第2章
「きゃーっ、ヨーコだよね?久し振りじゃん。最近ぜーんぜん会わなかったよねー。ほんと久し振りー。あ、お話中だった?こんにちはー。この人たちお友達?」
突然、空気読めない感の甚だしい女。という感じでわたしが割り込んできたもんだから、三人とも変な顔になっている。安心してヨーコ、わたしは味方だよ。
しかしいざ近づいてみると、この屑男、小さい。身長は百六十五センチのわたしより少し高いくらいだけど、体重は五十キロ強だな。骨と贅肉野郎が。タバコやめて運動しろ運動。隣の汚ギャルみたいな奴はどうでもいい。反対に、仮名ヨーコは女子としては大きかった。わたしと同じくらい。
「な?何だよてめーこら」
「はい?わたしはヨーコの友達だけど?何あんた、彼女いるのにヨーコ狙いってわけ?だーめ、お姉ちゃん許しませんよ」
「ふざけんなよてめー、やんのかてめー」
「キヨ、ちょい待ちなよ。ふーん、あんた、友達ならその子のためにお金出せるよね?あたし、さっきそのヨーコちゃんにぶつかられてさ。鞄に傷がついちゃったんだよねー、でもあたし怒ってないから、五千円でいいよ」
いざ関わってみたら、想像してた千倍くらいむかついてきた。屑が。わたしはもう論理的に反論する気が失せた。
「は?そんな汚い鞄に傷?はっ、元々傷だらけなんでしょ?持ち主と一緒じゃん。そんなに気にしてるんならマジックで塗っとけば?あんたの顔みたいにさ。サクラマイネーム貸してあげるよ」
「なっ、超むかつくんですけどこの糞デカ女」
「くすっ、あんたとあんたの彼氏がチビなだけじゃん。あー、ついでに彼氏の眉毛も描いてあげれば?マユナシかっこ悪いよ。いじめよりかっこ悪い。バイ前園」
「ふざけんな」
声と同時に男が殴りかかってきた。こいつらがバカで幸運だ。
わたしは女で良かったと思う。女は弱者であるが故、社会に守られるからだ。ちゃんと握れてもいない拳を、わたしは左肩をひょいと上げてブロックした。
「あーあ、これもう犯罪だよねっ」
わたしは瞬時にダッキング、左拳で男の脇腹をぶっ叩き、レバーに入れられた男がうずくまりかけたのを恍惚の表情で眺めつつ、右アッパーで顎を跳ね上げた。さすがに裸の拳で顎は殴ったほうも痛いよね。でも気持ちいい。