借り物競争
「まじで出ることになるとは……」
借り物競争は意外なことにクラス得点の非常に重要なポイントになるため、こんな競技でありながら各クラスがエースをここに当てることも多い競技だった。
「エースというか、断りづらくなるようなさ、そういう人が選ばれてるよね」
「スクールカースト上位陣のゲームじゃねえかこんなの……」
横に並ぶのは有紀。このあと女子の部で参加するらしい。女子で良いのか? という思いは一旦おいておくとして、まなみの上位互換である運動神経おばけの有紀がこの競技に出ていることもこの競技の重要性を物語っている。
「いや隼人の出番だろどう考えても!」
「サッカー部は色々あるみたいだからねえ〜」
何にせよやりにくいことこの上なかった。
周囲にいるのはほぼ学年をまたぐ有名人。これがお題である「一番可愛い子を連れてこい」という無茶振りに対応するわけだ……。
「愛沙ちゃん人気だろうねえ」
「というかこれ、俺らだけ中身知ってるのずるくないのか……?」
「んにゃ? 大体みんな知ってたよ?」
「そうなのか……」
だから各クラス運動神経抜群のイケメン揃いなのか……いやこんなの事実上ナンパ成功率を競う競技じゃないのか?
良いのか体育祭でこんなのやって!
「ほらほら、そろそろ出番!」
「はあ……」
「これ、結構大事なポイントだからね〜!」
「わかったわかった」
愛沙の位置を念の為確認してからスタート位置についた。
ふと、隣に立った上級生に声をかけられた。
「やあ、最近有名じゃないか」
「はあ……どうも?」
金髪ロン毛にピアスにとあまりにタイプがことなる相手に何も言えなくなる。たしかバンド活動とかしていてちらっとテレビに出たとかで有名な人だったと思う。名前はわからないけど。
「実際のところ、高西嬢とはどうなんだい?」
「どう……とは?」
「だからさ、ヤッたのか?」
「は!?」
「いい反応だねえ……幼馴染の君がそれなら、初物だよねえ……」
何いってんだこいつ……?
「僕がもらっちゃうよ?」
「はあ……」
「ふふ。女の扱いってのを見せてあげるよ」
ちょっとこの競技にどうやって参加するか決めかねていたところがあったけど、これは絶対負けられない戦いになったような気がする。少なくともこの気持ち悪いロン毛に愛沙の手を握らせるわけには行かない。
「さーて! みなさん! 準備は整ってますかー!」
元気良く放送委員の女の子のアナウンスが始まる。
「位置について!」
隣の金髪の先輩が何か変な動きをしていたが自分のことに集中しよう。
このメンバー、間違いなくみんな運動もできるからな……借り物の札が同じとはいえあまりに差が付いたら意味がない。
「よーい!」
不意に隣の先輩がこちらに身体を寄せてきた。
「ドン!」
「ぐっ⁉」
スタートの腕振りを使って金髪ロン毛が俺のみぞおちに一撃を加えていた。
「康貴っ!」
愛沙の声でなんとか踏みとどまる。
一人大きく遅れる形になったが、なんとか走り出した。
次回この先輩はズタボロになるのでご安心ください
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