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第15章

「レナさん、あの、でもウォームアップがまだ…」

「大丈夫、わたしはそんなにアップ要らないから。あー会長、今すぐでもいいですよ」

「レナちゃん、余裕綽々だが、いいのかい?うちの杏はフェザーで日本獲るくらいの力はあるんだがね」

「あれで、ですか?五ラウンドは保たないと思いますけど。後々めんどいんで、危ない時はちゃんと止めてあげてくださいね」

「く、ははははっ。清々しいくらいのビッグマウスだな。じゃあ、杏にも油断しないように言ってくるよ」


 板頭会長は父を一瞥、青コーナー側に戻って行った。


「じゃあ、タイマー着けてくる。好きなようにやってこい」


 父も壁際のほうに行ってしまったので、わたしは残されたユーリに小声で話しかけた。


「ユーリ、一ラウンドは最初にジャブ当てて、あいつが取り返しに来たとこをカウンター狙いでいくから。あの赤髪けっこう頑丈みたいだし、根性さえあれば三ラウンドくらいは続くと思うよ」

「レナさんっ」

「ん?」

「気をつけてください」

「ふふ、了解」


 わたしもリングに上がり、マウスピースを口に入れた。一通り身に着けるのって、けっこう久し振りかも。


 赤コーナーでぶらぶらシャドーしながら相手を見ると、準備万端という感じでこちらを睨みつけてくる。態度がいちいち小物だな。


 父がテレビ局に合図してから、タイマーをセットした。


「じゃあ、始めるぞ」ブザーが鳴った。


 丸戸が前に出てくる。わたしも数歩出て、左手を差し出す。


 いざ構えると、でかいな、こいつ。いつもの気分のまま始まっちゃったけど、なんか、今になって多少の恐怖感が襲ってきた。


 ちょっと気分を変えたかったので、フェイントを交えつつ前後に細かくステップし、丸戸が前に出てこようとした瞬間に踏み込んでジャブを当てた。綺麗に鼻先を捉え、打撃音が響いた。続けて左に回りながらジャブ二発、また一発ヒット。


 あれ?わたしは完全に拍子抜けしてしまった。鈍すぎる。


 丸戸は面食らったようで、気を取り直し乱雑に前進してきたが、わたしは左のガードを下げてサークリング、単発の遅いパンチをステップだけで避けた。だらしないワンツーをウィービングしながら見た後、打ち終わりにまたジャブを当てて後ろに逃げた。


 ふとリング下のユーリに目をやると、目を真ん丸にしてこちらを見ていて、それがおかしくてつい笑ってしまった。それを見た丸戸は怒りの表情、また肩をすくめてこちらに突進してくる。


 そう言えばこいつ、インファイトが得意なんだっけ。動画では大方、プッシングと頭突きでコーナーに詰めるラフなやり方だったな。

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