借り物の価値
次の更新で有紀のイラスト解禁します
ちなみにこの作品に書籍化の声はかかってません
拾って下さいw
「結構出遅れたな……」
競技の性質上、別にそこまで大した問題はないとは言え、スタートでいきなり倒れ込んだ俺は目立っていた。
ちなみにあのロンゲ先輩は上手いことバレずにやったようで問題なく競技に参加している。ちょっとイラッとさせられたことは事実だ。
「はあ……やっとついた」
設置されたテーブルまでたどり着き、ようやく紙を見る。
といってもお題はわかってるし、紙を取りに来るだけだけどな……。
お題はやはり、「一番可愛い子を連れてこい」だ。
「さて……これはもう、行くしかないよな……」
見ればすでに愛沙のところには5人の参加者が群がっている。
「高西さん! 一番可愛い子を連れてこいっていうお題なんです!」
「お願いします!」
聞こえてくるのは愛沙を誘う声。
野球部で活躍する坊主の先輩まで頭を下げていた。
「えっと……」
愛沙はそわそわと視線を彷徨わせている。
そこにさっきのロン毛の先輩がスっと前に出た。
「全く、野球部の坊主のような粗野な告白でついてきてくれるわけがないじゃないか」
そう言って列に割り込むロン毛先輩。
「君の美しさは言葉では言い表せないほどだね」
「はぁ……」
愛沙は先輩を冷たく睨んでいた。
だがその程度では怯まないらしい。
「僕のことは知っているだろう? ほら、この前はテレビでも取り上げられて……」
「知らないです。それよりどうして康貴を殴ったんですか?」
「は?」
ロン毛が固まる。
そして周囲の反応が変わった。
「今、殴ったって?」
「確かに隣にいた子、不自然にスタートで……」
一瞬慌てた様子を見せたあと、それでもなんとか平静を装って愛沙に呼びかけ続けるロン毛先輩。
「何を言ってるのかな? 彼は勝手にうずくまったんだ。ほら、それより借り物競走だ。僕とゴールしてくれればそうだな……CDにサインも……」
ようやく追いついた。
「愛沙」
「なんだ君は……今は僕が話してるんだから……」
「そうだぞ! 順番は守れ!」
借り物競走の暗黙の了解。
カップルになっていれば優先権があるが、そうでなければ順番に口説く権利を得る。
横にいた先輩共々非難が飛ぶ。
「大丈夫だった? 康貴?」
「ああ……」
「やっぱりこの人に何か……」
「待ってくれ! 僕は何もしていないぞ!?」
「何もしてない、か。たまたま肘が当たったのかと思ってたし、それなら仕方ないかと思ってたけど、何もしてないなら確認してもらった方がいいですね」
「は?」
実行委員は裏方だから色々知っている。
たとえばそう、万が一のトラブルの際にビデオが使えることとか。
「おっけー! 不正があった場合は当該クラスのポイントは無くなります! では!」
「待て! なんだそれは!?」
東野に合図を出すと審判役としてVTRの準備をはじめた。
そして……。
「これって……」
「うわぁ……」
「あーこれはアウトですね」
ロン毛先輩が故意に肘をぶつけてくる様子が鮮明にモニタに表示されていた。
「ということで、失格の組はこれまでのポイントも含め、減点です!」
「なっ……違う! これは何かの間違いだ!」
「ねえねえ、これSNSにあげたらあの人、終わるんじゃないの?」
「人気バンドの問題行動? あはは」
「待ってくれ……それだけは……」
流石にこの様子を外に出されるのはちょっとどうかと思うのでその対応はまた後でやるとして、今は愛沙だな。
「来てくれ」
「うん」
「あっ! おいどさくさでお前!?」
「私からの指名なら良いのよね? 私は康貴を選びます!」
「そんな……」
坊主の先輩たちも置き去りにしてゴールを目指す。
最初からカップル枠の2人には追い付けはしないが、このイベントは女子が人を選ぶのに時間をかけるためまだ三位にはなれそうだった。
愛沙の他、生徒会長を始め周りを囲まれた女子はその中で人を選ぶ。
慣習的にこのあと一回くらいはデートに応じる必要もあるので割と慎重になるわけだ。
「康貴、他の子じゃなくてよかったの?」
走りながら愛沙が聞いてくる。
「他に誰かいたか?」
「なっ……そう……そうならいいわ」
よくわからないけど愛沙は顔を赤くしてそらしていた。
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