控室
「康貴!」
「ほんとに隼人が一人でいるとは……」
男子は見たことはある学年でも有名な同級生と、学年をまたいで有名な上級生と後輩。うん。なんか朝礼で表彰されたりが多いから見たことある。名前も多分知ってる。思い出せないだけで。
「部活のやつらが必死にたこ焼き売ってるからさー」
「あー」
まぁ基本的に部活で集まることが多いもんな。グループが違えばそんな話すこともないわけか。
「始まるまでには売り切るって聞いてるけど……」
「来ると良いな?」
「まあなぁ」
そこまで言ったところでビュンと俺の前に風が通り抜けた。
「康貴にぃー!」
「まなみか……」
抱きつこうとしてきたまなみを躱して頭だけ撫でておいた。
「康貴……もしかしてお前、めちゃくちゃ運動神経いい?」
「いやいや、よかったらもうちょっと授業で活躍するだろ?」
「いや、俺動体視力結構自信あったけど、いまのこの子の動き、見えなかったぞ?」
見えなかったは言いすぎだろうがまあ、まなみは尋常じゃないスピードで動き回るのは確かだ……。
まなみの動きにだけ特化して目が慣れてるんだろうな……。
「おっ。康貴くんもいたー!」
有紀が後ろから抱きついてきていた……。勘弁して欲しい。タダでさえ場違いなところにいるのに目立つようなことしないでほしかった。
「忍者集団かよ……康貴の周りの子たち……」
「いやいや……」
またしても姿を追いきれなくてショックを受ける隼人だったが、有紀に関してはまなみの上位互換だしな……。ほんとにいつ現れていつのまに背後に回られたのかわからなかった。
異世界とか飛ばされても無双しそうなやつだった。
「失礼なこと考えてるなー」
「いや、ミスコンは豪華だなと思っただけだよ」
「えへへー!」
テンションの高いまなみがひたすら頭を撫でろと要求してくるので撫でる。
完全に犬のようだな……。有紀と二人で色々暴れまわったんだろう。運動部が用意した腕試し系のアトラクションも多かったし。
「ストラックアウトで2人ともパーフェクトとってきたよー!」
「腕相撲は負けちゃったけどねー。有紀ちゃんは勝ってたけど」
なんで勝てるの?
あれレスリング部と柔道部あたりがコラボしてたイベントだよな?
「すげえ二人だな……」
隼人がため息まじりに言った。
「で、そしたら二人はいいとして、康貴ステージで何やるの?」
「え? なんかやらないといけなかったの?」
「そりゃ、高西……紛らわしいな高西姉くらいだと喋るだけでも立ってるだけでもいいんだけど、例えば俺はリフティングとかする。ベタだけどな」
「なるほど……?」
聞いてないぞ? 東野?
「私はバク宙とかしてればいいって言われたー」
「まなみのそれは確かにいいパフォーマンスだな……」
「ボクは3回転半宙返りとかすればいいかなぁ?」
なんかほんとにやりそうで怖いのでやめてほしい。
「ちゃんと準備してきてるんだよー! ほら!」
「やめなさい」
まなみがスカートをたくし上げようとしたのを腕を掴んで止める。
「それで良いんじゃないか? 康貴」
「それ?」
「まなみちゃん? の動きに対応してる時だけ康貴、わりと普通じゃない動きだぞ?」
「あ、いいねー。ボクも混ざりた」
「お前が混ざると全く対応できなくなるからやめてくれ」
とりあえずやることは決まってよかった、かもしれない。
こいつらのエピソードを増やすとハイファンタジーになってしまいそうなので控えめにやります(?)