愛沙の思惑
愛沙視点
「あの日、結構良い感じだったよね?!」
誰もいない自室でクマに問いかける。当然返事はない。
でも今は、とにかくなにか喋らないと気が済まなかった。
「でも全然康貴はいつも通りだよー……どうしよー……」
それどころか最近は応援団という名の実行委員会のせいで帰り道すら一緒にいられない。
有紀はまぁ、久しぶりにあったし積もる話もあるだろうから良いんだけど……。康貴だってきっと、有紀に何かそういう思いを抱くことはなさそう、だと思う。
「康貴も結構意識してくれたと思ったんだけどなぁ……」
夏休み中、今思い返せばチャンスはたくさんあった。そして最大のチャンスにもかかわらず、日和ったのは私だ。まなみに呆れられたのが懐かしい。
「もうちょっとこう……さぁ……康貴の態度とか、なんか一緒に登下校したりとか……クリスマスの……予定、とか……」
気が早いかもしれないけど、今年はなんとしても康貴と一緒に過ごしたい。
「康貴もふらっと誰かに誘われたら、なにも考えずにおっけーしちゃいそうだし」
ちょっとくらい意識してくれていれば安心できたが、今の様子を見ている限り十分ありうる話だった。
「うあぁぁぁぁぁあああ! もうっ!」
「お姉ちゃん大丈夫ー?」
隣の部屋まで聞こえてしまっていたらしい。壁越しにまなみから声をかけてくる。
「ごめんまなみ、大丈夫よ」
「はーい!」
まなみにももうこれ以上頼らない……。というより、まなみだって康貴のことが好きなのはわかり切っている。好きの意味合いはわからない部分はあるけど……。
「まなみが相手なら、そんなに落ち込まないんだけどなぁ……」
いや、まあまあ、かなり、凹むとは思う。
でも多分、全然知らない子に取られるくらいなら、とも思う。
「とにかく二学期からろくに話もできてないのをなんとかしなくちゃ!」
康貴ももっと声をかけてきたら良いのに……。ただ学校で私から声をかけるのは嫌そうな顔をするし、そのせいで康貴からもあまり声はかからないし……。
「デート……なにかきっかけが欲しい……」
スマホに『秋 デート』と打ち込む。ちょっと気恥ずかしくなるけど、今はそれより接点を持たなきゃ。
「んー……」
ページをめくる。まだ花火やお祭りをやってるところもあったけど、それはもう誘いにくいというか……あんなに良い思い出、もう作れないかもしれないし……。
とにかくっ! 別のことにしなきゃ!
「あ!」
文化祭。特に大学のに行くのは、アリかもしれない。
なんならうちの学校のでもいいわ。有志とか部活が盛り上がるだけでクラスはほとんど休憩所になるようなイベントだし、学校で康貴を捕まえれば……多少牽制になる、はず!
「夏休み明けから康貴はちょっとカッコよくなった気がする……」
実際、まなみが焦りを感じるくらい後輩の子たちからの人気はあるみたいだし……。応援団でしか接点はないでしょうし、有紀も入ったから大丈夫だと思うけど……。
「んーーー!」
そのあともしばらく、頭を悩ませてなんとかデートに誘う方法を考え続けることになった。
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