文化祭のお誘い
「先輩先輩! どうせ先輩のところも休憩所ですよね?」
もういつものメンバーになりつつある三島さんが声をかけてくる。ギャルっぽい子だが悪い子ではない。ただあれだ。ノリが軽い、ボディタッチが多い、そして、おっぱいが大きい。
「あー、たぶん?」
文化祭におけるクラスの出し物は、ほとんどと言っていいほどのクラスでやる気のないものになっている。
理由は明快で、他に二つも行事をやるせいで忙しいからだ。
文化祭は文化部を中心として部活勢の一大イベントのため、クラスで集まれないというのもある。
「じゃあ一緒に周りませんかー?」
むにゅ、と腕に押し当てながら呼びかけてくる三島さん。気にしたら負けだ。
ちなみにこれは俺にだけというわけでなく、まなみや横にいる眼鏡っ子の八洲さんにも一緒だからこういう子なんだろう。だが男にやるのはやめた方がいいとは思う。
「ダメだよー。康貴にぃはお姉ちゃんと回るの!」
「そうなの?」
「そうなんです!」
そうなのか……。まあ、今の関係値を考えれば違和感はないか?
幼馴染ということも知れ渡ってるし、特に問題はないか。うん。そう思おう。よし。
「ちょっとで良いからー」
「粘るなぁ……」
三島さんはめげることなく俺にむにむにと押し付け続けていた。
「あはは……。お兄さんってこう、人気ですよね?」
「そうなの?」
八洲さんから思わぬ言葉が飛ぶ。思わずまなみの方を見た。
「うー……康貴にぃは知らないままでいて欲しかったのに」
「まなみちゃんがクラスでもどこでもお兄さんのことをかなり持ち上げているので」
「なんでそんなことを……」
まなみを見るとうーうー唸って顔を逸らしていた。
「先輩と一緒に文化祭回るのが誰かって賭けになってるんすよー。お願いしますよー」
「人を賭けに使うな!」
なんだその賭け。
まあでもなんとなくわかった。まなみのせいで会ったことない後輩たちのハードルが無駄に上がっていることと、名前だけ一人歩きして賭け事の材料にまでなってることは。
「まなみ……?」
「いやー! お姉ちゃんには言わないでー」
「言われて困ることやってるのか……?」
まなみを見る。
「まあこの話はそもそもまなみが先輩はお姉ちゃんと回るんだー! って言いふらしたのが始まりですからねー」
三島さんの言葉にまなみが完全に目を逸らした。なるほど……。
「うー! そもそも! 康にぃがはっきりしないのが悪いんだからね! お姉ちゃんをちゃんと誘ってあげて!」
「とりあえずまなみは好き勝手色々言わないこと」
「うー……」
それだけ言うと机に突っ伏していった。
「その代わり、愛沙には声をかける」
まなみにだけ聞こえるように言っておいた。
うん。確かにあの花火以降何もないのも俺もなんか嫌だったし、ちょうど良い。文化祭を回るくらい、幼馴染なら普通のはず。
ただまあ、受けてくれるかは愛沙次第なんだけどな……。
なるべく機嫌が良さそうな時に、受け入れやすい理由を作って誘うことにしよう。間違ってもカップルとか恋人とか言う単語を意識させることがないように……!
こっちの作品じゃないんですがテイマーの方が書籍化しますのでよろしくお願いしますー!
活動報告に詳しく書かせていただいてます!
もちろんおさこわもガンガン更新するのでよろしくお願いします
お声掛けお待ちしてます(?)